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プロセスエコノミーから見るインサイトの本質とプロダクト・組織のあり方

はじめに


いきなりですが、「インサイト」という言葉をちゃんと説明するのって大変じゃないですか?

インサイトとは:
生活者自身が気付いていない「動機に結び付く新たな視点」。マーケティング担当者自身が洞察し、見抜くべきもの。 もしあなたが「インサイトの意味=無意識の本音の発見」という誤解した捉え方をしていたのなら、これを機にその認識を改めましょう。 「インサイト」とは「発見するもの」ではなく「あなた自身が主体的に洞察するもの」です。そして「無意識の本音」ではなく「生活者自身が自覚していない、動機に結び付く新たな視点」のことなのです。

ブランディングの教科書

「モノと情報の溢れている今の時代は、顕在ニーズじゃなくて潜在ニーズが大事で、その中でも新たな視点の部分が大事!」といって、何個か例を出してもなんとなく伝わったかなぐらいの感覚でいます。
また、言葉の理解はできたとしても、「インサイトを発見できる力をつけるためには何を勉強したり体験したりすれば良いですか?」という回答は難しいと感じていました。

そんな中、「プロセスエコノミー」というものを知れて色々と頭の中が整理されたのでまとめておこうと思います。
プロダクトづくり、サービス展開、組織づくりにも「プロセスエコノミー」的な発想はとても役に立つと思います。

読んだ本

「良いもの」だけでは売れない時代


今は「良いもの」を作るだけでは売れない時代です。
電化製品や洋服は品質も良いですし、値段も手頃ですし、流通もしっかりしています。インターネットにより情報もすぐに手に入るので、すぐにコピー商品が出回り、似たりよったりのものが多く存在します。これはソフトウェアでも個人クリエーターの作品でも、すべての「モノ」に言えることです。

そのため、企業は勝ち残る為に「ブランディング」に力を入れました。

「情報が完全に過多になり、人々が日々受け取る情報に圧倒されている世界では、ブランドがさらに重要になる。人々には、日常生活の全ての事柄に選別している時間はない。ブランドは、その選別を助けてくれる」

スティーブ・ジョブズ

かつては「顧客のことは顧客に聞け」と言われ「プロダクトアウトからマーケットインへ」が叫ばれていましたが、現在ではそれも限界を迎えています。なぜなら、すでに生活者自身が自覚している「顕在ニーズ」は、あなたの競合企業も様々なリサーチを通して簡単に気付くことができるからです。

加えて、多くの企業が「顕在ニーズ」に向けてブランディングやマーケティングを展開すれば、すぐさま過当競争に陥ってしまいます。このような厳しい状況の中で求められるのは、生活者自身も自覚していない「想い」を汲み取った上で、ブランディングやマーケティングを展開していくことです。つまり生活者の言葉に表れてこない視点を探る必要が生じているのです。

ブランディングの教科書

NIKEやアップルのブランディングはちょっと別格なのですが、多くの企業がブランディングを確立するために顧客インサイトを発見し、セグメンテーションやターゲティングを実施しているのが現状です。

例えば、同じコーヒーでも、外出時に飲むコーヒーとギフト用では異なる企業ですし、外出時の中でもスタバとドトールの戦略は全く違います。
◯◯といえば◯◯という状態をいかに作れるかがポイントになってきます。

※色々な会社の事例が本には載ってるのでおすすめです。

「プロセス」が注目される時代に


「プロセスエコノミー」とは何なのか?

簡単に言ってしまうと、企業がブランディングを確立するための手段として「プロセス」への共感がとても大事になっているということです。なんならそのプロセス自体がマネタイズするとも言われています。

元々は、けんすうさんがこの言葉を定義したとのことで、クリエーターの制作現場をライブ配信する「00:00 Studio」を運営されていますが、まさにこれもそうです。

個人クリエーター目線でプロセスエコノミーを考えてみると、ゲームの実況配信やマンガを描く姿をライブ配信しての投げ銭、SHOWROOM、Youtube/Instagramのコンテンツがそれにあたります。最近ではメルカリで野菜を売るのも実はこれです。
企業目線で考えてみても、Nizi Projectや古くはASAYANのモーニング娘などもそうですし、ドキュメンタリーや映画のメイキング映像などもプロセスを製品化しているものです。CAMPFIREなどのクラウンドファンディングもプロセスを応援する要素がとても大きいです。
そのほかにも、BTSやジャニーズ、Zapposやシャオミや楽天など、色々な事例が書かれています。


