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必見!我が国のカーボンリサイクル技術

カーボンリサイクルとは

2050年迄にネットゼロ実現のためには、例えCO₂を排出したとしても、CO₂の分離・回収・利用技術があれば、将来の有望な選択肢の一つとなります。

そのイノベーションは重要です。我が国では、CO₂を廃棄物ではなく有用物として回収し、多様な炭素化合物の原料として利用する「カーボンリサイクル」技術の開発を数年前から進めています。気候変動問題の解決への貢献、また新たな資源の安定的な確保という2つの課題解決を両立させるものとして期待されています。

カーボンリサイクルの概念図(METI HPより)

図 の左側には、火力発電所や化学工場等から排出されるCO₂を回収して、触媒による合成反応を行わせメタンやメタノール等の有用な化学品や燃料を製造するスキームが描かれています。

また、右側には、空気中のCO₂を直接回収(DAC: Direct Air Capture)して炭酸カルシウム、コンクリート、建材等を製造するルートが描かれています。

2019年6月、カーボンリサイクル技術についてのロードマップが策定されました。この技術のイノベーションを加速するため次の2つを謳っています。

① CO2を原料として製造する物質ごとに、技術の現状、コスト低減に向けた課題を明確にする。

既存製品と同程度のコストを目指した技術開発を2030年と2050年に向けて進める。

また、2019年9月25日、都内のホテルで、経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主催で、第1回カーボンリサイクル産学官国際会議が開催され、国内外から多くの参加者が集まり、熱心な意見交換が行われました。

カーボンリサイクル技術開発の課題

カーボンリサイクルの技術開発を効果的に進めるためには、以下の課題について解決していかなければなりません。

第一に、多くの技術開発では、水素を原料のひとつとして利用するため、安価な水素、望ましくは、CO2フリー水素の調達が大変重要になります。

2019年9月25日に開催された第2回水素閣僚会議で、東アジア・ASEAN 経済研究センターの有馬氏が、液体水素、アンモニア、MCH(メチルシクロヘキサン)をエネルギーキャリヤー(註)として、海外から水素を輸送する場合のコストを比較しています。

大規模水素利用に係る供給コスト予測(¥/Nm3)

一例として、液体水素の場合、2020~30年の総コストは水素1Nm3当たり38円、その内訳として 、製造コストが10円、液化処理で 11円、海上輸送費が 3円(前提:豪州褐炭からの水素製造)等としています。

ロードマップでは、2030年の水素価格は 30円/Nm3、普及させるためには、20円~15円/Nm3程度が必要だと言われています。図では、2040~50年のコストが 25円/Nm3程度まで下がると予想されているが、これでは、水素やカーボンリサイクルの普及には疑問符がつくため、各ステージにおける大いなるブレークスルーが不可欠です。

また、カーボンリサイクル技術では、安定物質であるCO2を有用物質に転換するため、多大なエネルギーの投入が必要となります。理想は再生可能エネルギーの利用ですが、それらの運用性には課題も多いため、革新的な技術の創出なしには実現は難しいと考えています。さらに、カーボンリサイクル技術の評価と普及のためにはLCA(Life Cycle Assessment)の視点が重要だといわれています。

LCAとは、製品やサービスに必要な原料の採取から、製品が使用され、廃棄されるまでの全ての工程での環境負荷を定量的に表そうという考え方です。

LCAを、自動車産業で考えた場合、原油の採掘から、日本までの輸送、日本での燃料や原材料への精製や加工、部品メーカーによる製造、部品の輸送、最終組立工程、販売店への輸送、消費者による一次使用、中古車として何度か転売されての使用、場合によっては国外への中古車輸出と現地での使用、そして廃棄するまでの10年以上に渡る長い期間で、LCAを考慮しなければならない。

(註)エネルギーキャリア:液体水素、アンモニア、MCH
①液体水素:気化させることによりH2回収
②アンモニア:分解させることによりH2回収
③MCH:脱水素反応させることによりH2回収、トルエン再生
 MCH➡H2+トルエン トルエンは循環使用 トルエン+H2➡MCH

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