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奪われる労働時間

正月に屋久島の実家で過ごしました。

母親一人の生活は思ったほど不自由をしておらず、庭の木の伐採や、台風で壊れた扉の修理など、何かあれば頼れる人が周りにいるので大変ありがたいことです。
それでも、照明のシェードの掃除など、人に頼むほどでもないけど、高齢となった自身では行えない作業などをまとめてしておきました。

いまは歳をとって人に頼ることも多くなってますが、母はよく働く人でした。なんでも自分でやってました。専業主婦だったけれど、いつも働いている印象しかない。

そんな母と20年ぶりにアップルパイを作ることになりました。

いまお世話になっている会社にアップルパイ好きの人がいて、昔よく作ってたなんて話をしてたら、なぜか作って持って行くことになってしまった。笑

いまは冷凍のパイ生地まで売ってるんですね。
でもパイ作りの醍醐味は生地作りだという信念のもと(笑)で、40年前のレシピノートを見返しながらやってみました。

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とにかくバターを溶かしたらダメ!という記憶は鮮明にあったものの、作り方は詳細まで覚えてなかった…。昔はよく作ってたのになぁ。結果、残念ながらあまりうまくできなかったので、またリベンジしたいと思ってます。

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なぜ手作りパイをよく作ってたかというと、その昔、中東で家族と過ごしたことがあったからです。特に乾季には作物の流通もなく、加工食品なども食べ慣れたものはほとんどありませんでした。
ないものは自分たちで作ろうと結構な挑戦をして、パンやクッキー作りはもちろんのこと、バームクーヘン、アップルパイ、ミートパイ、果ては納豆、味噌、ラーメンまで自家製。そうやってなんでも作ってました。ぼくは母のつくるシナモンロールが大好きでした。

いまの日本はなんでも揃っているので、わざわざ作る必要はない世界に住んでいます。省力化も進んでるし便利この上ない。

そんな感想をもったときに、ふと年末に観た「マトリックス」を思い出した。最新作を映画館に観に行きたかったので、旧作を復習したんですね。
そこでは、人間がコンピュータの動力として電力供給するために生かされる世界が描かれていました。恐ろしい…

そこまで理不尽な世界ではないけど、生きづらさを感じる社会なんて言われてる現実。

便利で豊かなはずなのに、幸せを感じられない世の中。

総量としては労働から解放されているはずなのに、社会や家庭で役割を失って、尊厳を奪われているように感じるのはなぜだろう。

子どものころ、何もないから仕方なく作ったパン。でも家族と粉まみれになってた時間は間違いなく豊かだったと思う。子どもたちにも役割があって誇らしかった。

いまはコンビニエンスな社会と引き換えに、労働からの解放ではなく、労働時間を奪われ、尊厳を感じる機会を失っているのではないだろうか。なんてことを思い起こす正月休みでした。

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