性善説商売。

昨日、BANKの光本さんのお話を伺った。CASHというサービスを立ち上げた時のお話が主だった。CASHは今でこそ、ただの買取サービスだと思われているが、CASHは立ち上がる少し前に、そのサービス内容を聞いて、すごく気になっていた。どこが気になっていたかというと、「写真だけで、則買い取り金額を決めて振り込む」というある種、乱暴なサービス設計だと聞いたからだ。それのどこが気になっていたかは大きく4点ある。

1 そもそも買い取ったものはどこでどう売るの?が書いていなかったので、これはブックオフのように絶対損しない価格で買いたたくのかと思っていた。メルカリは、本当に欲しい人が買ってくれるだろうから、もう少し高い値段が付くとしたら、より安くたたかれるところに、商品を送る人がいるのだろうか?という疑問。

2 写真だけでお金を振り込んでしまうと、そのあと、モノが送られてこなかったら、その回収に手間と時間が掛かりすぎて、商売にならないのでは?という疑問。

3 サービスとしての新しさがそこにあるのだろうか?という疑問。質屋やオークションや買取サービスがある中で、スマホで簡単にできるという差別化だけでやっていけるのか?という疑問。

4 法的にいいんだろうかという疑問。法律には詳しくないが、何となく大丈夫なの?という疑問。

これらの疑問があった。そして立ち上がってみたら、祭りになっていた。当日のfacebookのタイムラインは見事にCASHで埋められていた。ものすごい利用者の数、それをひがんだ誹謗中傷。私が感じていた疑問などを投げかけている人、この商売は違法だと言い張る人。そして即日サービス停止で、記者会見。そんな激動を全部見ていたので、その人が直接話をしてくれるのは大変面白かった。

 私が感じていた疑問は昨日すべて彼が解消してくれた。まず光本氏がやりたかったこと。それは、一つは1万円をビルの屋上からばらまいて、それ僕のです!って屋上から叫ぶと何人の人が上まで持ってきてくれるかという実験。それを1億円かけてやろうと思った。という事だった。そういえば昔名古屋の電波塔で500万ばらまいたおじさんがいた。彼は株だったかでもうけたあぶく銭を投げた。それと同じだ。いや、一緒ではない。彼は、それを何人がどういう心持で持ってきてくれるのか?を上でたった一人で観察してデータを取得できる。それには1億の価値があると思ったからやったと言っていた。実際には3.5億を即日で払ってしまっていたが。(笑)そんな実験、大企業はやらない。前例がないから、そんな企画書は通らない。ベンチャーはそこまでの体力と勇気がない。それが丁度彼ができるサイズであったこと。ココが大きい。ここに大きく張れるセンスがすごい。

そんな壮大な実験をやってみたかった理由が面白かった。それは性善説での商売設計ということだった。セキュリティーシステムや本人確認システム、自動改札のゲートに至るまで、悪い人が利用しないようにかかるコストを全部ひっくるめて利用者が均等に負担するのが今のサービス設計。つまり性悪説に基づいてサービスは利用者を守りサービス提供者を守る。それを放棄し、みんないい人だと考えて、サービスを考えてみていた。つまり悪い人を締め出すために関わるコストをなくすことで、サービスを安く提供できるのでは?という設計。つまり悪い人がいても、まあ、最初の買取値段でなんと吸収できるでしょうって設計で作られている。ここで1つ目の疑問が解消された。他社が本人確認や送られてきたものの査定などにコストをかけているのに対し、全くそこをかけないと価格でも勝負できる。(ホントに勝負で来ているかは知らない)さらに、サービスが始まった翌日トラック三台分の荷物が届いてしまう。つまり、想定以上にみんな一万円札を拾って上まで持ってきてくれたということで証明される。

 さらにこの荷物が集まった日から会社の電話が鳴りっぱなしで、それは2次流通業者が買い取らせてください!と言ってきていることだった。ここで疑問の2つ目が消えた。送られたものを現金化することには困らないという事。そこで彼が示したのは、ブランディアもブックオフもテレビCMみたらわかるが、買い取ります!であって安く売っています!ではない。つまり買い取りたがっているという事実。これが一番意外だった。

 そして3つ目の疑問も彼は説明していた。彼が最初に作ったSTORE.JPというサービスでECサイトを作ってもらった出展者に即現金振り込み、ただし3%額が減るというボタンをつけたら、思いのほかそのボタンが押されたこと。少し待てば全額もらえるのに、一日も早く現金が受け取れるなら多少、下がってもいいと世の中の人が思っているという確信からそのサービスを作っていた。この面倒くさいコトの手間を極力省くことでの差別化は良く考えたら、確かにそうだ。あれだけパソコンでヤフオクが流行っていたのに、自分で売る値段を決めて出品する、あとは待つだけのメルカリがヤフオクに勝てたのはその面倒くささをすっ飛ばしたからだ。あとからヤフオクなどのサービスも同じようなことをしたがいまだにメルカリには勝てていない。メルカリよりもさらにすごいのは値段を決める手間も出品者ではなく、アプリ側でやってくれること。つまり値段の設定で、相場を調べて、これくらいなら売れるかも?あれ売れないな?下げるか?という一連をメルカリはまだやっている。値下げ交渉の連絡とか来る。そこも手を煩わせない。さらに最近では引っ越し時に写真撮影までやってくれるサービスをつけてくれている。つまり出品商品だけ引っ越し時に出しておくだけで現金に代わる。

