見出し画像

未来社会:石炭や石油・天然ガスのない社会と課題

米国のNewsmaxから
化石燃料による産業革命や農業革命がなければ、現在の我々はありません。現在、80%のエネルギーを石油や石炭などの炭化水素に依存しているわけですが、それらを取り除いてしまった未来とは、どのような世界になるのでしょう?

グリーンニューディラーの描く未来図は、2030年には80~85%、2050年までに100%の電動化を想定しています。これには輸送、暖房や冷房、産業、農業/森林/漁業など、すべての需要の電動化が含まれています

ニューディーラー未来世界の課題

米英の大学教授が、化石燃料によるエネルギーのすべてが、風力や水力、太陽光といった再生可能エネルギーに置き変わった未来世界をイメージして、課題を指摘しています。

風力-水力-太陽光(WWS)計画では、46,480件ものPVプラントを設置することになっているが、それを米国の中で実現するためには、650,720平方マイルの土地が必要であり、これはアラスカとハワイの除いた48州の20%の面積を占め、テキサス州、カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州を合計した面積に相当するということです。

・2014年末、西ヨーロッパの全電源に占める再エネの発電能力の割合は22%までに達したが、実際の出力は3%程度しかありませんでした。

米国で稼働している440MW相当分の発電所は、今後の25年内で引退時期を迎える。その後継として再エネを考えた場合、293億のPVパネルと440万のバッテリーモジュールが必要となる。そのためには、ニュージャージー州と同等の面積を準備しなければならない。また、この大量のパネルを1秒に1パネルという速度で生産しても929年かかるということです。

英国のエネルギー需要の8%を満たすためには、44,000基のオフショア風力タービンが必要となる。これを設置するためには、海岸線2,000マイル、2.5マイル幅の敷地が必要になります。

輸送部門の思惑外れの現状

・電気自動車に1台当たり7,500ドル以上の税制上の優遇があっても、政府目標に反して、EV車の売れ行きは落ち続けています。

・WWSは、輸送に対して100%の電動化を要求しています。しかし、トラック、船舶、飛行機などの大型輸送手段に適したバッテリー貯蔵は実現しておらず、技術的にも不可能という状態です。

旅客鉄道システムの電動化コストは膨大であり、私鉄で導入することはないでしょう。貨物鉄道システムについては、さらに意味をなさず、少なくとも1システム当たり1兆ドル掛かると思われます。

バッテリーの持つ資源・環境負荷

・WWS賛同者は、電力システムへの再エネ統合化コストを過小評価しているようだ。バックアップシステム、バッテリー、ロードバランシング、送電など莫大なコストが掛ります。

・1ポンドの炭化水素相当分のエネルギーを貯めるのに60ポンドのバッテリーが必要となります。1ポンドのバッテリーを生産するために炭化水素を使って50~100ポンドの物質が採掘され、運ばれ、処理されています。石油換算で1バーレル相当のエネルギーを貯蔵するバッテリーを1つ製作するために、100バーレルの石油が必要です。

・現在でもバッテリー製作のために多くの鉱物資源が採掘され、経済成長に従いその割合は拡大し続けています。現在、全リチウムの中でリチウムバッテリー生産に占める割合は40%、コバルト25%にもなります。
WWS計画は、それでも石炭・石油・天然ガスの生産を止めろと言っているのです。

クリーンエネルギー技術とメタル

クリーンエネルギー技術、即ち風力発電機やソーラーパネル、電気自動車やバッテリーストレージなどのクリーンエネルギー技術には、さまざまな鉱物1や金属が必要です。必要とされる鉱物の種類と量は、クリーンエネルギー技術の種類によって大きく異なり、また特定の技術の中でも様々です(例:電気自動車のバッテリーの化学的性質)。

例えば、現在市販されている電気自動車の90%以上は、高効率、小型、高出力密度を特長とする永久磁石式同期モーターを採用しています。しかし、ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムなどの希土類元素を使用しており、その使用量はモーター1台あたり1kgを超えています。原料や加工が中国に集中していること、リサイクル経路が整備されていないこと、価格変動が激しいことなどから、懸念されています。

また、こうしたメタル類生産の地理的集中度が高いといわれています。エネルギー変換鉱物の多くは、石油や天然ガスよりも生産量が集中しています。即ち、地政学的なリスクがあるわけです。

リチウム、コバルト、レアアースについては、生産量上位3カ国で世界生産量の4分の3以上を占めています。また、一つの国で世界の生産量の約半分を占めている場合もあります。

2019年のコバルトとレアアースの世界生産量は、それぞれコンゴ民主共和国と中華人民共和国が約70%、60%を占めています。集中度は加工事業ではさらに高く、中国は軒並み強い存在感を示しています。

精製における中国のシェアは、ニッケルでは約35%、リチウムとコバルトでは約50~70%、希土類元素では約90%となっています。また、中国企業はオーストラリア、チリ、コンゴ民主共和国、インドネシアなどの海外資産にも多額の投資を行っています。

このような集中度の高さは、複雑なサプライチェーンと相まって、主要生産国における物理的な混乱、貿易制限、その他の展開によって生じるリスクを増大させています。即ち、我が国に対しても、地政学的なリスクを十分に考えながら、ビジネスを進めて行くことが求められています。


いいなと思ったら応援しよう!