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初めてゲームを自作して考えたこと。

2020年の9月、配達員のオカルト・ホラーノベル【申刻】をノベルゲームコレクションにてリリースしました。フリーのホラーゲームです。

リリース当初はシナリオ1しか公開しておらず、その後2021年3月までの半年をかけて全4つのシナリオをリリースし、奇跡的に完結することができました。

2021年8月21日現在は、上記のノベコレ以外に、「ふりーむ」「フリーゲーム夢限」「GAMEアツマール」の合計4つのプラットフォームで公開しており、スマホとPCで遊べます。

ノベコレ:https://novelgame.jp/games/show/3948
ふりーむ:https://www.freem.ne.jp/win/game/25266
フリーゲーム夢限:https://freegame-mugen.jp/adventure/game_9408.html
GAMEアツマール:https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm19165

申刻公式サイト:https://sarukoku.studio.site/

※以下の文章には所々ネタバレがある可能性があります。
読んでもゲームを楽しめる内容ではあると思いますが、ネタバレが無理な人はこれ以上読まないことをお勧めします。

自作ゲームリリース当初

シナリオ1をリリースした時、完結編のシナリオは全くできていませんでした。「だいたいこういう感じ」というのはありましたが、各シナリオとのつなぎなどは全く考えておらず、シナリオと呼べるものは一文字すらない状態でした。

「どうせ誰にも見てもらえないよな」
「同情で数回プレイしてもらえればいいか」


程度の気持ちでリリースしました。正直、完結させようという気持ちもありませんでした。本当に、心から、見向きもされないと信じていたからです。

今思えば、この後ろ向きな気持ちがあったので「こだわっても無駄。さっさとリリースしよ」と思えたかもしれません。結果的にこの判断がその後一年続く沼に僕を突き落としたのでした。当初は画像もほとんど同じで、音などの演出もほぼついていませんでした。

ストーリーのベースとテーマ

申刻の1〜4のシナリオは全て実在する事件を混ぜ合わせ、肉付けしました。どのシナリオも「他者からの無関心」をテーマにしています。

主人公が配達員なのは、自宅という超プライベートゾーンに侵入してくる存在にも関わらず、関心を持たれない存在だと思ったからでした。

「配達員がやばいやつだったら嫌だな」
「いやいや、配達員もやばい家に配達したくないだろう」
「配達員って住人にどのくらい関心持つんだろう」

というところから妄想を広げました。

自作ゲームの主人公について

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申刻の主人公はある目的のために配達員をしています。ただ淡々と仕事を進める性格だけど、ある一点に関しては凄まじく豹変します。
この設定にしようと思った時、黄昏時をもう一つのテーマにしました。
子供の頃に教科書で読んだ以下の内容を思い出したからでした。

夕方にかけて西日が差したり暗くなる時、影が濃くなって前から歩いてくる人が誰かわからなくなる。「誰そ彼」(彼は誰なのだろう)と人が思う時間を「黄昏」という

本当にこんなことが教科書に書いていたのか、今となってはわからないですが、この記憶から黄昏時である16時前後を話の舞台にしたのでした。

自作ゲームをリリースして驚いたこと

感想をもらえたこと。
実況してもらえたこと。
これに尽きます。

「えっ感想もらえるんだ…こんなゲームに…????」

が正直な気持ちでした。
客観的にみて、どう見ても「うわぁ面白そう!ワクワク!」という感じのゲームではありません。

今風のイラストも、声もなく、いかにも手垢のついたホラー、しかも実写です。(というか、個人制作のゲームに声優を起用することがあるなんて夢にも思いませんでした。)

でも、「みてる人がいる」と思うと、クオリティの低さに土下座したくなりました。実況はさらにその上をいく驚きでした。そもそもゲーム実況というジャンルも、ユーチューバーやライブ放送みたいなものに全く興味がなかったので「えっなんで実況?!」が第一声でした。

それから、自分のゲームの実況は全部追いかけて、何度も再生して見ました。Twitter上でエゴサというのをしたのも初めてでした。再生してみているうちに、実況者さん達が「扱いにくそう」にするタイミングに気づくようになりました。

特に、シナリオ1だと「赤ちゃんの泣き声」のところです。

まさか、声に出して読む人がいるとは思ってなかったので、雰囲気だけで作ったのでした。

大体の実況者さんはちょっと読んで吹き出すかスキップするなどしており、そうりゃそうだと思いつつ、ごめんなさいごめんなさい。せっかくプレイしてくれたのに…とここでも土下座したくなりました。

そこで、数人の実況者さんに勇気をだしてDMやリプでアドバイスを求めてみました。 ↓ 多分こんな感じで聞いたと思います。

質の低いゲームで申し訳ないです。
「もっともうした方がいい」と思ったところはありませんか?
「赤ちゃんの声」は読みにくいと思うので、
音声を入れようと思っているのですが…

正直、返事がもらえるとは思わず、最悪ブロックされたり、実況を消されたりするかもと思いつつ聞いたのですが、返事はこれまた全く予想していなかったものでした。

「荒削りなところがいいんですよ」(※意訳です)
「赤ちゃんのSEは入れなくていいと思います」
「あそこは  ”実況者が面白くするところ”  なので」

僕はこの返事を読んで、ものすごく感動しました。

「面白くするところとかあるんだ!!すっげえーーーーー!!!」と。

この時から「【申刻】はどんなに質が低くても必ず完結させる。」と決めました。

ゲーム制作で辛かったこと

完結させる!!!!と意気込んだのはいいものの、シナリオ1の時は大きな手戻りもなくリリースまでいけたのに、シナリオ2、シナリオ3は両方途中で大幅に作り直し、すごく辛くなりました。作り直した理由は以下です。

