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よるべ×シイナナ 劇塾同期対談!後編

旗揚げ公演『深呼吸』を2週間後に控えたよるべ。
主宰・田宮ヨシノリと、伊丹想流劇塾4期生の同期でありウイングカップ(2020年度)にて優秀賞を受賞されたシイナナのお二人で、Zoomによる対談を行いました。
後編ではウイングカップ参加のきっかけと、劇塾を経た現在の活動について話していただきました。

※劇塾=伊丹想流劇塾を指します。
※Zoom収録は、2022年11月23日(水)ウイングカップ前夜祭終了後に実施しました。

前編は下記ページからお読みいただけます。

聞き手・編集:吉岡ちひろ(劇団なかゆび) 


旗揚げ公演

—シイナナさんは2020年度のウイングカップに参加されていますが、なぜ旗揚げ公演の場にウイングカップを選ばれたんですか?

藤田サティ(以下、藤田):旗揚げ前のプレ公演を2020年3月にやってから、コロナでほぼ1年間何もできていなかったんです。結成直後みんな結構燃えていたのかな、賞レースに出てみようみたいな話が先だっけ?

湊伊寿実(以下、湊):2020年7月に予定していた旗揚げ公演がコロナで流れて、結果的にウイングカップが旗揚げになったんです。ちなみに、ウイングカップに出ることになったのは藤田が熱望したからですね(笑)

藤田:そうやった!自分は忘れていたけど、そうらしいです(笑)たぶん賞レースに出たかったんだと思います。それで調べて見つけて、若手のための賞レースがいいんじゃないかって私がプッシュしたんだな。

田宮ヨシノリ(以下、田宮):旗揚げ公演の作品、僕が劇塾で知っていたサティさんらしい作品ではなかったような感じがして。あれはいつから書かれていたんですか?

藤田:劇塾の卒塾公演の作品と並行で書いていた気がします。

田宮:劇塾の間、僕とサティさんの作風ってなんか似ているなって思っていたんですよ。書いていることや書き方が似ているなと。そう思って旗揚げ作品を観に行ったら、何か違った気がしたんです。

藤田:そうなんや、自分ではあんまり自覚ないけど、劇塾の時は少し背伸びをしていたのかもしれないですね。何か個性を見つけたいということもあって、普段は書かなさそうなことを書いてみようと色々試していたから。加えて本公演の方は元となる原案がありましたし、あとはやっぱり長編作品だからじゃないかな。

田宮:それも聞きたかったんです。劇塾ではずっと短編を書いていたので、長編を書くということの違いみたいな。

藤田:「長編は短編の集まりだから、短編が書けるようになったら長編が書ける」と劇塾で教わってはいたものの…

田宮:そう簡単にはいかないですよって感じですか?

藤田:難しかったです。旗揚げ公演の『シカクの森で、二人は』は、90分くらいあったかな。初めて書いた長編作品で、プロットも何もわからず、最初から最後まで一気に書きました。今思えば、構成とか何も考えてなかったかもしれない。

田宮:この前は30分の作品を書かれていましたが、それとはまた違う感じですか?

藤田:違いましたね。前作で30分の作品を書いた時は、少なからず知識を仕入れていたので、一応最初に構成を組み立てて。でも最初の作品は、ただ思いのままに書いていた感じです。

田宮:あとは湊さんの演出で作品が完成していたというのもあるかもしれないですね。

湊:そうですね。私『シカクの森で、二人は』を読んだ時に、サティらしいなぁという印象があったんですよ。だからさっきサティの作品と違う印象を持ったと聞いた時に、それは私の演出で変わったのかなと(笑)

田宮:幾つかのシーンが演出によって構成されていたのがかなり印象的でしたね。

湊:でも今思うと、もっと練ることができただろうなとか、作品の良さを生かすための他の演出があっただろうな。次に上演する時は、全く違う形にすると思います。

藤田:今は色んな意味で書けない作品なんだろうなぁ。

湊:私もサティも、原案の吉田亮人さんへのリスペクトと愛があって、それはある種変えてはいけないんじゃないかみたいに縛っていた部分はあったかな。

「ふたりごと」という場

田宮:「ふたりごと」では、ゲスト作家だけでなく演出家の方も呼ばれていますが、それはなぜですか?例えば脚本を全て自分で書いて演出を他の人に任せる、または逆のパターンだと脚本は別の方で演出は自分で担当するといった例の方が多いように思ったんですが。

