米だけでエビフライ弁当を作る
日本人と米のつきあいは長い。
日本人であるならばほとんどの人が主に米をたべて生きている。
私もほとんど毎日、朝はおにぎりを食べ、お昼はおべんとうの米を食べる。夜も米を食べることが多い。
「米が好き」
という一言では言いあらわせない思いがあるが、
まぁ一言でいうならば、米が好きということになるだろう。
家に米しかないということがよくあるのだが、そんなとき役に立つのがふりかけである。
ふりかけさえあれば、おかずはなにもいらない。
しかし、ふりかけごはんのみをたべているときに、どことなく罪悪感を感じることがある。
栄養不足なんじゃないだろうか……。
実際米しか食べていないので栄養不足なのは間違いない。
フライドポテトやポテトチップスなども食べるとすこし罪悪感がただよう食べものの一つであるが、じゃがいもなのでふりかけごはんよりは栄養がありそうだ。
なんならあずきバーのアイスの方が栄養があるかもしれない。
私はこの米だけをたべる行為の罪悪感をとりのぞく方法はないかと考えた。
米をなにか他の食材にみたてて、せめて視覚的に栄養をとっている気持ちにならないだろうか。
この罪悪感は気持ちの問題なのだから、気持ちの持ちようでどうにでもなるはずだ。
よし!米だけでいろいろな食材をつくってみよう!
色の濃いものには栄養があるときいたことがある。米をふりかけでカラフルにして視覚的栄養素を上げよう!
私は明日のおべんとうを米とふりかけだけで作ることに決めた。
たくさんふりかけを買ってきた。デコふりというやつは米にかなりカラフルな色をつけられるキャラ弁用のふりかけらしい。
ためしに緑をかけてみる。見たかんじお茶漬けのもとっぽい。
混ぜるとこのように米ぜんたいに色がつく。
ちょっと米を多くしてしまったので薄くなってしまったが、このふりかけはなかなか使えそうだ。
ちなみにデコふりは、青も赤も緑もすべてチャーハン風味である。不思議……。
とりあえずお米を炊く。
あまり深く考えず5合も炊いてしまった。
気合をいれて多めに炊いてしまったが、これで準備はととのった。
さっそく作っていこう。
① 白いご飯をつめる。
ちょっと米多いかな……?と思ったが、この後つめるのも全て米なので、多いも少ないもない。このままつめることにしよう。
② 梅干しをつくる。
おべんとう界のリーダー、梅干しをつくる。
おべんとうといえば、やっぱり日の丸べんとうだ。
「チャーハン風味のうめおにぎり」というふしぎな食べ物をつくっているところ。
米を少なくしたら衝撃の発色のよさ!デコふり、おそるべし。
余ったのはミニトマトにするというファインプレーにより、おべんとう感がじわじわでてきた。
③ たまごやきをつくる。
デコふりにきいろがあったので、たまごやきをつくってみよう。
デコふりだけで信じられないほどきいろになる。
おいしそうにできた。ふわふわたまご感がよくでている。
④ エビフライをつくる
こどもに大人気、エビフライをつくってみよう。
ころもにみたてて周りにつけていくという技法をあみだした。
いままでデコふりにたよりきっていたが、ついにさけソフトふりかけの出番。
あやうくすべてがチャーハン風味のべんとうになるところだったが、危機を脱した。
かなり華やかになった。ころもがいい感じ!
⑤ しば漬けをつくる
おべんとうをつくる上で、箸休めポジションは必須である。
これがあるだけで満足度が変わってくる。
紫のデコふりでしば漬けをつくってつめる。
すごい……!!
どこからどう見てもおべんとうである。全て米とふりかけでつくったとは思えないほど栄養がありそうなおべんとうになった。育ち盛りのこどもが喜んで食べるようなラインナップのおべんとうだ。
明日のお昼ごはんがたのしみになった。
おべんとうは作ったが、まだまだ米はのこっている。
気合いをいれて多めに炊きすぎてしまった。
底の見えない米地獄。
せっかくなので、今日の晩ごはんも米とふりかけだけでつくってみよう。
どうせなら米料理以外のものをつくりたい!と思い、
まずは麺をつくることにした。
細長いおにぎりをつくる。
これ以上細くするのは難しかったので、この太さでうどんをつくることにしよう。
うつわにいれる。すでにうどんっぽい。
あぶらあげも乗せたい!と思い、デコふりのオレンジでつくってみる。
そしてできあがったのがこちら。
「つきみきつねうどん」
たまごやきでつかったごはんが余っていたので、うどんの上にのせて豪華にしてみた。
若菜ふりかけをつかってネギを表現したらかなりうどんになった。
米でうどんをつくり、ついに主食の壁をもこえてしまった。
どこまでもいけそうな気持ちになる。
ふぅふぅしてから食べる。ちなみにつゆはない。
うどんがおいしい季節になってきたよね。
ついでに食後のおすしもつくった。
食後におすし!?と思うかもしれないが、食中も食後もすべて米なので関係がない。
ライスクッキングにルールなど存在しないのだ。
食後のおすしを作ってもまだまだ米があまっていたので、いきおいにまかせてこのまま突っ走ることにした。
「ハンバーグ にんじんのグラッセとゆでたまご添え」
かなり華やかなディナーができた。
おしゃれなジャズがかかっているレストランのメニューにありそうな雰囲気をかもしている。ライスセットにするのは胃袋と相談してやめた。
遠巻きに見ると、これがすべて米でできているなんて誰も思わないだろう。
視覚的な栄養素はぐっと上がったはずだ。
ちなみに味はすべてチャーハン風味である。
米だけを食べすぎて罪悪感どうこうより、もうフードファイトの気持ち。
炊飯器にはまだまだ米がのこっている。
おそらくあと半分くらいはあるが、
いかめしのごとく米をパンパンにつめこんだわたしのからだの中に、
入り込む隙間はもうなかった。
さすがにこれ以上たべられないと思ったので、ラップして冷凍した。
ラップをしながら、いま私は米だけで極限までおなかがいっぱいになっているんだ……、という貴重な体験をかみしめていた。正直米をみるのもいやだ、という気持ちになった。
皆も人生で一度くらいやってもいいかもしれないが、やらなくてもいいかもしれない。
翌朝、いつもならおにぎりを食べるのだが、なんとなく米を拒否している自分に気づき、しかたがないのでコンビニにパンを買いにいった。
まさか、このふざけた米騒動のせいで、私と米の関係についにヒビが入ってしまったのだろうか。
おひるごはんは米しか用意してないけど大丈夫かな……、と不安をかかえつつ、いつの間にかおひるの時間になった。
せっかくなので外でおべんとうをたべることにした。
おそるおそる米を口に運ぶ。
チャーハン風味でおいしい!
昨晩あれほど米を食べておきながら、まだ米をおいしく食べられる自分に、
大和魂を感じた瞬間であった。
そしてエビフライにみたてて、周りにつけたころも(さけふりかけ)が、
レンジで温めたことによりパリッとかたまり、
最初の三秒間だけ本当にエビフライに感じたのも驚きであった。
見た目は完全に栄養満点なおべんとうである。
ふりかけごはんは視覚的栄養を手に入れた。
しかし、やはり拭えない罪悪感。
今夜は本物のエビフライを食べにいこう。
野菜もちゃんと食べよう。
そしてできれば付け合わせはパンがいい。
実際の栄養をとらなくてはこの罪悪感は消えないとようやく気づいた、
はだ寒い秋のひるさがりであった。
おわり。
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