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世界は、石油とガスにどの程度依存しているのか?

“The New Map: Energy, Climate, and the Clash of Nations”の著者であるヤーギン氏が、「世界は、石油とガスにどの程度依存しているのか、よく理解していない理由」を説明しています。

https://www.theatlantic.com/international/archive/2021/11/energy-shock-transition/620813/

彼はまず、衣料品メーカー、ノースフェイスが、「政治的配慮」から、石油・ガス会社にジャケット販売を拒否した例を挙げています。ノースフェイスのジャケットの素材の90%は石油化学製品であり、そのオーナーは、炭化水素を燃料とする社用ジェット機の格納ハンガーを建設したばかりだというのにです。

【コメント】この指摘、こうした矛盾する言動は企業のトップばかりか、一般人の間でも見られることです。SDGsが流行のようになって、国連からの指令でも出ているのでしょうか、日本の企業トップがSDGsの襟章をつけて自社をアピールしています。個人的には異様に感じます。

SDGsの17項目の中には、人権に関する項目もいくつか見られます。そうした企業の中には、人件費が安いという理由でしょうか、人権抑圧する国に進出して部品を製造させたり調達したりしています。また、クリーン・テックに必要とされるレアメタルなどを、そうした国から調達しています。レアメタルを抽出するのには環境汚染がつきもので、さらに、働いている人たちの労働安全衛生の問題も起きています。

COP26では、「2050年までのカーボンニュートラルへの移行」が約束されましたが、ノースフェイスの例が示すように、これは認識されている以上に複雑なことなのです。最初の大きなエネルギー転換は、1709年にある金属加工職人が、熱源として薪ではなく石炭を使うとより良品質の鉄ができることを発見したことに始まります。しかし、石炭が薪を抜いて世界一のエネルギー源となったのは、20世紀に入ってからです。また、石油は1859年に発見されましたが、石炭を追い越したのは1960年代になってからです。世界の石炭使用量は1960年代の3倍近くになっています。

【コメント】エネルギー源は、薪➡石炭➡石油➡原子力➡ガスなどと推移してきました。現在は、脱炭素という流れの中で、CO2の排出量が少ない、天然ガスへの需要が増大しています。天然ガスもCH4であることから、CO2-freeにはならないため、水素エネルギーへの移行が模索され、技術開発や水素ステーションなどのインフラ造りが、徐々にではありますが進められています。普及させるためには、英語でいうところの "Affordable" が必要だと思います。つまり、経済性=低コスト可用性=いつでも手元にある が鍵となります。

今日の86兆ドル世界経済(2050年には185兆ドル)の80%は、炭化水素に依存しています。来るべきエネルギー転換は、このエネルギー基盤を完全に転換することになるのでしょう。この転換は、それだけにとどまらず、消費財や医療品に不可欠なプラスチック、その他の石油・ガス誘導体の使用方法にも関わるものです。


【コメント】鉱物資源は別ですが、ほとんどの物質は、炭素、水素、酸素で構成されている化学物質なので、エネルギーの脱炭素はいいとしても、原料や素材も脱炭素の対象となっているのか甚だ疑問です。低炭素は許容できますが、これを以て、脱炭素が理論破綻していると考えてしまうのか?

 インドやナイジェリアのような人口の多い国では、当面の優先事項として、炭化水素エネルギーの利用を拡大する必要があります。先進国と途上国との間のギャップは、新たな「南北格差」を生み出す恐れがあります。また、すでに起きている事ですが、国際金融機関が炭化水素開発への融資を「禁止」する動きも出ています。

【コメント】南北問題もそうですが、資源保有の有無や保有形態による格差という問題も生じるでしょう。実際、米国、豪州、中国、インドネシア、モンゴル、ポーランドなどの産炭国を訪問してみて、欧州型の専制的、「世界標準」的な指令では、何も解決しないという印象を強く持っています。


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