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夜は、星の海

 こちらをご覧のみなさんは与論の海の美しさについて既にご承知のことと思います。隆起珊瑚礁のリーフに囲まれた浅い内海があること、小さく平坦な地形で川がないことなどの条件が重なり、あのえも言われぬヨロンブルーの海を作り出しています。自分もはじめて島を訪れた時から、与論の海のとりこになりました。
 しかしご存知でしょうか。この島には青く輝く海のほかにもうひとつ、美しさを極めた海があることを。

 与論で中心部の茶花周辺以外に宿泊すると、夜の暗さに驚く方も多いかもしれません。ほとんどがサトウキビなどの農地や原野で占められて街灯も少なく、都会のように過剰な照明がないためです。

 与論を訪れた最初の夜のこと。宿から外に出てみると、建物から漏れるわずかな明かりの周囲には暗がりが壁のように立ちふさがり、人の侵入を拒絶しているかのようにも感じられました。直面したことのない状況に、背筋が少し寒くなったものです。
 一歩足を踏み出すとそこは漆黒の闇。鼻をつままれても分からないとはこのこと。地面が見えないので、自分がちゃんと立てているのかと不安を覚えたり。やがて目が馴れると、空がほんのり明るいのに気づきました。

 見上げるとそこには星、星、星。まさに星の海。

 明るい星はぎらぎらと音が聞こえそうなほど輝き、背景に満ちる一見漆黒の空間にも、目を凝らすとぎっしり星々が埋め込まれているのがわかります。
 天の川もまるで星が流れているかのよう。なるほどこれは川。
 ずっと真上を見上げていたら首が痛くなり、ついには道路に寝転がっていつまでも満点の星を眺めていました(危ないですから真似しないでくださいね)。

 昼間の海を目当てに訪れて、夜の海に圧倒された思い出です。


星の海をカレンダーにしました


 そんなふうに驚かされた与論の星空。毎年作っているカレンダーでぜひとも紹介したいと、与論在住の原田さんに相談しました。原田さんは以前から星空に与論の風景を取り入れた写真作品を数多く発表されていて、この島の星空を紹介するのには、うってつけです。
 ありがたいことに快く写真の使用許可をいただいて、ここに2021年の yoron blue. カレンダーが完成しました。名付けて「よろんほしめぐり」!
 以下、各月の写真について紹介していきます。

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1月
星空といいつついきなり日の出ですが、太陽も星ということでご勘弁(星空とは……)。これは大金久海岸の南、トゥーシの浜にある岩穴。近年はタイムトンネルという呼び名でも知られています。

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2月
撮影者・原田さんご自宅の庭から。オリオン座を背に咲き誇るのは、本土より一足早く春を告げる寒緋桜。南西諸島では桜といえばこの花を指します。

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3月
クルパナ(黒花海岸)で、北の空を巡る星々の軌跡をとらえました。岩が緑色に染まっているのはアオサ。海からの春の恵みです。

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4月
トゥイシから天の川を眺めます。岩に注連縄のようにかかるロープが何やらいわくありげですが、宗教的な意味合いなどはないそうです。

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5月
地主神社の大鳥居から立ち上がる天の川。かつて島内にあった拝所を合祀した神社で、国指定重要無形民俗文化財の十五夜踊りが奉納される場所でもあります。

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6月
ヨロンマラソン最大の難所としても知られる翔龍橋。走っている最中は足が重くなってしまう急坂も、こうして夜に眺めると星空まで駆け上れそう。

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7月
今年の夏、忽然と現れ話題となったネオワイズ彗星。最も地球に近づいた頃を狙って、シナパ(品覇海岸)より撮影されました。

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8月
島中央部の与論高校正門前から南東の空を仰ぎます。島に一つだけの高校で、ここを卒業すると多くの生徒は進学や就職で島を離れていきます。

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9月
島の南東端、赤崎灯台の足元からの眺め。島の反対側、西の端にはプリシアリゾートに隣接して兼母灯台が建っています。

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10月
琴平神社の背後に昇る大きなブルームーン。ひと月に2回の満月が巡ってくるとき、その満月をこう呼びます。

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11月
トゥーシの岩から水平線と夜空の眺め。昇っていくのはオリオン座。軌跡で見ても三つ星の並びがよくわかります。

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12月
島の西端、与論空港ほど近くにある愛の鐘から。鐘を浮かび上がらせているのは月の光。冬の大三角形がそれを見下ろしています。


ここからちょっと宣伝


 ご覧いただいた珠玉の作品群をまとめたカレンダー。日付部分には月齢を表示していて、新月と満月にあたる大潮の時期もわかるようにしました。そう、百合ヶ浜に出会えるチャンスです。
 さらに、様々な催しが行われる茶花海岸からの星空をシミュレーションした四季のミニ星座表と、暗闇で光る蓄光満月バッジもおまけでお付けしました。

商品はオンラインストアのほか、現地でも以下の各店舗でご購入いただけます。
・プリシアリゾート(立長358-1/☎︎ 0997-97-5060)
・MEEDAFU’S YUI(茶花270/☎︎ 0997-85-1711)
・オーシャンマーケット(茶花34-4/☎︎ 0997-97-4188)
・百合ヶ浜ビーチハウス(古里79-1/☎︎ 0997-85-1000)
・すみ火焼肉サム(茶花23-2/☎︎ 0997-97-4602)
・くじらカフェ&商店
 (休業中につきDMなどで要予約/ https://www.facebook.com/cafekujira
島へ行かれる方はぜひお手にとってご覧ください。


山の国に住みつつ与論島をテーマに活動中。なぜ? どうして? その顛末は note 本文にて公開中!