プラゴミで花束をつくる
プラゴミはゴミの中でダントツにかっこいい。
透明なたまごパックなんて、何となく未来的だし、
ポテチの袋の内側なんて、銀色に輝いている。
綺麗なプラゴミを見つけるたび、何か工作に使えるかも! と思い保管しておくが、
ワカメのごとく大量に増えるため、やむなくプラゴミ収集の日に出す、というのを繰り返している。
ゴミ袋に入れた瞬間、その輝きは消える。
この、THE・ゴミ感。
地球上にある全てのものは、どんなにきれいでも、ゴミ袋に入れた瞬間、それは「捨てるべきもの」になって、輝きを失うように思う。
この輝きを失わないまま、ゴミ収集に出す術はないだろうか。
……そうだ! 花束にしたらどうだろうか。
花をもらって嫌な気持ちになる人はいないはずだ。
ゴミ収集の人もゴミ袋でわたされるより、花束でわたされたほうが嬉しいんじゃないか!?
家の前にゴミを置くより、花束を置いた方が、街の美化につながるのではないか。
ゴミを花束にすることで何もかもがうまく転がる気がした。
よし、プラゴミで花束をつくろう!
決意すると、私はすぐさまゴミ箱に向かったのだった。
そう言って出来上がったのがこちら。
完全にウェディングブーケ!!!
まさかこれがゴミだとは思えない。
はたしてどのように作ったか、順を追って説明していきたいと思う。
1.先輩を家に呼ぶ
意気込んだはいいものの、果たしてゴミで花をつくることはできるのか。
ちょっと不安になったので、とりあえず昔花屋で働いていたというS先輩と、手先の器用なK先輩を家に呼んだ。
ふだんは顔出しOKの先輩なのだが、この企画をやる1時間前にドラッククイーンごっこで盛り上がり、とても派手なメイクを施しているため、顔出しNGとなってしまった。
現在我が家はお祭り風インテリアにしているため、めでたい感じの背景でお送りします。
2.花束をつくる
まずは使いたいプラゴミを選んでいく。
ぱっと見、写真だけだとゴミを片付けているように見えるかもしれないが、
むしろ袋から出している様子。
プラゴミのなかでも、よりいいプラゴミを見つけるべく、吟味していく先輩方。
K先輩「あ〜〜!! それ使おうとおもってたのに!!!かえして!!!」
S先輩「えぇ〜! わたしもこれ欲しいんだけど!!」
K先輩がキープしていたゴミを、知らず取ってしまったS先輩。
本来なら誰も見向きもしない捨てるだけのプラゴミだが、花束をつくるということにより、奪い合うほどの価値が生まれてしまった。
結局、プラゴミを取り返したK先輩。
明確な制作プランがあるようす。
そもそもプラゴミは色味が少ない。
大体が白か透明か銀だ。
色味があるお菓子の袋やペットボトルのラベルなどは人気アイテムのため、皆で取り合うこととなった。
あっという間にプラゴミがあふれる混沌ととした制作現場となった。
S先輩「まずは見せたいメインの花をつくって、その周りに飾りの花を添えていくかんじかな〜。」
さすが! S先輩は以前花屋で働いていたため、皆に花束づくりの心得を、レクチャーしてくれた。花屋経験がある人がいるのは心強い!!
よし、先輩のアドバイスをもとに、誰よりもいい花束をつくるぞ!!
3.花束をつくる
一度つくりはじめると、皆集中しはじめ無言になった。さっきまでドラッグクイーンごっこで遊んでいたのが嘘のように静まり返っている。
そして、思ってたより楽しい……!!
小学校低学年の頃の図工の感覚だ。
急激に童心に帰り、皆黙々とつくり続けた。
プラゴミがカサカサとこすれ合う音のみ、ささやかに鳴り続ける。
かにを食べている時より静かだ。
ちょっと隣をのぞいてみると、K先輩はうまい棒をたて方向に裂き、結んで花にする計画のようだ。なるほど……!
私はバラ系の花を作るべく、くるくると袋を丸めていく。
茎部分は少し固い素材で作らないと安定しないので、先輩方を押しのけて、必死に素材を確保した。
気がつくとつくり始めてから2時間ほど経過していた。
信じられないほどの集中力だ。
正直ずっとつくり続けられるかも……、と思ったが、だんだんプラゴミが枯渇してきたことと、先輩の終電などもあるので、そろそろ完成させることにした。
4.完成
出来上がったのがこちら。
すごい……!! きれい!! 輝いてる!!
ちなみにこれはK先輩の作品。素材を妥協することなく選び抜いた末、出来上がった作品だ。少し仏花感があるが、ちゃんと花束!
続いてわたしの作品。バラの花束をイメージしてつくった。
先輩たちを押し除けて色味のあるアイテムをたくさんゲットしたため、ボリューム感のある花束になった。
三ツ矢サイダーのラベルがちょっと気になるけど、遠目でみれば大体花束に見えるんじゃないか……?
続いてS先輩の作品。
……生花??
花束というか、生花感が強い。
先輩のこだわりで、箱の上にのせて完成となった。
これは、花なのか……!? 具体的にどの辺が花なのだろうか……??
