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途上国ベンチャーで働いてみた:ピボット模索(通算290日目)

2020年4月の半ば、コロナ感染の拡大を恐れたバングラ政府は交通規制も伴う全面的都市封鎖(ロックダウン)に踏み切った。
バスが動かないとなっては職員をクリニック兼オフィスに来させる足もない。事態は健康診断の需要など起こるわけもない状況であり、事業そのものの危機でもあった。

社員全員を在宅勤務に切り替えると同時に、新しいサービスを2つ立ち上げることにした。
一つ目は遠隔問診事業。これまで単価の低い問診のみのサービス提供はクリニックでも遠隔でも行っていなかったが、以前から問診サービスのみを開放してマーケティングのフックにしたいと考えていたため、クリニックを閉鎖して医師を遠隔問診のみに投入できる環境になったのはむしろありがたかった。
FB広告で無料の遠隔問診を積極的にPRし、有償の訪問型臨床検査サービスへのアップセルや、専門医/病院への仲介を試みた。
社用携帯として有していたフィーチャーフォンとPCを各スタッフに配布し、コールセンターとFBメッセンジャー双方から入る予約受付の対応フロー、医師と顧客間のコミュニケーションフォローの体制、これまで紙でしか配布していなかった処方箋のオンライン化を一気に整備した。

二つ目は、企業向けの職場衛生コンサルタント事業。一時期はバングラ経済の要である縫製工場も閉鎖命令が出たものの、生活がかかっている労働者たちによるストライキが拡がり、運営再開はやむを得ない状況であった。そうした工場の現場において、いかに感染対策を行うべき考え環境を整備することは、経営者および総務担当者たちの喫緊の課題であった。医学的な視点で職場のレイアウトやルールづくりに関するアドバイスを行う他、従業員の日々の健康管理も請け負うことをPRした。

後者のサービスは、当初は現地企業を対象に検討していたものだったが、最初に反応してくれたのはロックダウン直前に慌てて本国へ脱出していた日系企業やJICA等援助機関の日本人マネジメント層だった。私が思っていた以上に、大使館はじめ日本人駐在コミュニティのなかで医療機関や検査機関の情報というものは蓄積されておらず、また現地保健省が発出するアナウンス内容のキャッチアップにも随分とタイムラグがあった。駐在企業や機関からの問い合わせが口コミ的に増えてきたことで、私たちは現地の医療機関からの情報を正しく吸い上げタイムリーに発信するという役割を担うようになっていった。

(続)


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