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プーチンの戦争が揺るがす欧州の気候変動問題とドイツや米国の対応

ロシアのウクライナ戦争が起こる前、ヨーロッパのエネルギー政策における最も緊急な目標は、「気候変動とCO2排出量の削減」だった。

プーチン大統領のウクライナ戦争によって、ヨーロッパ各国当局者は、石油と天然ガスのロシア依存度を急速に低下させることに躍起となった。

そのためのエネルギーバランスを確保するために、欧州各国は、より多くの石炭を燃やしたり、ロシアに代わる他の地域から化石燃料を輸入するために、新たなパイプラインやターミナルをより多く建設しなければならない。3月25日、米欧の当局者は、今年中に、米国などから欧州への液化天然ガスの輸出を拡大する計画を発表した。

LNGの受け入れ基地を持たないドイツは、北海沿岸に2基の基地を建設することを推進している。スペインはピレネー山脈を越えてフランスまでガスパイプラインを延ばしたいと考えている。ドイツとチェコ政府は石炭火力発電所の延命を考えている。また、ドイツでは、メルケル前政権が決めた2022年原発ゼロを、ショルツ現政権は差し戻す動きもあるそうである。

https://www.reuters.com/world/europe/german-ministries-say-cannot-recommend-extending-nuclear-plants-lifetime-2022-03-08/

In response to Russia's invasion of Ukraine, Europe's largest economy late last month floated the idea of keeping nuclear plants as part of its energy mix to diversify away from Russia, which delivers most of Germany's natural gas.

EUは、CO2排出量を1990年比で55%削減することを法律で定めているが、ロシアからのエネルギー自立を急速に進めているため、欧州のCO2排出量は「若干増加する」ものの、「長期的には自然エネルギーやエネルギー効率への投資が増えることが期待されている」と言われている。

一方、米国のバイデン大統領であるが、米国産LNGの欧州供給へのコミットメントに対して、強い逆風に直面していると言われている。

3月25日、バイデン大統領は、「2022年以降、米国の液化天然ガス(LNG)
業界が、欧州に150億トンのLNGを追加で供給する
」ことを約束した。しかし、この約束発表の前に、バイデン大統領は、LNG業界と話をしていなかったことが判明し、業界関係者にとっては不意を突かれた形となった。

業界は民間企業であるため、大統領が国家的な課題に沿った事業運営を命じるには、国防産業法(DPA: Defense Production Act)などの緊急権力を発動するしかない。例えば、ドナルド・トランプ前大統領は、パンデミックの際、DPAを利用して重要な機器や医薬品の生産を早めた

現状では、バイデン大統領の民主党の有権者の多くが、このような動きに反対するとのシグナルを出している。

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