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旅行記『ひとり福岡編、1日目』

2月3日、午前11時過ぎ。数年ぶりに乗った飛行機で羽田空港から発つ。ときおり横に揺れたり不安定に降下したりするたび、ぎゅっと手を握りしめて目を瞑った。福岡まで生きてたどり着けるだろうか。死ぬときは乗客もパイロットさんも乗務員さんもみんな一緒だ。でも、一緒だからといって怖さが消えるわけではない。怖い、という感情が人数分増えるだけだ。

飛行機の窓から見える景色を眺めていると、自分ひとりの存在って本当にちっぽけなんだよなぁ、なんて改めて実感してしまう。スカイマークは機内サービスでキットカットをくれるらしい。パッケージにピカチュウがいてかわいかった。

甘いものを食べたら、ちょっとだけ恐怖が薄れました。助かった


1時間20分ほどのフライトを終えて、福岡空港に着陸。ふぅ、私、生きているぞ。初めて訪れた地への期待感よりも、死ななかったという安堵からしばらく抜け出せなかった。私、意外と生きる気があるんだな。

福岡空港についてまずはじめにすることは決めていた。それはターミナルビル3階の「ラーメン滑走路」というフロアで博多豚骨ラーメンを食べることだ。福岡でラーメンと明太子を食べることが、かねてからの私の夢だった。

ラーメン滑走路内を一通り歩きながら、どこのお店に入ってみようかなと数分悩んだ。こういうときは直感頼り。メニューに載っていた写真に惹かれて、私は「一幸舎」というラーメン屋さんに入った。名前だけは聞いたことがあった有名店のそこはほぼ満席。ひとり席のカウンターだけ運良く空いていて、グラスビールとラーメンの食券を店員さんに渡した。麺の硬さはバリカタ。

席につくと、間もなくグラスビールとラーメンが運ばれてきた。緊張しっぱなしのフライトで既に疲れ果てていた心身にビールと濃厚な豚骨スープがしみわたる。

一幸舎の味玉チャーシュー麺


このクリーミーな豚骨ラーメンは、どうやら「泡系」と呼ばれているらしい。クリーミーな豚骨スープがコシのある麺に絡んでたまらない。チャーシューの旨味も然ることながら、トッピングのきくらげが良いアクセントになっていてこれまたおいしい。これが全ての調和が取れた豚骨ラーメンか!!!

ビールとラーメンでおなかいっぱいになった私ははたから見てもとても満足気な顔をしていただろう。思い返すと恥ずかしい。ひとまずラーメンミッションはクリアしたので、まだちょっと早いけれどPayPayドームへ向かうことにした。今回の福岡旅の目的、それは私が敬愛するバンド、King Gnuのライブだ。

福岡空港からPayPayドームの最寄り駅である唐人町駅へ向かう電車には、King Gnuのツアーグッズを身につけた人がたくさん乗っていた。ついつい話しかけたくなってしまう気持ちを抑えながら平静を装う。天気はあいにくの雨だったけれど、楽しみなライブを控えた私の気持ちは晴れやかだ。

開演2時間前にPayPayドームに着くと、人の多さに圧倒された。ドーム規模のライブには何度も足を運んでいるのに、毎回びっくりしてしまう。人間ってこんなにいっぱいいるんだな。ここにいる人たちがみんな同じバンドを好きだなんて、ものすごいことだよな。内心しみじみしながら、私も例にならってトラックやオブジェの撮影をする。

PlayStation × King Gnu
毎度恒例のトラック
チュロスも食べてお祭り気分


1日目の座席はアリーナ席の中央。1月に行った京セラドーム公演と見え方はほぼ同じだ。表情までは視認できないけれど、ステージ全体が概ね見える。King Gnuのライブはたとえ会場最後列でもヘヴンなので無問題。

ライブ前はいつもそわそわして早く着席しすぎてしまうので、開演まで時間を持て余した。隣の席の人もひとり参戦だな、話しかけちゃだめかな。話したくないタイプだったらめっちゃ迷惑だろうな、やめとくか。そんなことを悩んでいるうちに開演時間、これがお決まりのパターンです。

ライブが始まってからの記憶はほとんどありません。とても楽しくて幸せで切なくて最高でアドレナリンが出て私がいちばん私になる、そういう時間でした。1曲ずつ感想を書いていたらとても長くなってしまうので全体の感想だけにしておきます。音楽が生き甲斐だ、音楽がないと生きていけない、だなんて言ってしまえる自分が恥ずかしかった時期はとっくに越え、私はKing Gnuの音楽に生かされて、人生の伴走をずっとしてもらっているな、と素直に思います。数十年後、私の人生をふりかえって誰かに語るとき、絶対にその名を挙げるバンド。なくてはならないたからものの音楽。彼らがいつかステージを去っても、私はずっと大好きです。

公演ごとに色が変わるロゴ。福岡1日目は青!

