【エッセイ】なりたいがたくさん

小中高生のころ、洋服にまったく興味がなかった。というより自分に似合うような洋服はないと思っていた。
不細工だし太ってるし(後から調べたら身長に対して平均体重だった)、可愛い洋服とかぜったいに着たくなかった。
身なりに気を使うでもなかったので、そんなのまず髪をきれいにするところとかから始めるべきだったと気づいたのは最近になってからだ。

そんなアタイも大学生になってゆっくりメイクを覚えた。
その後うつ病になったことがきっかけで一か月で10キロ痩せた。5キロ戻ったけど……。
だからつまり、顔面はある程度メイクでどうにかできたし痩せたことで着れる洋服が増えたのだ。

それからいろんな洋服に手を出した。躁状態で散財しまくって、そのときなにに金を使っていたかってほとんど洋服だった。
ええとだから、どういう着こなしをすればいいとかの知識がだんだんとついてきていた。

ところで、アタイにはなりたいアタイがたくさんある。
可愛くなりたいし、ゆるくなりたいし、カッコよくなりたい。
だからメイクもファッションも、前よりはよくなったアタイは毎日その日なりたいアタイに合わせて洋服を選ぶ。

可愛いアタイになりたい日は、たとえば清楚な白ブラウスを着て、裾に華奢なフリルが付いたギャザーのひざ下スカートのなかにフリル付きパニエを履いて、控えめフリルの白い靴下に黒のストラップシューズでスキップする。髪は低めのお団子にして赤いリボンで飾る。

ゆるいアタイになりたい日は、たとえばオフホワイトのだぼっとしたトレーナーを着て、ひらひらした長いスカートを履いて、適当な靴下にスニーカーで鼻歌といっしょに歩く。髪はゆるく結ってシュシュでまとめる。

カッコいいアタイになりたい日は、たとえばペイズリー柄のシャツを着て、黒のワイドパンツなんか履いて、裸足に同じく黒のスポーツサンダルでスタスタ。髪は風に靡かせとく。

そんな感じでアタイはなりたいアタイになる。欲張りだからなりたいアタイがたくさんあって、だったらぜんぶなろうってことで。
でも綺麗系だけは手が出せずにいる。
なんでかって、身長が足りないから!低めなんだ……かなしい。
スラっとした美人なお姉さんが着ているような洋服だけは無理なんだ……かなしい。

アタイはおしとやかなお嬢様になる日もあれば、現役大学生になる日もあるし、和洋折衷コーデの日もある。短パンと柄シャツで攻める日もね。

いろんな洋服でいろんなアタイになれる。たのしいねぇ。

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