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元受講生 && 現役採用担当エンジニアが公式動画【テックキャンプ7つの闇】を見て思ったこと(前編)

こんにちは!よーすけ(@yosapro)と申します。

Web系自社開発企業の採用担当エンジニアです。詳しくはご好評いただいたこちらの記事をご覧いただければと思います。

本日お話しするのは、私が前回の記事でも「最近あまり評判が良くない」と記載したプログラミングスクールについて。

先日、最大手プログラミングスクールであるテックキャンプがYouTube公式チャンネルにて、

【公式が答えます】テックキャンプ7つの闇(前編)

という動画を出しました。

この動画の趣旨は

・プログラミングスクール自体はまだまだ新しい業界だ
・そのため正しい情報だけでなく間違った情報や誤解されている情報がインターネットに多く存在している
・そこでプログラミングスクール側がなるべく定量的かつ事実だけを用いて正しい情報を伝えたい

というものです。

テックキャンプ運営側の意見というのは、マコなり社長からしか発信されてきませんでしたが、今回は株式会社divの取締役CFOの方が登壇されていらっしゃいます。

直接運営に携わる方からの動画ということで、私も拝見させていただきました。

今回は前編、7つのうち弁明を試みているのは以下の4つです。

①簡単にエンジニア転職できると騙している
②転職成功率99%は嘘の数値?
③ポートフォリオが同じだから転職できない?
④メンターは素人集団?

本当に全てNOなのか?私は内部の人間ではないので運営体制についての真実はわかりませんが、元受講生である私が実際に体験した事実と、Web系自社開発企業の採用担当エンジニアとして採用側の目線で感想や現場からの意見をお伝えします。

注意点

・この記事の目的は「エンジニア転職を目指す初学者の方に正しい情報の取捨選択をしていただきたい」ということです。決してテックキャンプへの誹謗中傷や、企業価値を損なわせようというものではありません。良いところは良い、悪いところは悪いと正直にお伝えします。
・とある企業の1人の採用担当の話です。全てを鵜呑みにしないでください。


①簡単にエンジニア転職できると騙している

これは私もNO❌だと思います。

【動画内容要約】
・お客様全員と申し込み前に面談を行っている。
・その面談の中で、未経験からエンジニアになることは厳しい旨を伝えている。
・年齢や経験等で転職が難しいお客様にはその旨も伝えている。
・甘い言葉で申し込みを促してはいない。
・万が一のために2週間以内なら無条件で全額返金している。

私が入会したのは2019年3月、当時29歳9ヶ月でしたが、私も実際に申し込み前の面談に参加しました。その当時愛知県に住んでいたのでオンラインでの面談(通う予定の校舎は名古屋校)でしたが、

・年齢は受講生の中で比較的高めである。
・名古屋でのWeb系企業への転職は難しい。
・東京の企業に転職を前提でないと転職コースは案内できない。(当時はテックエキスパートという名前で転職コースとフリーランスコースに分かれていた)

など、厳しい現実をしっかり聞いた上で受講し、転職保証には頼らず自身でポートフォリオ作成や転職活動を行い、都内の会社に転職しています。

私以外の方には甘い言葉で騙そうとしているとは考えにくく、約2年経った現在もこの厳しい現実をしっかり伝えて納得していただいた上で入会してもらうというスタイルは変わっていないのではないかと考えます。

特に2週間以内の全額返金保証があるので、プログラミングをやり始めて合わなければリスクゼロで辞めることができますからね。10週間のコースで2週間返金保証がついているのは割とすごいことだと思います。


②転職成功率99%は嘘の数値?

