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作り方


はじめに蛋白質の皮に水と脂を詰めておく


桜の花びらに別れの合図
もぎ取った若芽にまあたらしい感情
花火の端っこに蝉の抜け殻
破れたポイに夜店の残像
枯れかける藻に剥がれ落ちた鱗片
靴の裏の濡れ落葉にさよならの予感
鍋縁の乾いた白菜に伝えられなかった言葉
育たなかった蛹に雪道に融ける流行歌とを
混ぜて入れる


先ほど入れた春夏秋冬の上に
正しい暴論と間違った正論
夜に書いた手紙と朝に破った手紙
あなたへの憎しみとあなたへの愛
正反対のものを何種類か(※お好みで)
ここで飲み込めなかった遺骨も投入


不可抗力の強さで欠乏してひらいた穴から
するする流れゆく数多のものたちに敬礼をして
封をとじればできたわたし


完成


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