「プロセスエコノミー」の本では、著者の尾原さんがチームラボ猪子さんのフレーズを引用しているのが印象的でした。
「私達が生き残っていくためには、①世界の誰が見ても圧倒的に質が高いグローバル・ハイクオリティを目指すか、②特定のコミュニティにおいて熱い思いで支持されるローカル・ロークオリティを目指すかの2択で、中途半端は無い

①を選ぶのであれば圧倒的なお金と人材を使ったパワーゲームで勝つ必要があります。どちらを選ぶかは自由ですが②のプロセスの重要性は理解できると思います。

乾けない世代


「消費者は、物質的なモノより内面のコト(=プロセス)を選んでいる」

ということは理解できたかと思います。
ここでは、その共感してもらう消費者の理解をしていきたいと思います。
「モチベーション革命」著者の尾原さんは、消費者の多くである30代以下を「乾けない世代」と定義しています。

アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマンが唱えた「幸せの5つの軸」というものがあります。
「乾いた」世代(40歳以上)は、①達成、②快楽 を重視して働いていました。高い報酬や出世、美食や物欲などがそうです。
一方、「乾けない世代」は、③意味合い、④良好な人間関係、⑤没頭 を重視します。「ないものがない」社会で育ったので、達成や快楽を満たすということに重きを置いている人が少ないということです。

必然的に、消費に置いても、自分が心から好きだと思えるものが欲しい、その企業のビジョンや生産者の生き方に共感できるものを買いたいという、プロセス重視型になっているのです。

例えば、コンビニにはハサミやホッチキスは1種類しか置いてないのに、なぜタバコは200種類もあるのでしょうか?それこそまさに「役に立たないけど、意味がある」からです。
ランボルギーニに機能性を求めて購入する人がいないのも同じです。

働き方も変わってくる


サービスを開発・提供する側から見ると、今までの内容を踏まえて大事なポイントが見えてくると思います。

「インサイトを発見し、独自のブランディングを確立するために、プロセスに共感してもらう」

といった感じでしょうか。


「モチベーション革命」では現代の働き方についても多く触れられています。

残業するほど暇ではない
シリコンバレーでは、残業ゼロ・週休3日の会社も珍しくないです。それは休んでる間にユーザーを観察してきて「インサイト」を発見してきてくださいという意味が込められています。まずは自分が生活者として生きることで、世の中の潜在的なニーズを拾ってほしいという意図です。

ライフワークバランスの時代
せっかく週休3日なのに、仕事のことを考えなければいけない!?
仕事と休みの境目がないと苦しいと感じる人は、そもそも、自分の幸せと、仕事があったないのかもしれません。しかし、「インサイト」が重要視され、仕事と遊びの境目があやふやとなった今では、なるべく仕事は「公私混同」で取り組んだほうが効果的です。
(ただし、仕事と遊びの境目がなくなる時代だからといって好き放題やればいいというわけではありません。周囲からの信頼感を得ているからこそ、自分がより得意なことに専念する状況を作るスタートラインに立つ、ということは忘れてはいけません。いつの時代も、人は信頼がすべてです)

上記をどう感じるかは人それぞれだと思いますが、「インサイト」を発見することはとても大変であり、「自分ごと」を超えて「好き」にならなければ見つけにくいのが現実であり、この様な流れが起きているのでしょう。

※本では、「偏愛」こそが人間の価値になることや、異なる強みのある個人がチームとしてどう機能するかなど有意義な事が色々書かれているのですすめです。

まとめ


いかがでしたでしょうか?

我々が提供しているCarelyもそうですが、B2Bプロダクトを提供しているとつい顕在ニーズばかりを追ってしまいがちですが、インサイトの理解はとても大事です。そして、繰り返しになりますが、インサイトを発見するには自分が「好き」にならなければ見つけにくいということを理解しなければなりません。ヒアリングテクニックや観察力でニーズがわかる時代はとうに終わったのです。
「好き」になる為に自分はどうしたら良いのか?を考えて行動することがとても大事になってくると思います。

また、プロセスエコノミーという考え方は、企業の組織運営においてもとても大事です。経営陣が事業も組織も大好きで、目指したい世界へ登っているプロセスをしっかりと透明性を持って共有していなければ、みんなに共感してもらえるはずがありません。改めて「プロセス」の大事さを再認識して改善していきたいなと思いました。

おわり

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