熱量のデザイン

ワークショップデザインをするうえで大切なことがいくつかあります。

参加者にとって心理的安全性を提供すること、参加者が違和感が感じないプログラムの組み立て、ゴールイメージを持つことなどなど。

そのなかで最近ワークショップを作る方からのご相談で意外と意識されていないことの一つが「熱量のデザイン」でした。

ということで私がワークショップデザインするときに気をつけている熱量のデザインについて書いてみます。

熱量のデザインとは?

ワークショップの進行を考えるために進行表を作ります。
熱量とはワークショップが進行していく場面ごとに参加者になっていてほしい状況です。
つまり熱量のデザインとは、それぞれの場面で参加者になっていてほしい状況を考えることとなります。

熱量のデザインが重要な理由

意図して熱量を設計していないと、ワークショップを実施するときに「いまって、この状態でいいのかな?」とファシリテーションしながら、不安になることがあります。
不安が募ると、ファシリテーションがぎこちなくなり、出す予定のない二の矢、三の矢を打ったり、打たなかったりで、静かになったり盛り上がったりが大きな振幅となって、参加者の不安につながることもあります。

はたまた想定以上に盛り上がりすぎて、「楽しそうだからいいか」と思っていたら、その矢先に場が芳しくない空気感になったりとか。

さらに他の人と一緒にファシリテーションするような規模の大きいワークショップでも困ったことになります。
個々のファシリテーターに参加者に働きかけて貰う必要があるのか否かの判断に困ってしまうからです。

だからワークショップデザインするときには、それぞれの場面における熱量のデザインが大切になります。

熱量をデザインするには?

前提としてワークショップの進行全体がある程度出来ている状態で、私はこんなことを考えています。

1.進行を脳内で映像にして、場面ごとの参加者に期待する様子を書き出す

そのままなのですが、頭のなかでワークショップが進んでいっている様子を映像にして思い浮かべます。
想定している参加者を思い浮かべて、人数、テーブルの数、その場の温度なども含めて。

そのうえで、まずは「うまく進行している状況」の場合で、ゴールイメージに順調に進んでいっている場合、各ワークの場面での参加者の様子を書き出していきます。

「話しやすくなっている」とか「今日のワークショップに興味を持ち始めている」とか「開示することに抵抗感が下がり始めている」とかとか。

2.参加者の様子の移り変わりが不自然ではないかという視点で見直す

そのうえで、特にワークとワークのつなぎの部分で、参加者の様子の移り変わりが自然であるか?と自分の脳天気な脳内映像を批判的に見直します。

このとき、なるべく批判的に見つめ直します。ついつい自分に甘くなったり、「大丈夫だろう」と思いがちですが、そうじゃないかもと少しでも思うことがあったら、その違和感を大切にしてほしいです。

3.不自然な点があれば、プログラムを見直す

熱量のつながりがおかしいなと思う時、プログラムデザインが参加者に負担をかけているサインです。

なのでプログラムデザインに戻って、参加者に無理のない作りに変えていきます。なによりも大切なのは、参加者がその場に居続けてくれることです。

離脱されないように、離脱したいと思われないように、ワークの時間配分や、順番を変えたり、ゼロベースでワークの全体を見直すことも有ります。

4.その場にくるであろう対象者のなかで、もっとも参加度の低い人の視点で脳内再生する

ここまででも熱量のデザインは十分かもしれません。ただ不安症な私は、参加者のなかでも一番参加度の低い人を想像してさらに見直します。

余談ですが、私はワークショップに参加するのが苦手です(笑)特に学べる系の場が”セミナー”と書かれていたのでいったのに、対話型のワークショップ形式だったときのがっかり感たるやショックが大きすぎて中座したこともあります。

だから特に◯◯について学べます系でワークショップを作る時には、学びに興味はあるけど対話には興味がないという人が来る可能性があると肝に銘じています。

ということで、学びたいだけで対話は遠慮したいという人が、その場に居られるか?という視点で、もう一度ワークショップの様子を脳内再生します。

5.参加度が低い人でも耐えられる熱量になるように、プログラムを調整する。

参加度が低い人の視点で脳内再生して、それで違和感があるところや、その人が居づらくなってしまいそうなことがないかをチェックします。

その結果、その人にとってつらい場面が想像できたら、再びプログラムを見直します。

こうして少しずつ人に優しいワークショップデザインに仕上げていきます。

実は怖い「盛り上がりすぎ」の状態

ワークショップをやり始めたころ、ファシリテーターの想定以上に盛り上がり「ああ、よかった」なんて思っていたことがありました。
ですが、そのまま盛り上がり続け、対話が促進されていくと、場がコントロールできなくなることもありました。

ついついそこにいる人達が”楽しそう”だと安心したり、うまくいったと思いがちになると思います。
だけどそれが意図したものではない場合、ともするとゴールイメージ向かっていけなくなる可能性もはらんでいることに注意する必要があります。

今回はワークショップをデザインするときの熱量のデザインについてお話しました。
進行を作っただけで終わりにするのではなく、熱量のデザイン、できればデザインの実現度をリハーサルを行って確かめてみることをお勧めします。

あなたが参加者に優しい心地よいワークショップが作れますように。

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