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リプレイ小説「三人は傭兵」#9

Session3 その石の色は赤い

Chapter1 真夜中の森

 ヨイチとゴンザが拠点にしているフラットニードルという名の都市がある。荒れ地とだけ呼ばれる未開の地域とマラデ・ウィステリア国との国境に近くドゥークス王国の北に位置する。荒れ地は蛮族の馬賊やオークの大部族が蟠踞している。そしてそれらは度々国境を侵すため国境を守る守備隊は度々、防衛的な意味合いが強い侵攻を行った。

 ゆえにフラットニードルではその都度、傭兵の徴募も行われた。ヨイチとゴンザはそれを目当てにフラットニードルで暮らしていた。
 その為、多くの酒保商人もフラットニードルを拠点としている、また東方からの交易の中継地点としても機能しており外国人も多く活気のある都市であった。
 本を巡る戦いから数ヶ月、はたして二人の姿はフラットニードルの酒場にあった。二人に傍らには盗賊くずれの傭兵ブライの姿もあった。ブライはラギの山塞を後にした二人とともにフラットニードルにやって来ていた。フラットニードルに来た後はゴンザに戦闘技術を習い戦士としての戦い方を身に着けていた。
 そして三人とテーブルをともにしている男がいた。その男の身長は低く160cm程度だが、身体は鍛え上げられていた。顔はというとゴブリンのように醜悪で、吐く息もまたゴブリンのように醜悪であった。男はゴブキンと名乗り三人に美味い話があると持ちかけていた。
 ゴブキンの話はこうだった。ゴブキンは仲間たちと滅びた古代の魔法文明の遺跡を発掘している。そこには伝承によると金銀財宝が隠されている。遺跡の場所までは突き止めたが、肝心の入り口がわからない。入り口を探す手伝いをしてほしい。
 三人は傭兵でこんな事は専門外だが、ゴブリンの呪術師と共にドワーフの傭兵団と戦ったり、東方の古い魔術師と戦った噂を聞き尋ねてきたのだ。
 ほとんどの人間が魔法なんてものを目にする機会すらなく、その存在を信じてすらいない人も少なくない。だがこの三人は短期間でそれらを目にしている、それで藁にもすがる思いと言うやつで尋ねてきたのだ。
 三人はこのゴブキンという男を会うのは初めてだが知っていた。十人程度の徒党を組み傭兵稼業をいとなんでいる男で、金に意地汚く、誰を裏切っただの不義理をしただのという噂はよく聞いていた。
 遺跡の場所は隣国のマラデ・ウィステリア国の深い森の中だという、確かにマラデ・ウィステリア国は良質の金の鉱山が数多くある。古代魔法文明の遺跡とやらに大量の金銀財宝がある根拠の一つにはなるかもしれない。
 三人は用心さえしていれば、この間抜けに間違っても寝首をかかれる事はあるまいと判断し、最近傭兵の徴募も無いことから、この頼みを聞くことにした。
 早々に旅の準備を済ませ、翌日にはゴブキンが用意した四頭立ての馬車に乗り出発した。出発してそうそうヨイチは何かにつけられているような気配を感じた。
 数日後、四人は森の奥にいた。石碑は森によって隠されている意図すら感じる場所にあった。侵入者の視界を遮るような深い茂みを抜けると、途端にそこは丸く開けた場所になりその中央に石碑があった。石碑は黒曜石の様な石で出来ているらしかった、美しく磨き上げられており、書かれている文字はハッキリとしていた。何千年も風雨に耐えていたとは全く思えなかった。
 ゴンザは少々古代文字に通じており、ゴンザにはこう読めた。
“エイジャの証をしめせ”
 ゴブキンは驚き三人に言った。この辺りには昔、エイジャと名乗る賢者が建てた神殿があるという言い伝えがある。その神殿にはエイジャの叡智の全てがあるという。しかしゴブキンが調べたのはここまでで、証が何なのかは分からないと言う。
 ゴブキンは三人にこの謎が解けるような魔法使いを知らないかと尋ねた。ヨイチはこの前、知っていそうな魔法使いを一人殺したなと答えた。
 生きている魔法使いとなると、三人の頭に浮かんだのはゴブリンの大呪術師ラギだった。
 ブライは言った。最低でも財宝の六割は渡さなければ、その魔法使いは知識を授けてはくれまい。ゴブキンは六割という数字に強い拒絶をしめしたが、直接会い交渉すると言う。
 三人はあまり乗り気ではなかったが、仕方なくラギの山塞がある妖魔の森へ向かうことにした。妖魔の森は数日の距離だ。四人は出発した。
 もう二、三日で妖魔の森に着くという所で、ブライはゴブキンに言った。
 「あの後ろからついてきている連中を森のなかに入れるな」
