#22 天国は続く

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真のリラクゼーションルームとは

サウナのテーマパーク的な施設で初めてのアウフグースを経験し、ふにゃふにゃのメロメロになってしまった私。そのあとの外気浴も最高だけど、クリスマスイブのドイツでは長くやりすぎると寒い。館内に数か所設けられているリラクゼーションルームに移動することにした。

そもそもこの施設には騒がしい人は誰一人いないが、リラクゼーションルームの扉を開けて中に入ると雑音はほぼなくなる。そこはまるで静寂に支配された世界だ。

広々としたスペースに十分すぎる数のベッドが並んでいる。すべてのリラクゼーションルームのベッドを合わせるとおそらく来場者全員が寝ても余るだろう。私もそのうちの一つに横たわってみる……と……

ウォーターベッドだ……!

このおびただしい数のベッドが全部ウォーターベッドだなんて、信じられない。なんということだ。

ウォーターベッド特有のぽわぽわした寝心地。人肌より少し温かい温度に包まれてベッドの中に引きずり込まれてしまいそうだ。

リラクゼーションルームの、まさに水を打ったような静けさの中、私は心の中で「わーいわーい! 最高やん、ここ。なにこれ? 天国!? ひゃっほー!!!」と大はしゃぎしていたのである。

当たり前が当たり前にできる人たち

11時からは屋外にある小屋でオレンジソルトピーリング。例によってサウナ室の前でバスローブを脱ぎ「バスローブかけ」のフックにかけておき、全裸でアウフグースを受ける。

舞踊のようなゆったりとしたタオルさばきでオレンジのフレッシュな香りの熱風を送られて、汗がだらだら出てきたころ、小さなガラスの器に入ったオレンジ入りの塩が配られてきた。肘、膝、角質が気になるところを中心に全身マッサージするとこれまた違った心地よさがある。終わってシャワーで洗い流すとそれこそ体中つるつるだ。

で、シャワーが終わるとまた「バスローブかけ」からバスローブを取って着るのだがここで気が付いた。バスローブ……よくなくならないな。だいたいみんな同じバスローブだから間違って持っていかれてもおかしくないのに。それどころか、バスローブと一緒にかけてある手荷物も、床のスリッパも、なぜだろう、置いた位置から全く動いていない。「あれ!? 私のバスローブどこいった?」と混乱している様子は一度も見かけなかった。これが、ドイツ……

レストランで謎のメニューを食す

11時半になり、レストランに行ってみることに。ちなみにここは、オプションも含めICチップ入りのブレスレットですべての支払額を管理、退館時に清算ができるので、館内でお金のやり取りは発生しない。

英語のメニューをもらうと健康を意識した料理が並んでいる。アジア系も多いしビーガン向けのものも豊富だ。料理名の横には小さい数字が書き添えてある。なんだろう? 最後までページをめくると分かった。アレルギー物質一覧だ。それぞれの数字に対応している。なんて行き届いてるんだ。

それにしても、見たことも聞いたこともない料理ばかり。散々迷った挙句、私が選んだのは……

MELON-AVOCADO SALAD with mint, lime, chili-chickpeas

謎!

optionally with sechuan-tohu or pan fried chiken breast

んー、チキンで!

文字だけのメニューではなんとも全体像がつかめないサラダと、スパークリングウォーター(これは分かる)を注文して待つ。

しばらくすると、炭酸水と一緒になぜか枝豆が出てきた。つきだし? 食べてみるとホカホカ温かくて塩気はほとんどない。うん、ヘルシー。

そして、サラダの登場。すごいのが来たよ。

大きな器に入っていたのは、丸くくりぬかれたメロン、アボカド、カリカリに揚げ焼きされた鶏むね肉。その上には、素揚げの豆と、何かしらのスプラウトがトッピングされている。一口食べてみると、当たり前だけど初めて食べる味! 不思議! でもおいしい! ライムとミントの香りがほんのりして素材の味が複雑に調和している。

ここにきてごくごく普通の枝豆、君は一体何だね!?(でも素朴でおいしいよ。好きだよ。)

天才的な発想

そこそこおなか一杯になったので、先ほどとは別のリラクゼーションルームで横になる。

もう12時かー。13時に出るかどうするか、迷うなー。

この施設、2時間、4時間、終日、と料金が設定されていて、私は9時に入館したので、13時を過ぎると、終日料金になってしまう。それに今日はこのあと、ホテルに戻って身支度しなおしてから地下鉄に乗ってバウムクーヘン屋さんとケーキ屋さんと雑貨屋さんに行く予定がある。夜にはフレンチも予約している。かといって、まだまだここにいたい気持ちもある。

そうだ、いいことを思いついた。

明日も来よう。

だって最高なんだもん。間違いなく世界中でここが一番最高。4時間しかいないなんてありえない!

明日はベルリン中の観光名所という観光名所を回るつもりだったけど、全部はもういいや。その中でどうしても行っておきたいところだけ今日のうちに行ってしまおう。それ以外はキャンセル! 今日は13時に出て観光、明日は心ゆくまでここでのんびりするのだ! 天才!!!

そうと決まれば、話は早い。私はリラクゼーションルームのウォーターベッドでくつろぎながら、この後のプランを練り直し始めた。

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