藤田:まずは物理的に負荷を減算させる目的はありますね。5作品やるとしたらそれぞれ8回から10回くらい稽古をコンスタントに回したくて。短編とはいえ稽古数がかなり多くなるんですよね。5作品の演出を湊が全部一人でやるとすると、たぶん仕事を辞めないといけないくらいハードだと思うんです。だから、他の演出家さんのお力をお借りして…という。

あとは単純に他の演出家さんがどのように演出されるのかに興味があるからですね。私の作品を湊が演出したらこうなるし、違う方が演出をするとこうなるんだというのが色々分かって面白いです。

湊:元々私は、絶対に自分が演出をしたいと思っている訳ではないんですよね。もちろん演出も好きなんですが、今劇団の中で他に演出をやりたいと言う人が出てきたら、その方の色も見てみたいタイプで。自分の本を違う人が演出しているのを見てみたいし、演出家さんって絶対自分にないものを持ってらっしゃる方ばかりなので。色んな創り手が参加できる、開かれた場になってほしいなと。

田宮:作品を上演するプラットフォームを作っているような。

湊:そうですね。もちろん5本上演した中でゲスト脚本・演出の作品が一番良かったって言われた時は悲しくなるけど(笑)それすらもう面白いなって思ってます。アンケートを取らせてもらっている感じですね。こういうタイプやマーケットには私の作品がウケるのか、とか、コアな演劇を観る方はこういう演出がいいって仰るんだな、とか。公演ごとに分かることが情報として増えていくのが面白い。勉強させてもらってます。

藤田:しかもお互いの稽古場も見学できるから。稽古場に演出家が3人いて、それぞれ「なるほど!」とか言いながら進めているのがめっちゃ面白い。刺激的ですね。でも上演としてパッケージ化されると、別にバラバラにならずに「ふたりごと」としてまとまるのが不思議な感じです。

―「ふたりごと」で上演される短編作品の中で共通テーマや関連性などはありますか?

藤田:基本的にはテーマは設けずに各々が持ち寄って上演するので、意識的に設けた関連性は今のところないです。第2回の時は少しパッケージっぽく冠を付けようと思って、真夜中のお話っていう縛りをつけてみたことはありますね。

湊:それはそれで良かった。面白かったね。ちなみに田宮くんのカレーライスの作品、何回も呼ばれそうになってますよね。

田宮:『カレーライス』懐かしい!劇塾で一番最初に書いた作品ですね。

湊:めっちゃ覚えてる。

田宮:そうなんですね!

湊:もし機会があればぜひ。

藤田:田宮くんは、劇塾で書いた作品の名前をユニット名(よるべ)につけているじゃないですか。あの作品は、やっぱりすごく大事なものなんですか?

湊:私もそれ聞きたかった!

田宮:自分で割とうまく書けた気がして。『よるべ』は卒塾公演の作品につけたタイトルで、でも他にいいユニット名が全然思い浮かばなくて。元々ユニット名はいらないかなと思っていたんですけど、やっぱりないと不便だし。あの作品は自分の言いたいことが言えた感じがしたので、そこからもらっておこうという。ひらがな三文字なのもほわっとしてていいかなって。

藤田:卒塾公演の田宮くんの『よるべ』、良かったって話を色々聞くよ。

田宮:お二人の卒塾公演の作品もめっちゃ面白かったです。特に湊さんの作品はマジで少し腹が立つくらい良かったですね。

湊:嬉しい!ありがとうございます。

田宮:山本(正典)さんの演出もめちゃくちゃハマってましたね。サティさんの作品はチームが別で前から見えなかったのですが、湊さんの作品は前から観られたので、僕の後にこんなに面白い作品をやるんだと思ってました(笑)

湊:今は山本さんの演出とはまた違うものを!というのがモチベーションになっていますね。

田宮:あとは稽古場で演出を間近で見させてもらった経験は今でも生きていますね。自分の台詞をこういうふうに扱うんだ、というのを先輩演出家の方に教えてもらっていた感じがします。自分の時はごまのはえさんでした。

湊:田宮くんの演出、ますます楽しみですね。

ウイングカップに参加する理由

藤田:田宮くんは元々演出はするんでしたっけ?

