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「深夜高速」を聴いて、生きててよかったと思う夜を想う

THE FIRST TAKEにフラワーカンパニーズが出ていて、「深夜高速」を歌っていた。

アコースティックアレンジだからか、演奏する一人一人が映し出されるカット割りを通して、より洗練された大人の世界がみえた気がした。

若手が目立つこのTHE FIRST TAKEのなかで、このご時世のこのタイミングで、フラワーカンパニーズが「深夜高速」を歌っている、というのはどうしてもというか否が応でも運命的な何かを感じてしまう。
必要とされるときに、必要とされるべき言葉を歌っているというか。

終わった後のインタビューで話されていたけれど、多分ライブができないとかフェスが中止になったりしている音楽業界を思いながら前のように歌える日常が戻ってほしい、という気持ちで歌われたと思うのだけれど、どこか奥深くの社会的なものも感じてしまう。


そう言えば、気がついたらこの曲は知っていた気がする。

「深夜高速」というタイトルからして、夜の情景が思い浮かぶ曲。
改めて夜が好きになったきっかけの曲でもあるなと思う。

個人的な回想だけれど…
その昔というか小さかった頃は"夜"という時間や場所が大人の世界だと思っていた。
だから隠れて夜更かししてみた時はちょっといけないことをしているようで緊張したし、夜更かしして良い日は大人の世界に足を踏み入れたようで少し嬉しく鼻が高くなったような気持ちになった。

小さかった頃は親によく連れられて、大人の飲み会の中に参加することが多く、必然的に年上の大人たちと話をすることの方が多かった。
そのころ目にしていた、夜の街でお酒を飲みながら楽しそうに話をする大人たちの姿は、小さかった頃の自分にとってどこかかっこよく見えた。

青春ごっこを今も
続けながら旅の途中
ヘッドライトの光は
手前しか照らさない

今にして思えば、大人と呼ばれる人たちなのに子どものような心を持っていた人たち。

優しく頭を撫でてくれたゴツゴツとした手。
くしゃっと笑った時のシワが刻まれた顔。
白髪混じりの髪の毛。
くたびれた感じの背中や、シャツ。

もちろん楽しい話だけではなくて、愚痴のようなものもあったし少し先の不安なことの話もしていた。
そうしたいろんな人たちを見ることができた中で、なんとなく漠然と思ったことはある。

いつか大きくなったら、大人と呼ばれる頃になったら、自分もああいう姿になれているのだろうかと。
歳を重ねていくにつれて、かっこいい大人になりたい
と思っていた。

年をとったらとるだけ
増えていくものは何?
年をとったらとるだけ
透き通る場所はどこ?
十代はいつか終わる
生きていればすぐ終わる
若さはいつも素裸
見苦しい程ひとりぼっち

そしてだんだんと夜更かしをする時間は多くなった。

それが当たり前のようになって、夜の時間に起きて何かをしている、というのが普通になって見ている景色もずいぶん変わった

夜の街に照らされた明かりやお店のギラギラした明かり。
通り過ぎていく車のライト、トラックの眩しい光。
夜の街を駆け抜けていく電車の音に 踏切の音。
夜の街を下を向きながら歩いている大人の姿や、元気な学生が大きな声で話している姿。

いつだって夜はワクワクしていたけれど、同じくらいつらい時間にもなった。

かっこよくないと思う大人に出会ったこともある。
身の回りに起きることに悩みもがき、誰かに傷つけ傷つけられ、自分がしてきた選択を振り返って行き場のない気持ちを抱えたこともある。
生きてくことがつらくなって心が張り裂けそうになったこともある。

夜はだんだんと、どこか出口のない場所になってきているように思えた。
魔が差す、という時間帯なのかもしれない。

そんな時にたくさんの音楽を聴いてきた。

聴くことでどこか救われる世界があったから。

「深夜高速」もその一つだった。

出口のないと思っていた夜に、一つ一つの言葉に魂を込めるように、身体から言葉を出し尽くすように"生きててよかった"と何度も歌い上げる姿はかっこよくて、なにか自分の中でわだかまりのあったものが解きほぐされていくように思えた。

とても強い意志のある曲だと思う。
でもそれは時として強い刺激になってしまうかもしれない。

時には目を背けたくなることだってあると。
生きていくことはとても大変なことだと。

だけれどこの曲は、なにかを取りこぼすでもなく、嫌なことがあってもそれすらも持っていきなよ、と歌っているように思った。
そして、出口を諦めることなく探し続ければ、歩き続けてさえいれば、そのさきにきっと"生きててよかった"と思える夜がくる、と教えてくれている気がした。

生きててよかった
生きててよかった
生きててよかった
そんな夜はどこだ

そして新ためて、THE FIRST TAKEで聴く。

あの空間で音を奏で、歌っている姿は変わらずかっこ良いと思う。
進化し続けているフラワーカンパニーズの面々が年を重ねた姿をみて、自分が重ねてきた月日を思う。
そして、どうしても今年のことを振り返ってしまう。

1年を振り返るにはまだ早いけれど、今年はいろんな悲しいニュースがあった。世界はいろんなことが目まぐるしく起きて、いまだって出口のない道を歩いている気がする。むしろこれからだって出口のない道を歩いてくと思う。

しばらくは、行き場のない思いや不安を抱えて過ごしていくのだと思う。

そんな時にどうか、この曲が、この言葉が、必要とされている人に届いて欲しいと思う。
自分にとっての生きていてよかったと思う夜を、どうか探して欲しい。時に歩みを休めたり、寄り道をしながらでも探してほしい、と思う。

そして自分にも戒めを込めて書いておく、そんな夜を探し続けろよと。

生きててよかった
生きててよかった
生きててよかった
そんな夜を探してる


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