リモートワークが進まないのは、会社にいないと余計に仕事をしなければならなくなるから。
テレワークデイをご存知でしょうか。オリンピック開催で交通麻痺が予想されたために、その緩和策であるリモートワークの普及を目的として、2017年に開会式と同日の7月24日に定めたものです。
そして、いよいよ2020年を迎えたわけですが、そこに来ての新型コロナウィルスの流行で、その対策としてリモートワークが注目され、一時的にではありますが、電通や資生堂といった大手が5000人、8000人という規模で一斉に在宅勤務に切り替える事態になりました。もし、今年の祭典に向けた準備がなければ、早このような急速な対応は難しかったのではないでしょうか。
では、このまま感染対策として、あるいは2020年以降の働き方として、リモートワークが一斉に広がるかというと、必ずしもそうではないと思っています。もちろん、デバイス、通信手段、セキュリティ対策、人事制度などインフラにかかるコストの問題もありますが、一番の要因は、社員のマインドにあると考えています。
実態として、国内企業の多くの管理職は、目に見える範囲で社員を把握できないと不安を感じてしまうのではないでしょうか。その不安の正体とは何かというと、一つは、そばにいないとサボるのではないかという心配が挙げられます。しかし、もっと大きな問題は、マネージャーの手腕が問われてしまうことにあると考えています。これまでの働き方をしていれば、同じオフィスにいるだけで、管理できてる気になる(ふりをすることができる)のに、リモートワークの体制では、いままで以上にチーム運営の手腕を問われることになるからです。
だいたい日本においては、職務分掌がはっきりしてないことが多いですし、成果の定義が曖昧なことが多いので、マネジャーは、リモートワークをしている部下の生産性を評価できないのではないかと思うからです。
そして更なる問題として、実は管理される社員側にも、リモートワークを望まない人たちが出てくるのではないかと、僕は読んでいます。
もし、同じオフィスにいれば、仕事をしていようがいまいが勤務したことになるので、成果についてはそれほどフォーカスされないで済みます。しかしながら、リモートワークをした場合には、より成果にフォーカスされることになりますので、短期的にはサボったりできても、中期的には、生産性の低い仕事をしていると、それがバレバレになるので、仕事のやり方を変えたくないと思う人たちが一定数出てくるという仮説です。
僕自身もリモートワークを7年近く実践して、生産性を問われる緊張感を味わってきましたので、全ての人に受け入れられる働き方とは思いません。
このように、リモートワークを推進すると、管理する側も、される側も、不都合が生じてくる人たちが出てきますので、何かと理由をつけて抵抗するのではないでしょうか。
リモートワークで、無駄な移動時間をなくしたり、QOLを高めていくことができると思っていますし、同時に、よりシビアに仕事を評価されていくことになるので、生産性も高まることも期待をしています。
しかし、普及が進まないとすると、その原因は皮肉なことに「今まで以上に仕事をしなければならなくなるから」ではないでしょうか。
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