 ゴブキンは何の事だ?尾行されているのか?と言うだけだった。ヨイチも警告をしたが、ゴブキンはそらとぼけるだけだった。
 その夜、ブライは野営を抜け出し道を引き返した。尾行者の正体を探るためである。
 10人ほどの傭兵風の一団が野営をしていた。ブライがさらに近づくと話し声が聞こえた。
「今日はゴブキンの旦那からの決行の狼煙はなかったな」
 ブライはさらに潜み続け、小用にたった男をつけた。小便をしている所を後ろから拘束しようとしたが、男はブライの腕を振り払い大声をあげた。ブライは素早く短剣をふるい、男のイチモツを切り落とした。悶絶し崩れ落ちる男の心臓を一突きするとブライは素早く身を隠した。悲鳴を聞いた男たちが駆けつけて来た。死体を見て驚き、辺りを探し始めたがブライを見つけることをは出来なかった。男たちが去るとブライは野営に戻り、二人にこのことを告げた。
 ゴブキンは火と食事の準備をしていた。準備ができ食事が始まった。ゴブキンの正面に座ったブライが突然、飲んでいたスープをゴブキンの顔を浴びせた。もんどりうって倒れ込むゴブキンに両脇に座っていたヨイチとゴンザが襲いかかり縛り上げた。
 ヨイチはゴブキンのズボンと下着を剥ぎ取とった。怒声を上げるゴブキンにヨイチが蹴りをいれ静かにさせる。
 ゴブキンに問いただすがゴブキンは知らぬ存ぜぬの一点張りだ。ブライは松明をゴブキンの股間に近づけた。ゴブキンの陰毛が焼けゴブキンは悲鳴を上げたが、まだゴブキンは知らぬ存ぜぬの一点張りだ。
 ブライは考えていた。確かにこのまま痛めつけていればそのうちゴブキンは本当の事を言うだろう。しかしブライには拷問の技術がない。そうなれば歩けなくなるくらいの傷は負わせることになる。一応ラギに直接、話をさせたほうが都合が良い、拷問はラギの山塞でやればいい。専門家のオークもラギは貸してくれるかもしれない。
 翌朝、ゴブキンの足の拘束だけを解いて旅を続けた。
 数日後、ラギの山塞にたどり着きラギに会うことが出来た。
 ブライはゴブキンのケツを蹴り上げ遺跡の話をさせた。当初は興味なさそうなラギだったが、その遺跡の事を知っているらしく興味を示し、言った。
 「その遺跡の事は知っている。入り口を探しても見つからないのは幻術に惑わされているからだ。その幻術を破る方法を教えてやろう、代わりにその遺跡からひとつ取って来て貰いたい物がある。エイジャの赤石という赤い宝石だ」
 ラギは鈴を出してブライに渡して言った。
「その鈴が正しい道を示してくれる」
 ブライはゴブキンをジャイアントスパイダーの厩舎に連れて行った。ジャイアントスパイダーの世話をしているゴブリンにこいつを餌にしてくれと言い、ゴブキンを渡してしまった。ゴブキンは助けてくれと哀願したが、ブライは聞く耳は持たなかった。ゴブリンに引きずられ厩舎にゴブキンは消えていった。三人は断末魔の声を背にラギの山塞をあとにした。
 三人は尾行を躱すよう迂回する進路をとったが、男たちはこのような追跡は手慣れたものらしく、その夜三人に襲撃をかけた。
 三人は襲撃に備えていたので不意を突かれることは無かったが、男たちは相当な手練で10人程もいたので、三人は絡め取られてしまった。
 男たちに遺跡の謎を解けるのかと尋ねられ、ブライはゴンザの盾を指差した。ゴンザの盾には、ヘカテー山の魔女が書いた呪文が書かれている、既に魔力は消え失せてしまったが呪文はハッキリと書かれている。
ブライは言った。
「遺跡の入り口でその盾に書かれた呪文を読み上げれば、入り口を見つけることができる。俺たち三人はその呪文の読み方を教えてもらった。ただし読み間違えると遺跡の呪いをうけることになる」
 男たちは相談し三人を遺跡までは生かして連れて行くことにした。
 次の日の夜、真夜中にブライはそっと縄を抜け出した。二人の男が離れて歩哨に立っていたが、二人とも油断しきって座ってウトウトしていた。ブライは他の二人の縄も解いた。ブライとヨイチはまずは歩哨の背後に忍び寄ると、ほぼ同時に縄で首を締めた。
 片付けた歩哨の剣を拝借すると三人は眠っていた男たちを次々と殺していった。陰惨な殺人を終えると、三人は近くの街に行き、再び旅の準備を整えた。

Session3 三人は傭兵、その石の色は赤い
収録日:2018/4/29
使用ルール:ソード・ワールド
メンバー
GM:社長
ヨイチ:ミチヲ
ブライ:山ノ下馳夫

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