これは確かにNOなのですが、切り取る分母には納得できません。

【動画内容要約】
・転職成功率99%を掲げている。(※2016年9月1日から2020年12月31日の累計実績)
・これに対して「捏造している」「辞めた人を弾いているから嘘」という批判をよく目にするが、嘘偽りのない事実の数字である。
・分母は以下の条件を全て満たした方
 ①学習をすべて終えた方
 ②サービスに沿って学習と転職活動を行った方
 ③転職を希望されている方
・受講生のうち75%の方が期間内に学習をやり切っていただいている。
・転職成功率はあくまで「私たちのサービスをきちんと受けていただいた場合の転職成功率」であると考えている。

資格試験の学校で、模試でB判定以上をもらった生徒の中で合格した割合を「合格率」として記載しているところはあるでしょうか?そのコースの受講者数全体を分母とするのが自然じゃないでしょうか?

じゃあ0.75 × 0.99 = 0.7425 = 74%も転職できるのか!と思われるかもしれませんが、「私たちのサービスをきちんと受けていただいた場合」の中には次のお願いごとを守れない人は含まれないと動画内で言われています。

①期日内に学習が完了している
②期日内に書類を提出している
③就活セミナーを無断欠席しない
④学習完了後に転職活動を開始する
⑤企業との面接を無断欠席しない

曲解すれば、期日内に書類を出し忘れただけで分母からは外れるということです。

企業との面接についても、無断欠席はもちろんよくないことですが、転職支援の一環として行きたくもないSES系企業との面接をセッティングさせられたという受講生の方の声も耳にしたことがあります。これを欠席した人も分母からは外されてしまうのか?であるならば、99%という数字には疑問が残るばかりです。

ものすごく厳しい条件をクリアした人を分母にしているとまでは言いませんが、明らかにポジショントーク・スクール側に有利な数字の掲載であることは間違いありません。

受講を検討している方の多くは、全受講者数を分母とした場合の転職成功率を望んでいると思います。


③ポートフォリオが同じだから転職できない?

これははっきりとYES⭕です!

【動画内容要約】
・全ての受講生に同じ課題に挑戦してもらう。
・結果として転職活動でのポートフォリオが似通ってしまう問題がある。
・オリジナルポートフォリオを作成する課題であれば上記の問題は解消できるが、自由なサービス作りにはいくつかの課題があり、取り入れていない。
・提供するカリキュラムでは総合的なスキルを身につけていただける。
・受講生全員が一定以上のスキルを均一に身につけられる機会を与えることが重要だと考えている。
・とはいえ受講生ごとにポートフォリオに違いを作る必要性は強く感じている。
・そのため最終課題で必要なスキルを身につけたあとにオリジナルのサービスや機能を作成する時間を設けている。

均一なサービス提供をする理由・オリジナルポートフォリオ作成をサポートすることの難しさは、前回の記事でも述べている通りです。ビジネスとして仕方のない部分もあるでしょう。

しかし、以下の内容(動画そのまま抜粋)については激しく反対したい。

「テックキャンプでしっかりと学習をしていただければ、すべてのお客様が一定以上のスキルレベルに到達します。このスキルをしっかりと身につけることができれば99%の方が転職に成功できていることは、実績が証明しています。」

「「ポートフォリオが同じだから」「スクールだから」という理由で転職が決まらないということはありません。」

その99%の方達の中で、オリジナルポートフォリオを作成した方の割合はどの程度なのでしょうか?私はほとんどの方が作成していると思うんですよね。

あくまで肌感覚なので事実ベースで語ることはできないのですが、私の会社に応募してくる人の95%以上はオリジナルポートフォリオをプロフィールに載せています。それでも返信率10%未満です。もはやオリジナルポートフォリオがあっても面談になかなか進めないのは転職活動を行っている方の間でしたら常識です。

フリマアプリだけでは転職成功できないのは、一部の本気を出せない方たち(量産型スクール卒業生)がフリマアプリで応募連打をしたせいでもありますので、自分で自分の首を絞めた形ですね。

それにも関わらず、カリキュラムを学習さえすれば99%転職成功できるのような伝え方はやはり疑問が残ります。

採用の立場から訂正していただきたいとすれば以下のようになります。

「テックキャンプでしっかりと学習をしていただければ、すべてのお客様が一定以上のスキルレベルに到達します。このスキルをしっかりと身につけ(たあとにオリジナルポートフォリオを作りき)ることができれば99%の方が転職に成功できていることは、実績が証明しています。」

「ポートフォリオが同じだから」「スクールだから」という理由で転職が決まらないということは(あります)

これを読んでくださっている初学者の方へ、断言します。

オリジナルポートフォリオがなきゃエンジニア転職はできません!
フリマアプリのみじゃ無理だよ!