ありがとう、それ以外に伝えられる言葉は見当たらない。手を叩いてアンコールを叫んで、大切で大好きな曲を2曲、人生最大の声で合唱しました。ステージを去る彼らに拍手を送りながら、その偉大さにため息が漏れる。ライブ終わり特有の余韻に浸りながら規制退場のアナウンスを聞く時間、幸せで寂しくて、だけれど生きてゆこうという強い気持ちが湧いてきて、いつも泣いてしまいそうになります。本当に素敵な時間だった。

ライブ会場を出ると、人、人、人、で急に現実へ引き戻されます。駅までの道のりが長い。夕食を食べるお店は決めていたので、人混みのなかをゆっくりゆっくり進みながら目的地へ向かいます。唐人町から電車に乗ってみたものの、2日目はPayPayドームから大濠公園まで歩いて帰ろうと決めました。

飛び跳ねまくって痺れた足をよっこらよっこら動かしながら、大濠公園の近く、「たかさん」へ。日本酒がたくさんあるよ! という口コミを見てここに決めました。21歳女性がひとりで入るには若干敷居が高いかな、と思いましたが気さくな店主と店員さんが出迎えてくださって一安心。カウンター席の端っこで、早速九州の日本酒を3種類と店主おすすめの日本酒、新鮮なごまカンパチ、もつ煮込み豆腐、穴子と明太子の天ぷらをいただきます。

左から若波(福岡)、田中六五(福岡)、光栄菊(佐賀)

店主いわく九州の日本酒よりも関東の日本酒の方が味がしっかりしていておいしいらしいのですが、福岡のお酒も佐賀のお酒もさっぱりと軽い口当たりでとても飲みやすかったです。食事のお供に最適!

ごまカンパチ

大好きなカンパチがおすすめメニューに載っていたのでお願いしました。こんなに新鮮でぷりぷりしゃきしゃきなカンパチは食べたことがなかったので、思わず声を出して唸ってしまいそうになります。隣にもお客さんがいたのでなんとか堪えました。まろやかなゴマだれとカンパチ、ベストマッチすぎるぜ!

穴子天と明太子天

そして「たかさん」の目玉メニュー、天ぷら。こちらは衣がサクッと軽く、いつもは天ぷらを食べるとすぐに胃もたれする私が何個でも食べられてしまいそうなほど油の味が上品で、これまた食べたことがないほどおいしい天ぷらでした。穴子はふわふわ、本場の明太子は言わずもがなに最高の塩味と食感です。

もつ煮込み豆腐

最後の1品はこちらのもつ煮込み豆腐。福岡にきたらやっぱりもつを食べなければ! という気持ちでお願いしたこちら、ぷるぷるのもつに感動しながらお豆腐をひと口食べてびっくり。なんだ、このほろほろとした食感のおいしすぎるお豆腐は……。どこのどんなお豆腐を使っているのかお聞きしたかったところですが、その勇気は出ませんでした。もつもお豆腐もお出汁も最高です。

寒菊(千葉・今年と令和5年)

店主おすすめの日本酒で〆! 福岡のお店で関東のお酒をおすすめされるとは思っていなかったのでびっくりしましたが、たしかにこちらは味がしっかりめで口当たりもさっき飲んだ九州のお酒より重い。昨年のものと今年のものを飲み比べさせていただいたのですが、使用されているお米が違うので味の差がはっきりとわかりました。1年熟成されている方がどっしりとした旨味を感じられて好みだったけれど、今年の方も飲みやすい! どちらもおいしくて甲乙つけがたいです。

たらふく食べて飲んでこんなに幸せになっちゃっていいのか? 常連さんとの会話にも花を咲かせて、とても楽しい時間を過ごしたあとはホテルへ。2日目に備えて早寝します。

余談ですが、ホテルへの道中にたばこの自販機があったのでラッキーストライクを買いました。こちら、King Gnuの常田さんが吸っている(吸っていた)煙草なのです。ライブ終わりにメンバーと同じ銘柄を吸うのが夢だったので、喫煙可のお部屋で数本吸ってから寝ました。

紙煙草の銘柄は迷走していたのですが、しばらくはラキストを吸おうと思います。その次は井口さんのセブンスターかな。旅ならではの浮遊感に浸って、充実の1日目となりました。

(本当は3泊4日分、一気に書いてしまおう! と思っていたのですが想像以上の長さになったので、小分けにして書こうと思います。ひとり福岡編、2日目へ続く!!!)


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