数々の疑問が脳裏に浮かんだが、誇らしげなS先輩を前に何も言い出せなかった。
どうしよう……、正直ただのゴミにしかみえない。
いや、でもS先輩は元花屋! 私が知らないような珍しい花を熟知しているはずだ。おそらく何らかの特殊な花をモデルに作ったのだろう。
きっと床の間とかにかざれば、いい感じになるはず!!
みんなで記念撮影をしたら、ちょっと授賞式感がでた。
作った作品持って帰りますか? と一応聞いてみたが、皆花束を置いて帰っていった。
そして、夜になるとS先輩の生花と私のバラの花束は、なぜか崩壊してしまった。
プラゴミは割としっかりとした固い素材のため、かなりしっかり固定しないと元の形に戻ろうとする力が働くのだ。
そんな中、一向に壊れる気配のないK先輩の花束。
作ったときの輝きを全く失っていない!
ということで、この花束をもう少し研究してみることにした。
5.スーツで持ってみる
もしかして、もっとパリっとした服を着ても持ったら、より花束に見えるかもしれない。
押し入れを探し、リクルートスーツを引っ張り出してきた。
完全に花束だ!!
そして私は完全に花束贈呈のスタッフだ!
おめでとうございます。
リクルートスーツなんて、地味な青春の喪服と思っていたけど、
プラゴミを持つだけでちょっと華やかになったきがする。
そして、リクルートスーツの人が、まさかプラゴミを持っているはずがないという固定観念が功を奏し、完全に花束にになっていた。
着る服によって花束感が上がる!!
このこととに気付いた私は、他の服を探しに押し入れに向かった。
6.ウェディングドレスで持ってみる。
そういえば我が家には、ウェディングドレスがあった。
前にちょっとした出し物をしたときに、衣装として必要だったので、安いやつを楽天で買ったのだ。
1回しか着たことがないが、かなり場所を占領していて困っていた。
しかし、今再び着るときが来た!!
せっかくなので、ウェディングドレスでブーケっぽく持ってみよう!!
完全にブーケ!!!
プラゴミの銀色が白いドレスに合う!!
そして黄色い花(CCレモンのラベル)が差し色となり、いいアクセントになっている。
このままウエディングフォトにしてもおかしくない。
まさか花嫁がゴミを持っているわけがないという固定観念が功を奏し、完全にブーケだ。
もう私にはプラゴミには見えない。
完全に花束だ!!
7.ゴミに出す
ついにプラゴミの日が来た。
いつもは昼頃に起きているのだが、今日はこの花束をゴミ収集に出すべく早起きした。
いつもは寝ている時間なのでめちゃくちゃ眠い。
でもせっかく作った花束なので、手渡ししたい!
そう思い、眠い目をこすりながら、ゴミ収集の人が来るのを待つ。
そしてついにゴミ収集の車が曲がり角を曲がってくるのが見えた。
さっきまでひたすら眠かったのだが、急に緊張してきた。
私の住んでいるところは、プラゴミ用の指定の袋などはない。
しかし、いつも半透明の袋に入れてプラゴミを出してるし、このむきだしのプラゴミは回収してくれるのだろうか。だんだん不安になってきた。
そうこうしている間にゴミ収集車が家の前に来た。
お兄さん「おはようございます〜!」
ゴミ収集のお兄さんがさわやかに挨拶をしてくれた。
……よし、いくぞ!!
とりもち「おはようございます!あの〜、これ、プラゴミで花束をつくったんですけど、このままゴミに出せますか??」
お兄さん「花束? ちょっと見せてください〜。」
笑顔で近づいてくるお兄さんに、おそるおそる、花束見せる。
お兄さん「全部プラなんで、大丈夫ですよ!笑」
やった! このまま回収してもらえるっぽい!!
しかもお兄さんちょっと笑ってる!
よし、この流れでわたそう!
とりもち「じゃあ、お兄さんに花束贈呈してもいいでしょうか!!」
お兄さん「え!? 贈呈ですか??笑 ……じゃあ、僕で良ければ。」
そう言って、なんとわざわざ手袋を脱いでくれた。
めちゃくちゃノリのいいお兄さんだ!!
無事、花束贈呈。
本当にここに入れていいんですか?? と、再度確認してくるお兄さん。
お兄さんの中で、プラゴミから花束に変わった瞬間だったのかもしれない。
こうして、無事回収してもらえたのだった。
花束を車に投入したあと、お兄さんは再び手袋をはめた。
それじゃあ、失礼します!と言って、お兄さんはさわやかに去っていった。
仕事中なのに、終始笑顔でやさしく対応してくれたことに感動し、しばらく幸せな気持ちに浸った。
ゴミを出して感動することってあるんだな……。
たまには花束にして、ゴミを出すのもいいかもしれない。
皆さんも花束にしてゴミをだしてみたらいかがだろうか。
もしかしたら、想像以上にさわやかな朝をむかえられるかもしれない。
おわり。
〜おまけ〜
ウェディングドレスを着て、プラゴミを後ろに投げると、ぱっと見ブーケトスに見えるけど、本当はただのポイ捨て。
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