コロナとスクール流行と未経験採用枠減少で、2020年からハードルは上がっているんです。これ以上「スクールで言われたことだけやってればエンジニアになれるらしいよ」みたいな噂話は広まって欲しくないなと願っています…。


④メンターは素人集団?

これはYES⭕ですが、理解できる部分もあります。

【動画内容要約】
・現役エンジニアのメンターもいるが、全員ではない。
・そもそも、必ずしもメンターは現役エンジニアでなければならないのか?
・自動車の免許講習の講師はプロのレーサーである必要はないはずだ。
・わかりやすく教える技術や、接客力を重視し、採用から育成まで行っている。
・採用率は2.79%(2020年実績)
・しっかり研修を受けた上で初めてお客様の前に立てる。
・顧客満足度評価は4.27 / 5

これに関しては実際に通っていたからこそ擁護できる部分もあります。

まず、卒業生がそのまま教えているとよく言われていますが、これは事実です。私の1ヶ月先に卒業した方が、そのままメンターをしていました。

ですがそれは外野が叩いているだけで、内部の人はむしろ最近まで一緒に頑張っていたちょっと先輩が教えてくれるので、親しみやすくて満足度は高いはずです。

次に、テックキャンプでは短期集中コースの場合、

基礎カリキュラム(2週間)

応用カリキュラム(4週間)

最終課題カリキュラム(4週間)

上記のスケジュールで計10週間通うのですが、現役エンジニアではない方が教えられるのは基礎カリキュラムの生徒さんまでです。応用カリキュラムに入ると、現役エンジニアがオンラインで質問対応してくれます。

なので学び始めたばかりの方には、まだ実務経験を積んでいない卒業生程度の技術力でも、教え方がうまかったり接客態度が素晴らしければ十分なのです。

ただ、免許講習の講師とプロのレーサーの例がありましたが、エンジニア転職を目指す人というのはプロのレーサーのたまごになりたくてスクールに入っているので、レーサーとしての心構えであるとか、レースに出場するときに気をつけることなどは早くから教わりたいというのも事実だったりします…。

基本的に応用カリキュラム以降に対応してくれる現役エンジニアのメンターは、教室通学だったとしても教室にはいなくて、全てオンラインでの対応になります。技術的質問には答えてくれるものの、心構えであったり、現場だとこう書きますよみたいなものも教えてくれません。この辺りを重視する方は「講師が全員現役エンジニア」をブランドとしているスクールに通う必要があるでしょう。


まとめ

①簡単にエンジニア転職できると騙している
→全員に申し込み前面談を実施し、厳しさについても説明している

②転職成功率99%は嘘の数値?
→対象分母がおかしい。全生徒数を対象とした数字を。

③ポートフォリオが同じだから転職できない?
→フリマアプリじゃ転職できません!きちんと現実を伝えて。

④メンターは素人集団?
→現役エンジニアでない人が対応できるのは基礎カリキュラムまで。

インターネットの情報は大小色々あれどポジショントークです。スクールはスクールに都合の良い事実しか教えてくれません。私のこの記事も同様に、未経験者が応募してくる企業側の立場を利用した発信です。

どちらも全て鵜呑みにはせず、情報は有効活用してください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

今後ともTwitter(@yosapro)質問箱 - Peingでどうぞよろしくお願いいたします。


※1/28追記:後編はこちら↓


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