・面白いと思ってたシナリオがゲームにするとつまらない
・素材が見つからない
・テストプレイでゲシュタルト崩壊する

最初に用意したシナリオをそのまま繋げればゲームになるつもりでいました。シナリオを用意する段階で分岐やバッドエンドももちろん考えていました。なのに繋げると全然思っていた雰囲気が出ず、全く面白くなかったのです。

特にシナリオ2は、シナリオを全部つなぎ合わせ、素材や演出を用意したにもかかわらず、テストプレイ段階で全部没にし、もともとのシナリオは跡形もなく消えました。
シナリオ3も、七割程度作った段階で、かなり方向転換をしました。
ただし、作り直したものが「よし、これで面白い」とは思えませんでしたが、いくらかマシと思ったのでリリースしたという感じでした。
リリースのたびに「きっと今までプレイしてもらえたのはラッキーだったんだ」「これで愛想を尽かされるだろう」「これで見限られるんだ」と極度のメンヘラ化と挙動不審に陥り、心底怯えながらリリースしました。

正直、この気持ちは2作目を出した今も全く変わってないので、多分今後もゲームを作ってリリースするたびに同じ気持ちになるのだと思います。

他に新鮮だったこと

リリース以外でも新鮮に感じたことがたくさんありました。

・ゲ制用に背景だけ、キャラクターだけの絵を売ってる人がいる
・RPGツクールやUnity以外にも制作ツールがあること(ウディタとか)
・作品の批判的な実況をされることもあるらしい
・実況はネタバレになるから嫌だという人もいるらしいこと
・実況により、実況者が収益化することが嫌だという人もいるらしい
・著作権まわりの色々は最大限気をつけなければならない

いろんな思想があるのだなと思いつつ、ゲーム制作界隈に一切知り合いがいない僕はルールや規約以外のところはあまり気にせずにいます。

なので、実況や生放送は大歓迎ですし、ネガティブなレビューも、僕の知らないところで言うのは問題ないです。(見つけたらブロックくらいはするし悪質なものはダメですが)

ゲームを作ろうと思ったきっかけ

去年の夏頃、僕は仕事で新しい案件を他の担当者から引き継いだところで、クライアントとのやりとりもうまくいかず、仕事に対する不満と自分への失望が溜まっていました。
そんな時、先輩から「Unityでゲーム作ってるんだ」と聞かされ、突然企画をまとめたPDFが送られてきました。

もともと、ホラー映画の話をごくたまに話すような先輩でした。特別親しくもなく「あ、趣味の合う人なんだな」程度の先輩です。
「なんで僕に?!つか急すぎ!!」と驚き、嬉しい気持ちになりました。

同時に「自分のアイデアを誰でもいいから見てもらいたい」という気持ちに心底共感しました。先輩と僕は特別親しいわけでもなかったので、先輩からすると本当にただの気まぐれだったのだと思います。その後すぐ、先輩は退職され、当然音信不通になりました。

それから、ふとした時に「自分で作るなら」と考え始めました。学生の頃すごく心を揺さぶられたゲームのことを思い出したりしました。サウンドノベル『街』です。感動した記憶がありながら、実際のゲームのストーリーはほとんど忘れていたので、Wikiを見ました。

キャッチコピーが『戻りたい過去はありますか?』だと知って、なぜかすごく感動しました。正直、若干泣きました。完全に疲れていました。

『街』は後悔をしないように攻略していく物語だったのかも、と思い始めました。

「街をもう一回やりてぇな」と思いつつ、「先輩がUnityなら僕はサウンドノベルを作ろう」と考えたのが最初でした。仕事がうまくいかなくても、ゲーム作ってる自分はおしゃれだと思えるような気がしたからです。

それから1年間、ずっとフリーゲームを作っています。

そして現在

そして最近の僕は、なんと2作目が出せました。

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【残業深夜】というフリーホラーノベルゲームです。
ある男が残業中に怪異にあいまくってしまう話です。
選択肢で分岐しますが、ほとんどの選択肢で酷い目に遭います。

申刻のリリースから約一年が経とうとしています。
それまで仕事と生活だけだった僕は、ゲーム制作を通してジェットコースターのように忙しく楽しく、スリルと感動ある日々を送ることができました。
ずっと忘れていましたが、まるで学生の時みたいだなと思います。

以上が、初めてのフリーゲームを自作して考えたことでした。
平凡すぎる内容でしたが、書いている僕自身はいろいろな思いが蘇り、謎の感動に包まれています。なんなんだ俺は。

そして良い節目なので、自分用のまとめを作ろうとおもってこのブログを書き始めました。今後も雑記などに使えるといいなと思います。

最後になりましたが、ティラノビルダーを提供してくださったノベルゲームコレクション様には本当に感謝しています。このツールがなかったら、プログラムがかけない僕がゲームを作れたはずはありません。
今後ともお世話になります。

ノベルゲームコレクション:https://novelgame.jp/
開発ツールティラノビルダー:https://b.tyrano.jp/

残業深夜:https://novelgame.jp/games/show/5435
申刻:https://novelgame.jp/games/show/3948

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