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バングラデシュではたらく、の少し前

2019年6月20日、木曜日。わたしは想像もしていなかった世界に降り立ってしまった。

バングラデッシュ・ダッカ市。東京23区の3分の2の面積に2000万人超の人口が犇めき合うこの土地に、わたしは仕事を求めてやってきた。

そこから遡ること5年前、2週間だけダッカにやってきたことがある。最初の職場であった政府系投資銀行を辞め、国際NGOに転職する直前の2週間、マイクロファイナンスというビジネスの先駆けとなったグラミン銀行のインターンに参加していたのだ。そのときは、

「もう二度とこんな場所には来たくない」

と思ったというのに。

いつか途上国支援のフロントラインである現場ではたらく、それは大学4年の頃には秘めた決意として心のうちにあった。でも、大学時代に途上国経験と呼べるような経験をすることなくサークルやらゼミやらに明け暮れていた私は、新卒でそんな世界に飛び込んで見る勇気もなければそもそも英語力なんてさらさら無く、これはなにか手に職をつけないと道が拓けないぞ、ということで、もっとも応用がききそうな金融を選んだのだった。

勤め始めて5年半、海外出張も経験させてもらい、煮ても焼いても逆立ちしても到達できそうに無い先輩や上司の姿を遠目に拝みながら、すっかり丸の内OLならぬ大手町OLになりかけていた矢先、東西線の最終電車でおじさんが広げた新聞に踊る『シリア空爆』の文字を目にした。新聞の国際面というものから遠くかけ離れた日常を刺激的に感じて過ごしていた日々から、とつぜん醒めたようだった。

「あれ...私ここでなにしてるんだっけ」

その後の謎に発揮された行動力について詳細は割愛するが、大企業ならではの5連休特別休暇をフル活用してアフリカ・ルワンダのスタディツアーに参加(学生用企画というところをなんとか頼み込み社会人参加)し、銀行を辞めて国際NGOへの転職を決め、その合間にバングラデシュにインターンにやってきたのが2014年。

そこから5年、なにかの縁に導かれてまたこの地を踏むことになった。今度はスモールベンチャーで、たった2ヶ月のインターン、の、はずだった。

(続)



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