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「コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法」を読んで

数年前に出版されてすぐに購入、読了したものを再読した。
実際にコンサルタントとしてビジネスの世界に20年ほど身をおいた著者なだけあって、コンサルがよく使う思考法やフレームワークに関して実体験も交えた解説をされており、腹落ちしやすい。また、それぞれに関する著者の経験に基づく評価もされている。この点において他のビジネス書との大きな違いは「ポーター理論の限界」にまで言及されていること。
特に大きな発見としては、「アウフヘーベンな考え方」に関するところ。選択と集中、ポジショニングを前提としたこれまでの理論を否定し、一見二律背反に見えるものも両方を取りに行くことがこれからの最善、という解説は新鮮だった。
私のようにポーターのポジショニング理論に則った知識や経験を積んできた人間としては、この観点は非常に新しさを感じるものだった。

以下読書メモである。

第1部 コンサルの基本技

1章 問題解決力

• 問題解決の二大要素は、分析力と構築力。
• 分析は様々な手法を使ってMECEにどんどん要素分解して問題の本質に迫っていく。ばくっと捉えてはいけない。
• また、構築は問題解決の段階で必要で、真理よりも心理。全員がその気になって問題解決にあたらなければならないが、どうしても現状維持バイアスがかかってしまう。現状維持バイアスを打破するためのストーリー構築が大切。
• どんなに正しい答えでも、当事者ができないと思ったらそこでおしまい。回り道であっても当事者にこれならできると思ってもらえれば次に進める。

• コンサルは、当初クライアント企業が解決を相談してきた問題以外のところにこそ、本当の問題がある、という仮説のもとに分析を行う。
• そしてクライアントが気付いていなかった本質的な問題に対する解をクライアントに腹落ちさせルカが重要。

2章 課題設定力「論点思考」

• 問題解決の手順は、以下7ステップ。最も大事なのは1と2で、ここで50%。
1問題の定義
2問題の構造化
3優先度をつける
4分析方法を設定する
5分析する
6発見内容を統合する
7提言する
• 問題の根っこであるチョークポイントを定義することがコンサルの仕事。チョークポイントを見つける上では、ファクトを集める前に必ず仮説を持つ。(イシューから始めよ)
• Not Boil the Ocean. とりあえず構わずなんでも探しても余計なものが見つかって本質を見失う。まずは常識的な方法、すなわち、歴史的な文献や情報から、この辺だろうとあたりをつけて、掘りにいくのが最良の方法。
• 混乱している状況に入っていく(レッドオーシャンに飛び込む)のではなく、空いたスペースに飛び込むことが重要。
• 本質的な問題を特定した後、それを真っ直ぐに取り除くのは得策ではない。本質的な問題でありながら放置されてきたものには、それなりの理由があるはずである。Why not yet?を考えることが肝である。
• 論法としては、以下の4つ。
What:本質的な問題はこれである
Why:なぜそれが問題なのか
Why not yet:なぜこれがまだ解決されていないのか(ここ重要)
How:どう解決するか
• 問題を取り除くのではなく、問題そのものを企業の成長機会に置き換えられれば、それは十倍返し。問題があるということは成長の余地が極めて多い、ということ。出口を意識するというのが、課題を設定するときのもう一つの視点。
• 事実に推論を加え、推論の後にレコメンデーションがあって初めて、提案としての価値が生まれる。(空→雨だけではだめ、行動のレコメンデーションとしての傘があって初めて価値がある)

第3章 仮説構築力「仮説思考」

• まずは「これがこの会社の本質的な問題だろう」という大きな仮説を立てることが大切(デイワン仮説を持て)
• 仮説とは、「何を証明したいのか」であり、Factに基づいて仮説を検証したら、実は反証が多く出てくることもある。その場合は即座に仮説を作り直すこと。(リーン・スタートアップ)
ちなみにグーグルでは、企画が外れるとそれを皆で祝う習慣がある。これはそちらに行っても道はないことが分かったことを称賛することである。
• 日本の会社の多くは失敗を許容しない。成功確率が90%以上のものはチャレンジとは言わない。
トヨタのように、ラインを止める(アンドンを引く)ことを称賛することは非常に大事。現場は失敗を隠さず、それを貴重な学習機会にすることが大事。
• もし本質的な仮説を立て、当たらなかった場合でも、答えは近くに眠っている可能性が高い。(やたらめったら掘るのとは違うので)
• 仮説を持つにあたっては、いかにハッとするような仮説を立てられるか、通説を疑うこと。表面的に課題だ、問題だ、と騒いでいることに対して、疑いを持つこと。業界の常識は世の中の非常識。
• 通説を疑うためには、ズームイン思考からズームアウト思考へ、鳥の目で俯瞰する。
• 俯瞰した上で、ブラインドスポット(盲点)をつくこと。
例えば任天堂のWiiのように、これまでゲーマーでなかった層を取り込むことを考えた会社は成長する。ゲーマー人口が減る、という課題そのものを成長機会に変えた。
• 悪い子が組織に変革を起こす、というように、会社としても定期的に、そもそも自分たちは何のために存在し、何をすべきか、なぜそれができないのかをゼロベースで考える機会が必要。
• Why not yetの思考をしていると、その組織における禁じ手、聖域、いわゆるOBゾーンにぶつかる。OBゾーンは実は社長だったりとすることもある。できないことになっている、という思い込みにこそ、問題の本質があったりする。
• 外部環境は自ら変えることはできない。それに合わせて変えることができなかった自分自身にこそ問題があり、自らの良さをうまく生かしながら「自分らしい答え」を出すことが大事。

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