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380. LGBTへの理解を強要することはセクハラ(性的嫌がらせ)ですよ

今回もSNS上の意見を拾ってきました。

これは今年2023年3月29日にでた次のニュースに対する反応です:

LGBT、掲載広がる 道徳や社会に、同性婚も 教科書検定

 小学校の教科書でも、性的少数者(LGBTなど)といった性の多様性を取り上げるケースが広がっている。
 前回の検定では保健の教科書2点のみだったが、今回は道徳や社会を含め10点で触れられた。  
 文教社の5、6年保健では、心の健康を学ぶ中で「人によっては、自分の生まれた性別と、心の性別が一致しなかったり、同性の子を好きになったりすることもあります」と記述した。  
 光文書院は6年道徳で、東京五輪の開会式で虹色の衣装をまとって国歌斉唱した歌手MISIAさんの写真を掲載。「LGBTQなどの問題についてさまざまなメッセージを発信している」と紹介した。

YAHOO! JAPAN ニュース 2023.3.29

「人によっては、自分の生まれた性別と、心の性別が一致しなかったり、同性の子を好きになったりすることもあります」と教科書に書いてあることが「理解の強要」で、セクハラになるのでしょうか?

もう40年も前の話ですが、私が高校生の時のお話をします。

私が通っていた高校では3年生から文系コース、理系コースに分かれていました。私は別に「理系」が得意ではありませんでしたが、なんとなく「理系コース」に入りました。

そのころの数学のテキストは今のカリキュラムとは全く違うものですが、「サイン、コサイン、タンジェント」というものがありました。

もともと数学も得意ではなかったので、テキストに書いてあることが全くわからない。なぜこんな計算をしなければならないのかという基本からまったくわかっていない。当然分かりたいとも思いませんし、分かろうともしませんし、結局いまでも私の数学アレルギーの元になっています。

今の子どもたちも同じではないでしょうか。

教科書に書いてあるから「理解」はしていないけれども、とりあえず中間試験にでるから覚えておく。

昔は「一夜漬け」なんて言葉もありましたが、今では死語になっているかもしれませんね。

ひるがえって、LGBTのことが教科書にあるからといっても、おそらく先生方もそれを「理解しなさい」と強要することはできないでしょう

また実は、テキストにLGBTのことが書いてあっても、教員は教える義務はないのです。

教員が授業で生徒に教えなければならないことは「学習指導要領」というもので決められています。

しかし最新の「学習指導要領」には、LGBTのことを教えなさいとは書いていないのです。(注1)

だから、極端な話、LGBTが取り上げられている教科書を採用した学校で、担当の教員が授業でLGBTの記述をすっ飛ばしても校長先生に怒られるわけでも給料が減らされるわけでもありません。(私は個人的に生徒にLGBTのことを教えてもらいたいと思いますが)

というわけで、教科書にLGBTのことが載っていても、教師が「教えなければならない」こともありませんし、生徒に「理解を強要する」ことはありません。

そして、人に何かを教えたことがある方ならよくわかると思いますが、「何かを相手に理解させる」というのはとても難しいことです。

生徒さんも、「がんばったけど理解できない(分からない)」ということはあるでしょう。

先生がLGBTのことを授業でとりあげて「セクハラだ」と言われるのなら、生徒の理解できない難しいことを教えている教師はみんな「パワハラ」で訴えられることになりそうですね。

それではこの国の教育(制度)自体が崩壊してしまうかもしれません。

(注1)2022年12月に学校の先生がどのように生徒を指導するかという「生徒指導提要」が改訂され、LGBTについて言及されていると報じられました。これは学校の教員がLGBTについて理解しておく必要がありますよ、とされたものです。「学習指導要領」は全国どこの学校でも同じ水準で教育がなされることを目的としたもので、教科の目標や教育内容が決められているものです。

参考資料

画像:UnsplashArtboard Studioが撮影した写真