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十七歳の夏

noteをご覧の皆さま
いつもありがとうございます。

本日hikariさんから「#noteリレー」の
バトンを頂きました。

頂いた「お題」は
「ゆるくて。あまくて。かわいい」

こんな創作は経験がないので
一発勝負ですが、
夏という季節は高校球児の自分の季節。

挑戦あるのみです。


十七歳の夏

十六歳の夏
球場内に声が響く。
打順ポジション名前
うぐいす嬢の声。
声が脳裏を離れなかった。

十七歳の夏
球場のアルバイトをすることになった。
声が忘れられなかった。
初日に学生アルバイト同士の挨拶をした。
背筋を電流が走るというが本当だろうか。

球場のアルバイトは様々なことをする。
男性陣はグランド整備がメインの仕事だ。

二年半に渡り毎日
グランド整備をしてきた技量の見せ所だ。

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女性陣はアナウンスがメインだ。

スタンドのゴミ拾いなどは一緒に行う。
いつからだろう。
キミと一言二言の話をするようになった。

何かを一緒に持ったね。

均整の取れた姿
美しい長い髪
僕の好きな顔立ち。

この球場を使用するのは
五回戦までだっただろうか。
準々決勝からはスタジアムだ。

此処は野球王国だ。
一時期は
県大会を制すものは
全国を制すと言われていた。

アルバイトの終わるときが来た。 

男同士では強気で通る男も
女にはまったくのダメダメだ。

照れ屋さんはどうしょうもない。

何もキミとは約束できなかったな。

また会えるだろうか。

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準々決勝

キミの姿があった。

応援に来ていたのだ。
チームは勝った。
次は準決勝だ。

準決勝のスタンド。
今日もキミは応援に来ていた。

僕は嬉しい気持ちでいっぱいだ。

今日は甲子園優勝経験のある
チーム同士の因縁深い対決だ。

自分たちの代は

まだ一度も勝ててない。

弱気が首をもたげた。

彼女とは
もしかしたら
もう会えないかもしれない。

試合前のスタンド

キミの居る場所へ向かった。

声をかけた。

「もし今日負けたら、
明日一緒に応援に行こう」

「うん」

「じゃあ、この場所で」

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このときは真剣だ。
人生で初めて
自分から女性を誘った瞬間だ。

今思うと…

おい!昔のオレよ。
オマエ!

もう今日負けてるじゃねえか!
おい!オレ!
あああああああ何てことを!

チームは負けた。
泣いた。
人前であんなに泣いたことは無い。

仲間に言われた。
「オマエが試合前に女口説いてるから!」

何も言い返せないオレ。

その日のうちに
高校のグランドに帰る。
三年生は引退だ。
高校野球は終わった。

その日はぐっすり眠った。

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次の日は決勝だ。
夏服を着て
スタジアムに向かうオレ。

戦いはない。

観戦をするためだ。

一塁側スタンド

約束の場所にキミが居る。

ありがとう

早かったね。

二人でゲートをくぐる。

「押忍!」
昨日の対戦校に起立され

なぜか挨拶をされる。

少し動揺するオレ。

しかし彼女の前で動揺はいかん。
かっこ悪い。

軽く手をあげて余裕で答えるオレ。

今考えるとアホだ。
何を訳わからんことで
かっこつけていたのか。

昨日の相手校の皆さんだぞ。
お辞儀くらいしろよ。

試合を二人で観戦した。
彼女は野球に詳しい。

楽しかった。

一塁側スタンドの高校は敗戦。
少し疫病神っぽい高校生のオレ。

スタジアムを後にして氷を食べた。

こんなに楽しいことが世の中にはあるのか。

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電車で夏の海に二人で向かった。

夕暮れの海岸だ。

海水浴帰りの若者で
道路は渋滞している。

夕方の海岸を歩く二人

二人とも
白の夏服シャツ一枚。

とても目立つ

彼女の両腕は
オレの左腕にある

ふたり寄り添い歩く。

車の若者たちから
「うわ〜あっつ」と囃される。

軽く手を挙げて
かっこつけるバカなオレ。

何処まで歩いたろう。

間の記憶が飛んでいる。

駅から電車に乗って
彼女の家まで送った。

たった一度だけ恋をしたのかと思っていた。

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時は流れた。
あれから幾歳月

二人は未婚で独身だった。

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「ワインあけるの失敗。
コルクが中に落ちちゃった」

「バカだな」

「こんなの初めて」

「どうした」

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「ワインの質が悪いのだろうな」

「ワインの質とコルクの関係なのか?」

「本来、ワインは男が開栓するものだ」

「初耳だな」

「洋介も飲んでたのか?」

「毎日ね」

「アルコールが恋人ね」

「ワインはどうした?」

「網でこしてワイン飲んでる」

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月日は残酷にも二人を
ただの酔っぱらいに変えていた。

彼女には素敵な彼が居て熱愛中だそうだ。

とても嬉しい自分が居た。

(おわり)


次のバトンはケンさんにお願いしました。

いつもあたたかい言葉が散りばめられた
素敵なnoteです。

尊敬する人生の先輩でもあります。

奥様への愛情の深さは海より深く
独身者にはとても素敵に映るご夫婦です。

お題は季節柄「お盆」をお願いします。
どうぞ宜しくお願い致します。

この「#noteリレー」は
sakuさんが企画されたものです。

楽しい企画をありがとうございます。






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