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日英の「技術者」観と日本の課題

英国のCE(Chartered Engineer)と付き合っていて、日本と英国の「技術者」への見方の違いを感じたので、簡潔にご紹介します。

最初に、日本にも建築士や技術士などの資格制度があり、学会などの組織に所属して自己研鑽を行っている点は、CEとの共通点です。

顕著な違いとして、英国には、技術者(エンジニア)とテクノロジスト、テクニシャンの区分が明確になっており、試験制度の中身も日本とは違っているという点です。

日本でも、工業高校、高専、理工系大学・大学院という出身校による区別はあり、それによって仕事の中身も異なっているという暗黙の区分はありますが、英国のように、はっきりと三者を区分してはいません。

日本では、そこから、本人の意思によって、建築士や技術士などの資格を取得します。受験する場合も職歴などの書類は提出しますが、技術者(エンジニア)とテクノロジスト、テクニシャンのどの資格を目指すのかといった区分はありません。

英国人CEの話です。①「CEの仕事は公共性を有しており高度な知機やスキルを必要とする」という社会的認識がある ②専門意識やスキルがある他に、もの事を大局的な観点から見ることができる。試験制度も大局観を査定することが出来る内容になっている。③単なる技術者ではなく、倫理や規範を理解・判断することができ、プロジェクトを技術、事業監理、社会的な見地からも見ることが出来る ④CEには、自律(自立)性がある。

日本の技術者試験は、筆記試験による知識審査に重点が置かれており、実務実績の評価が少ない。そのため、企業からの評価が低い。日本では、「技術者」として一括りにされていることを指摘されました。技術者の社会的認知が低い、給料が安いのは、こうした背景があるのかもしれません。

今後も経済のグローバル化が進み、政治や社会も大変革する情勢となります。このような社会では、単に技術力や研究能力があるというのでは不十分でしょう。大局的な思考ができ信頼される専門家が必要となります。技術の他に、世界観といったものを持っており、それを軸に、専門技術や監理能力を創造的に活用できる技術者が必要です。

世界観は戦略を策定する思考の根拠となります。その戦略の下に、戦術としての技術やスキルがあり、その上に具体的な作戦が構築されます。技術のみでは、上位の戦略家に差配されるだけの存在になってしまいます。考えたくもありませんが、国家レベルで考えると、中国市場に差配される存在になってしまいます。日本の技術者の在り方も、変えていくべき時に来ているのかもしれません。

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