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⑤前編「多様な働き方」の導入プロセス

おはようございます。社会保険労務士、中小企業診断士の萬屋です。今週のトピック最後は「多様な働き方」の導入プロセス、です。

今日がこのトピックの最終日の予定でしたが、書きたい内容が増えたので、急遽2日間に分割させていただくことにしました。前半の今日は、代表的な失敗事例と留意点を押さえます。後半の明日は、失敗事例のようにならないどのように進めるべきかを纏めることとしました。
それではよくある失敗事例から見ていきます。


1.失敗事例

多様な働き方を導入したものの、期待した効果が得られなかったり、新たな問題が発生したりするケースも残念ながら存在します。冒頭では、代表的な失敗事例をいくつかご紹介します。

1.1. 制度導入が目的化し、従業員のニーズと乖離

  • 形だけの制度導入: テレワーク制度を導入したものの、利用条件が厳しかったり、申請手続きが煩雑だったりして、実際に利用する従業員が少ないケース。

  • ニーズの把握不足: 従業員のニーズを十分に把握せずに制度設計を行い、利用率が低迷したり、従業員の不満が高まったりするケース。

1.2. 運用上の問題

  • コミュニケーション不足: テレワーク導入により、コミュニケーション不足が生じ、チームワークの低下や業務効率の悪化を招くケース。

  • 労働時間管理の不徹底: 適切な労働時間管理体制が構築されず、長時間労働やサービス残業が発生するケース。

  • 評価制度の不備: 成果に基づいた評価制度が整備されず、不公平感が生じたり、モチベーションが低下したりするケース。

1.3. 企業文化や意識との不適合

  • 旧態依然とした企業文化: 従来の働き方を重視する企業文化が根強く、新しい働き方が浸透しないケース。

  • 管理職の意識改革不足: 管理職が新しい働き方を理解せず、従来のマネジメント手法を続け、従業員の不満を高めるケース。

1.4. (参考)内閣官房のリサーチ結果から見るテレワークの労働生産性

少し前のものですが、内閣官房から興味深いデータが公表されていたのでポイントを抜粋でご紹介します。

・在宅勤務のほうが労働生産性が低いと回答した労働者の割合が82.0%
・在宅勤務のほうが労働生産性が低いと回答した企業の割合が92.3%
・労働生産性低下の理由は以下の通り。
  1. 対面での素早い情報交換ができない(38.5%)
  2. パソコン、通信回線などの設備が劣る(34.9%)
  3. 法令・社内ルールで自宅からはできない仕事がある(33.1%)
  4. 法令・社内ルール以外で自宅からはできない仕事がある(32.5%)
  5. 家族がいるので仕事に専念できない(19.9%)
  6. 上司がいないので緊張感がなくなる(19.3%)
  7. 仕事ができる専用の部屋がない(15.1%)

出展:内閣官房 成長戦略会議事務局「コロナ禍の経済への影響に関する基礎データ(令和3年2月)」

2.失敗事例からわかる留意点

失敗事例、あるあるですね。昨今のオフィス回帰の流れも理解できたような気がします。
それでは、失敗事例を防ぐための留意点をあげてみます。

  • 従業員の声を重視: 制度設計や運用において、従業員のニーズや意見を積極的に取り入れることが重要です。

  • 適切な環境整備: ITツールやコミュニケーションツールの導入、セキュリティ対策など、新しい働き方を支える環境を整備することが必要です。

  • コミュニケーションの活性化: 定期的な面談やオンラインでのコミュニケーション機会を増やすなど、コミュニケーション不足を解消するための工夫が必要です。

  • 人事評価制度の見直し: 成果に基づいた評価制度を導入し、公平性を確保することが重要です。

  • 企業文化・意識改革: 経営層から管理職、一般社員まで、新しい働き方に対する理解を深め、意識改革を促す必要があります。

  • 段階的な導入と継続的な改善: 一度にすべての制度を導入するのではなく、段階的に導入し、試行錯誤しながら改善していくことが大切です。

今日はここまでにして、明日はいよいよ本題の「多様な働き方」導入のプロセスを見ていきたいと思います。
それでは失礼します。

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