見出し画像

入院延長でラッキー(15人目のAさん)

退院支援をしていると、なぜか多いと感じることがあります。
それは退院直前のケガや病気。
別に統計をとれば決して多いわけではありません。
でも多いと感じてしまうのは、それまでの苦労がまた振り出しに戻ってしまうから。
病棟にしてみるとベッド調整の段取りが変わってしまうからとも。

明日退院ですね、というと転倒して骨折。
いよいよ入所となると急に熱が出る。
転院前に調べたらMRSA(抗生物質が効きにくい耐性菌)がでた。
別にこれはわざとではないのです。
誰が悪いのでもありません。
転倒はがんばろうという気持ちから、熱が出るのは仕方がない、MRSAなんていつの間に・・・。
笑ってあきらめるしか仕方がりません。
退院延期。
予定していた病院、施設、ケアマネ等に連絡を入れ、よくなったら連絡しますと伝えることになります。
でも例外的に、退院前日の転倒でホッとした人がいました。

Aさんは72歳。一人暮らし。マヒがあり身体障害者手帳2級。
そのため医療費助成があり自己負担がいりませんでした。
脱水で入院したのですが、1週間で改善したので退院の準備をしていました。
しかし家庭の事情が分かってしまいました。
Aさんは一人暮らしなのですが近くに長男が住んでいます。
その長男、いつもお金がなくなると無心にくるというのです。
今回の入院前、年金支給日に長男がきてお金を持って行ってしまい、食べるものに困っていたということでした。
だからこのまま家に帰ってもお金がないので生活できない。
もっと長く入院させてほしいと本人から訴えがありました。
でも次の年金支給日までまだ1ヶ月半くらいあります。とてもそんなに入院はできません。
この状態で他病院に転院紹介なんてできません。

長男、長女と面談し一緒にどうするか考えました。
結果、退院後は長男のアパートで生活する、今後お金の管理は近くに住む長女が行うということで、一応は落ち着きました。
あやしいものですが長男もそうすると言い、Aさんもそうしたいということになり翌日退院することに決まりました。

ところがその夜、Aさんが転倒。
トイレに行こうと思い、ふらついてしまったようです。
大腿骨頸部骨折。整形外科のある病院への転院。
翌日そのことを聞き、本人には申し訳ないですが思わず“やった”と心の中で叫びました。
転院すればしばらく入院。
食事に困ることがありません。
おまけにAさんの場合、医療費はかかりません。
骨折なら後は当院の回復期リハビリ病棟の対象になります。
おかしな話ですが入院することで生活が安定するAさん。
説明すると主治医も病棟のスタッフもみんなホッと一安心。

整形外科に転院して手術→当院回復期リハ病棟でリハビリとなり、次の年金支給日までしっかり入院できました。
医療費は助成があるので負担はなく、当自治体では食事代も申請により還付されます。
年金振込を確認し退院。
その後は約束通り長女が年金管理をするようになり、なんとか落ち着いたということです。

何が幸いするかわかりません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?