田宮:学生劇団の頃は演出をやることもありました。元々は映画が作りたかったんですけど、僕が通っていた大学のキャンパスには映画サークルがなかったんです。劇団ならあったので、同じようなものかなと思って入っちゃったんです。だから演劇は全然知りませんでした。でも入ったら俳優ばかりやらされて、あとはありがたいことにずっと小劇場に出演させていただいていたので、自分で書ける機会も時間もほとんどなかったです。その後偶然コロナ禍に入ったので「今だ!」と思いました。もしコロナがなかったら、普通に俳優で忙しくて書く時間がないままだったかもしれません。

あとは自分でユニットを立ち上げたら、もし関西から離れてどこに行っても演劇ができると思ったので、元気があるうちに作っておきたいなと。また腰を上げるのって大変だなと。今は割と忙しいけど、ウイングカップがあるならやってやろう!みたいな感じです。

藤田:ウイングカップに出るのって、何か花火を打ち上げてやろう!みたいな理由なんですか?

田宮:そうですね。今年でウイングフィールドが30周年というのもあって、ウイングカップにはいつか出たいと思っていたんです。この機会を逃したら今後出られるかどうか分からないし、ちょうど12月だけ自分のスケジュールが空いていたので、これはもう何かの偶然だと思ってすぐに申し込みました。

藤田:タイミングはありますよね。今回の公演には出演するんですか?

田宮:出演はしないです。俳優をやる時のキャパって割と自分の生活にも占めてくるので、しかも初めて出演して失敗したら全然笑えないなと。

藤田:湊ちゃんと同じタイプや。演出をやる時は、俳優をしない。

湊:いやいや、私田宮くんより全然不器用なんで(笑) 絶対出ながら演出とかできないなぁ。下野(佑樹)くんとかすごいよなぁと思います。

田宮:脚本と演出の経験をどちらも積んで、もしできるようになったらでいいかなって。別に出たいとは今は思っていないです。

藤田:出演は別の機会で、自分の団体では自分で作るということ?

田宮:そうですね。今の稽古場でも、あまり台詞を自分で読まないようにしているんですよ。台詞を書いている人が読んでしまうと、それが正解になってしまうかもしれないじゃないですか。もちろんそんなことはないんですけど。

藤田:でも、俳優メインでずっとやってきたわけやから、俳優田宮は出てこないの?「僕ならこう読む!」みたいな。

田宮:めっちゃ出てきますよ。それが演出家の僕なのか、普通に俳優としてこの喋り方をしたら面白いやんっていう僕なのかが分からなくて。自分が俳優をやっていたからこそ、出演していただく俳優さんがちゃんと作ってくれるというのを信じて、その辺りは丸投げするように頑張っていますね。

湊:めっちゃ良いな。

田宮:やっぱり俳優と演出が分かれているのが今は良いのかもしれない。

湊:私もそう思う!今年のウイング、めっちゃ面白そうですね。見応えのある団体が集まっていて。

藤田:前夜祭では何をされたんですか?

田宮:劇塾と同じく5分の短編作品を書き下ろして、『深呼吸』に出演していただく荷車(ケンシロウ)さんと一緒にやりました。

藤田:それが今日やったんやね!

田宮:アーカイブが残っているのでぜひ。前夜祭は日程が直前まで分からなくて、他の俳優のスケジュールを抑えるのも難しかったので、こうなったら一人でやるしかないかと。ほとんど一人で台詞を話すだけなので。

湊:前夜祭ってバチバチしますよね。

田宮:やっぱりみんな心の奥底では…みたいになっていました。

藤田:なっていましたね。よその団体さん、なんかすごい、みたいな。

田宮:今回はちゃんと作品をやったけど、なんか浮いているな?と思ったり。シイナナさんはどんな作品をされたんですか?

藤田:シイナナは作品の予告動画に近いものをやりました。全団体映像でのパフォーマンスだったので、劇団の色がめっちゃ出るんですよね。だから笑いを押す団体もあれば、キュートな団体もあって、確かに前夜祭が一番バチバチしたんじゃないかな。

湊:今年のウイングカップも楽しみです。

対談を終えて

田宮:色々溜まっていた聞きたいことが聞けてすっきりしました。楽しかった。東京公演、頑張ってください!

湊・藤田:ありがとうございます!頑張ります。よるべも楽しみにしています!

田宮:ありがとうございます。お待ちしております!


藤田さん・湊さん、ありがとうございました!

公演情報

WINGCUP参加公演
よるべ『深呼吸』

2022年12月23日(金)~24日(土)
ウイングフィールド

シイナナさんのnoteにも今回の対談を取り上げていただきました!

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