[日記] 選挙に行った方がいい理由を誰もちゃんと教えてくれなかった

僕はいまだに選挙に行った方がいい理由が分からない。あまりこういうことは書かない方がよいのだろうという予感はあるが、覆されることを期待して、どうして僕がそう思っているのかを説明しよう。

まず初めに、国民全員が選挙に行くべきである。選挙は政治参加の基本であり、投票することは重要な行為だ。仮にあなたが政治に関心がないとしても、投票するという権利は行使すべきであり、誰が自分たちを導くのか自分たちで決めるべきであると強く思う。

そのうえで、僕は選挙には行かない方がいいと思っている。


投票の効用

さて、ではここで僕が選挙に行くことと行かないこと、どちらが良いか改めて考えよう。良い、とはつまり僕にとってどちらの行動がより利益的であるかということだ。僕は選挙に行くべきだという思想やイデオロギー、宗教は持っていない。そのためプレーンに、選挙に行くことに利益がある場合は行く方がよく、そうでない場合は行かない方がよい、と考えよう。

ある程度選挙について考えたことがある人なら知っているかもしれないが、選挙には「投票参加のパラドックス」というものがある。詳細は次のリンクを見てほしい。これ以降はここに書いてあることを僕の言葉で説明するだけになるので、これで伝わる人は読まなくて大丈夫だ。

簡単に説明すると、投票に行く利益Rは以下の式であらわされるというモデルがあり、そのモデル化では利益Rはマイナスになる、ということだ。

R=P×B+D-C

ここで、
・Pは自分の投票行動が選挙結果に影響を与える主観確率、つまり自分の1票にどれだけ意味があると思っているか
・Bは候補者間の期待効用差、つまり投票した人が当選したらどれ位嬉しいか
・Dは投票行為自体の価値あるいは投票への義務感、これには投票したことによる満足感や社会参加しているという実感、投票しない人間は駄目だという空気など
・Cは投票参加のコスト、つまり投票所に行って誰に入れるか決めて評を入れるという行為の大変さ
である。

要はP×B+Dの部分は投票に行くメリット、Cはデメリットである。主要なメリットデメリットが記載されているため、この式に乗っかって考えてもよさそうだ。順番に考えよう。

Pは客観的にはほぼ0である。自分の1票に意味があるのは、1票差で選挙結果が変わる場合のみだ。それ以外の場合、自分が選挙に行ってもいかなくても選挙結果は同じである。そして、そのような事態になる確率は非常に低い。特に100万票のオーダーで選挙が行われる場合においてはそうだ。Pは実際には主観確率なので、1票差で覆る選挙になる確率をどのくらいと予想するかは個人の自由だし、あるいは上記のような考えを持たずに自分の1票で政治が作られると信じていてもいい。ただ、僕は合理的なので、P≒0と見積もることにする。

Bは選挙によって異なる。大体の場合、選挙に行った方がいいとして説明される理由はBの大きさとDの大きさだ。Bの場合、変な人をトップにすると国が大変なことになるぞ、といった具合に。僕は確かにより良い政治を望んでいる。でも、そのために誰に入れればいいかというのは自明ではない。仮に投票先をランダムに選ぶとしたら、政治がよくなる確率も五分五分なのでBは0とみなしていい。しっかり選挙情報を収集し、各候補者を比較検討して決めた場合、Bは最大になるだろう。ただしここにもコストがかかっていることを忘れてはいけない。

Dは選挙に行く意義や義務感だ。これについても僕は特に感じていないのでほぼ0でよいと思う。前述のとおり僕は選挙に行くことが善行であるという価値観は持っていないし、義務感もそれほど感じていない。仮に選挙に行くと褒められて、行かないやつは白い目で見られるとしたら、僕は単に行ったふりをする。本当に行くかどうかはP×B-Cで決めて、行く行かないにかかわらず行ったという風にふるまっておけば、Dは一定になる。ちなみに、選挙に行くと投票率が上がると言われることがあるが、0.0001%上がったところで切り捨てられる数字なので無視でいいだろう。

最後にCだが、これはどのくらいかというよりメリットであるP×B+Dに見合うかの方が重要だ。僕は出不精なので投票行動自体のコストは人より高いと思う。あとBを上げる場合のコストも忘れてはいけない。

PとDはほぼ0だ。P×Bが意味のある数値になるには、世界が滅ぶくらいの不利益が無いといけないだろう。少なくとも普通の選挙で候補者をちゃんと調べたらその手間で絶対に赤字になる。そしてCはゼロではないので、僕は選挙に行かない方がいい、という結論になる。


選挙に行く理由を誰か教えてくれ

選挙には行くべきだ。これは倫理的命題だ。この倫理は僕をそれほど拘束しない。僕は選挙に行かない方がいい。僕は間違っているのだろうか?

少なくとも投票行動の経済理論は、僕が間違っていないと教えてくれているように思える。今のところ、僕に間違っていると教えてくれた人はいない。だれか僕にPやDが大きいんだと教えてくれ。コストをかけずにBを大きくする方法を教えてくれ。

僕の考えに則れば、まっとうに政治参加をする方法は他人を選挙に行かせることだ。組織で発言力のある人間になって、100人に選挙に行かせたら100票分動かすことができる。自分が行くよりPはずいぶんマシになるだろう。あるいは若者は選挙に行くべきだ、と言って、若い人に有利な政策を掲げた人に票が入るのを期待するのもありだろう。選挙に行こう、と言っている人たちは実にまっとうに政治参加している。みんなが選挙に行っている、選挙に行くのが当然という空気を作り出して、義務感を持たせて投票率を上げるのもよさそうだ。選挙行った!とつぶやいている人たちは実にまっとうに政治参加している。選挙に行こう、とか選挙行った、とかつぶやくのは実際に投票先を選んで選挙に行くよりはるかに楽だ。

僕は今のところ政治にそんなに興味が無いので政治参加しなくても別にいいと思っているけれど、将来政治参加するとしたら投票に行くなんて非効率な行動は手段にはしないだろう。その時間で自分の発言力を高めるために勉強した方がはるかにマシだ。まあ、かといってものすごくコストがかかる行為でもないから、しないよりはいいかと思って投票にいくかもしれない。気分転換がてらなら悪くない。

もし僕に投票に行くことが善だと思っているカールフレンドができたら、僕は選挙に行くことを選ぶだろう。いや、それだけだと行ったって言うだけでいいから一緒に行こうと誘われたらという条件も付けよう。そしたら十分大きい見返り、彼女に嫌われずに済む、があるから、僕だって迷うことはない。残念ながら今のところそのような誘いは受けていない。お金とかをもらうのでもいいけど多分法律に引っかかるから、僕を選挙に行く気にさせたかったら、この文章にきちんと反論するか、かわいい女の子になって僕を選挙に誘ってほしい。




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