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傷病手当金と障害年金(24人目のAさん)

Aさんの奥様から電話がありました。
入院中は私が担当していましたが、退院後は病院併設の居宅介護支援事業所のケアマネが担当していました。
私でいいの?と確認して受話器を取りました。

Aさんは当時57歳。
脳出血で救急病院搬送され、リハビリ目的で当院に転院。
当時のADLは全介助でした。
脳出血と高次脳機能障害があったので最長180日の入院が可能です。
定年前の発症というのはいろんな意味で大変です。
奥様と二人暮らしで、奥様は健康保険の扶養の範囲でパートで働いていました。
奥様からは入院当初、これからどうしたらいいのかと相談を受けました。
入院したばかりで退院時の状態が予想できないままに、利用できるであろう社会資源について説明しました。
介護保険、傷病手当金、障害年金、身体障害者手帳、特別障害者手当等々。
奥様は話し好きで、病棟を歩いているとよく呼び止められました。
Aさんのことは心配、でも自分のことも心配。
特に今後の生活費のことなどが気になっていました。
入院して仕事を休んでいるのでまずは傷病手当金を請求しますが、病気で休む場合の会社の対応についてまず聞いてもらいました。
会社によっては病気で休んでも一定期間給料が出る場合があります。
当然その間は傷病手当金を請求しても支給されません。
会社に確認し2ヶ月間は給料が出ることがわかったので、傷病手当金はそれ以降に請求することになりました。
傷病手当金は1年6カ月受給が可能。
もしその間に退職しても1年以上の被保険者期間があるので、Aさんは退職後も継続して受給できます。
それから障害年金。
通常障害年金は初診から1年6月後の障害認定日の状態で請求しますが、Aさんの場合は初診から6月後で医師が判断すれば、その時点で請求できます。

最初の入院から6月経過頃に、医師と相談し身体障害者手帳の手続きをしました。
結果は1級。これで医療費の助成が受けられ自己負担は不要になります。

その頃に奥様も職場復帰が難しいのにいつまでも籍を置いてもらうのは申し訳ないと会社に相談に行ったようで、退職となっていました。
傷病手当金と奥様のパート収入で生活していましたが、障害年金も請求できるので手続きすることにしました。
同一原因で、傷病手当金と障害厚生年金が受給できる場合、傷病手当金は支給停止になります。
但し傷病手当金の方が多ければ、その差額が傷病手当金として支給されます。

奥様と一緒に年金事務所に手続きに行きました。
ベッド上生活でトイレも移動も介助。
明らかに1級相当。
障害基礎年金+障害厚生年金+妻の加算。
障害年金の方が傷病手当金より多いことが分かりました。

しかしこういうケースでいつも何とかならないかと思うことがあります。
障害厚生年金は請求後最初に振り込まれるまで約4,5か月かかります。
その間の生活はというとどうしても傷病手当金を請求することになるのです。
しかし結果的に年金はさかのぼって支給されるため、傷病手当金とだぶってしまいます。
だぶった傷病手当金は最初に受給する年金から相殺してくれるといいのですが、そうはなっていません。
必ずあとから請求がきます。

年金事務所で奥様に必ずあとから請求くるから忘れないで下さいね、と伝えておいたのです。
その請求が先日届いたというのが今回の用件でした。
障害年金の決定は先にケアマネから報告を受けていました。
やっぱり1級。
その時もケアマネを通じて後日傷病手当金の返金の請求が届くことを伝えておきました。

電話にでると、「あれ届いたよ。返さないといけないのよね」と残念そうな声。
ちなみにいくら返すことになりましたかと聞くと、約70万円。
先日振り込まれた年金ありますよね、と確認すると
「ちゃんとおいてるよ。でもやっぱり返さないといけないのかなあ、返さないとどうなるのかなあ」
気持ちはよく分かります。
返さないとどうなるのか、私も是非知りたいですが、やってみましょうとは言えません。
ちゃんと返してくださいね、と電話を切りました。

このような場合、最初から調整して振り込まれれば文句の一言ですむのですが、一度振り込まれてしまうと手放したくないのはみな同じ。
お金が「ここにいたい」という声も自分にだけ聞こえてくる気がするのです。
しかし最初に返さないといけないと説明しておいたので、一応納得済みです。

その後ケアマネから報告がありました。
今度は奥さん、Aさんが死んだら年金どうなるのかなあ、って心配していたよ。
・・・たくましい。

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