人に合う環境はそれぞれ(4人目のAさん)
どこの病院にもいると思います。
認知症などで大声を出す入院患者さん。
1日中なにかつぶやいている入院患者さん。
介護度の重い療養型に限らず、一般病院でも珍しくありません。
同室の患者さんや家族からクレームや部屋を替えて欲しいと言われることも少なくありません。
Aさんは80歳の男性。
ADLはほぼ全介助、寝たきりの患者さんです。
特定疾患の難病があり、定期的に大きい病院で入院を繰り返していました。
認知症があり大部屋では対応できずずっと個室。
介護の奥さんも入院中は泊まり込み、精神的にも疲れていたようです。
今までは・・・。
今回、当院へは救急病院からの紹介で転院となりました。
奥さんは今までのことがあるので、最初は個室で、と希望されたのですが、病棟では病状的に別に個室に入る必要もないと判断したようです。
4人部屋に入院となりました。
環境が変わり、やっぱり大声。
奥さんは他の患者さんに申し訳なく、部屋を替えてくださいと看護師に相談しました。
看護師からは、他の患者さんも大声出すことあるので、気にしなくてもいいですよ、と言われたそうです。
その部屋でしばらく過ごすうちに奥さんは気付きました。
Aさんの表情が今までと違って穏やかなのです。
考えると、今まで入院といえば個室で、何かある時しか看護師はきてくれず、ずっと一人ぼっちでした。
ところがこの部屋はあちこちで誰かが叫んでいるので、もしかしたらすごく安心感があるんじゃないかと。
同室者の患者さんが大声を出すと、Aさんも「おー」と応えます。
奥さんもこの環境はすごくいい、と普通ならうるさくて部屋を替えてくれ、と言われるその部屋を大いに気に入ってしまいました。
しばらくして今後の話を奥さんとしました。
この病棟も平均在院日数18日の病棟、長期に入院はできず、病状が一定落ち着けば次を考えざるをえません。
奥さんはあらかじめ知り合いの医師とも相談し、転院先の病院は決めていたようです。
その時にこの病院にきて良かったこと、看護師さんの対応が今までの病院と違ってすごく温かかったこと、最初は大部屋で心配したけどこんなに穏やかに過ごせるなんて思ってもいなかったこと、話してくれました。
私も聞いていて本当にうれしかったです。
普通は同室に大声を出す患者さんがいると、部屋を替えて欲しいって言われること多いんですよ、と言うとその奥さん、こんなにぎやかないい部屋ありませんでしたよ、と言ってくれました。
同室に大声を出す人がいて、喜んでくれる人なんてまずいません。
人に合う環境ってそれぞれですね。
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