見出し画像

307. LGBTの話って「こういう生き方がある」と小中高生に教えなくてもいいんじゃないですか?

2つ前の記事で「LGBTはライフスタルではない」ということを書きました。

今回の質問は子どもたちにLGBTの「生き方」を教えることに疑問を投げかける内容です。元の文章はウェブ上でみかけた次の意見です:


LGBTになった人の差別・悪口等はいけないけど、「こういう生き方がある」と公に示して、小中高生たちに教える話ではないのでは?まずは、ふつうに男の子らしく、女の子らしくなることで、相互に憧れ⇒恋愛⇒結婚⇒子育て、と生きていくでしょう?このままでは少子化が進んでしまします。

まず理解していただきたいのは、LGBTの当事者は好きでその「生き方」を選んだわけではないということです。このことは先の記事でも書きました。

「選べる生き方」なら、なぜLGBTの人たちは差別されたり悪口を言われたりする生き方をするのでしょう?

次に、小中高でLGBTについて教えることは、1つにLGBTに代表される性的マイノリティという個性・特性をもっていることで(それを理由に)当事者をいじめたり、相手が傷つくことを言ったり、差別したりしてはいけないということを教えるためです。

3つ目に、LGBTをはじめとする性的マイノリティが存在することを学校で教えたからといって、その授業内容に影響を受けて生徒の性的指向や性自認が変わることはありません。

それよりも、世の中にはテレビドラマ、映画、音楽、芸術、社会制度など、いろいろなところで異性愛が当たり前としてとりあげられています。子どもたちが影響を受けるとすれば、このような日常的に接する情報によるものが大きいのではないでしょうか。

もしそうなら、どうして子どもたちはみんな異性愛にならないのでしょうか?周りの人たちは心と体の性が一致していることに何の疑問ももたないのに、なぜ性別違和の子どもがいるのでしょうか?

4つ目に、最近では「男らしさ」「女らしさ」ということが何を意味するのかが問われています。あなたが考える「男らしさ」「女らしさ」の基準はこれまでの慣例的なジェンダー役割に縛られていませんか?

もちろん、従来の「男らしさ」「女らしさ」が大切だという考えを否定するつもりはありません。しかし、従来の男女の在り方を見直そう、それでいいのかな?、もっと違う在り方があるんじゃないかな?という視点が生まれているということは知っておいてください。

最後に、これまでも私の記事の中で何度か触れたと思いますが、少子化とLGBTの存在は全く別の話です。つまり、少子化の問題は異性愛者が結婚して子どもをもうけるかどうかの話であって、それはLGBTと関係がありません。

子どもは周囲の影響を受けてLGBTになるのではありませんから、例えば10年後にLGBTをはじめとする性的マイノリティの人口が日本全体の約50%になると言う考えは現実的ではありません。

外国で同性婚が認められている国でも、その国の人口の半数が性的マイノリティだという報告はありません。

もしかしたら、社会的にLGBTを受け入れる考えが広まって、これまでカミングアウトしていなかった人がカミングアウトするようになると、「急にLGBTが増えた」と感じる方が出てくるかもしれません。

しかしそれは「今まで見えていなかったものが見えるようになった」だけで、もともと存在していたものです。急に「増えた」わけではありません。

「ライフスタイル」のところでもお話ししましたが、LGBTをはじめとする性的マイノリティは選び取ることのできる「ライフスタイル」でも「生き方」でもありません。それを小中高生に教えても生徒たちの性的指向や性自認に影響はありません。生徒たちの視野を広げるためにもぜひ性的マイノリティについて学校の授業で取り上げてもらいたいと思います。


画像:Photo by Jeswin Thomas on Unsplash