 4つ目の疑問。これは確か記者会見でも彼はここだけは説明していた。違法性があるのではないか?だがそもそもが一万円を無差別に人に配るがやってみたかったことなので、法の範疇でもない気もする。笑。やはり法律は良くわからないのだが。

そしてここからが私が書きたかったこと。性善説の商売ってあるのだろうか?という事と性善説に変えたら面白い商売はあるのだろうか?ということ。

或る時フランス人に、日本人が信じられないと言われた。そのフランス人は世界中を旅行しているが、彼が驚いたのは日本のパン屋さんである。ガラスケースの向こう側ではなく、こちら側に自分でトングを使って持ってきてお会計をするというそのサービス。回転寿司も同じだ。みんなが礼儀正しく商品を扱ってくれることをサービスデザインの根本においている。性善説に立っている。日本人は割と律儀だなあといつも思う。割り込まないで並ぶとかも。

 そこで思い出した話がもう一つ。震災支援で家電を送るプロジェクトの話(この本に詳しい。「人を助けるすんごい仕組み」西條 剛央著)これは、要らなくなった電子レンジや電気ポッドを被災地に送る際に、どのように持ってきてもらったものがゴミではなくしっかり動くのか?もらったものをいちいち動作確認なんかできない。そこで摂った方策が、ただ単に持ってきてくれた方のお名前とメールアドレスを聞くということ。これも聞き方が、素晴らしい。被災地の方からのお礼の声を届けるために、お名前とメールアドレスを教えてください!と。この仕組みを入れるだけなのだ。もともと被災地支援という善意。その気持ち自体が性善説に立っているが、それでも家電はリサイクル法ができてから、ごみとしては処理にお金がかかるから捨てる人もいるかも?という部分を見事に仕組みで乗り切って、ほぼ使える家電しか集まってこなかったという。

 もう一つがグラミン銀行。これはバングラディッシュの銀行。CASHは手元にあるモノをすぐに現金化するアプリだが、この国の貧困層はその手元にも何もない。そこでマイクロファイナンスとして少額を無担保で貸し出す。男は飲んでしまうから、女性に。返済期日を短くし、利子を少なくして、小さくどんどん回す。これで貧困層は小さくビジネスを始められ、最下層の人たちの生活が劇的に変わってノーベル平和賞。2000年以降に起こったこれらのビジネスモデルの話を聞いて、正直鳥肌が立った。


仕組みだけで。そして自分でも考えてみた。元々法治国家というものが性悪説に立って作られている。制服も生徒手帳もない高校で育った私は、この性悪説的なものが苦手だった。

 まず思いついたのが入国審査。とにかく悪い人を入れないようにというセキュリティーゲート。すべてが悪い人を入れないためのコスト!手荷物検査も身体検査も、パスポートも、すべて犯罪者、テロリストを入れないための施策。ビンラディンの最大の功績は、空港に大量の雇用を生んだこと。ココをもう一度、見直せないか?と空港で入国審査で並ばせられていると思う。

 もう一つが各種保険や年金などの現金をばらまく制度。年齢確認、医師の診断書、免許書の色、走行距離、保険には、私は大丈夫ですよ書類がたくさんある。そして保険金詐欺などをみてもわかるようにそれでも現金を受け取ろうとする人がいる。これも一度にたくさん渡さず、少しずつ毎日渡す。悪意のある人には、毎日面倒くさいことをしないと受け取れず、その手間が見合わないことにしたらいいのではないか?と思う。

 考えたらもっとあるかもしれない。性善説で人を信じてみる。震災の時、僕らはすすんで、自らに何ができるか考えた経験がある。震災ボランティアに悪意はない。それを思い起こすと、新たなサービスが生まれるかもしれない。

そしてもう一つ。CASHのサービスをみて思ったことが、ここ最近のサービスは、現代人はとにかく時間をかけて自分が判断しなくてはいけないことを嫌がる。ということ。そこを短縮することがサービスに求められていること。それを考えた時に旅行を思い出した。まず行く場所を決めて行ける日程から行程を考えるが、このプランニングがどれほど面倒くさいか?もういっそツアーにしたくなるが、そこに行きたい場所が組み込まれておらず、やはり自分でメイクする。どこのホテルにするか?我が家は息子の寝相が悪くベットから落ちる。するとベッドではなく布団のところはないか?ホテルをきめたら、そのホテルの最安値はどこか?駅から離れている場合、駅までの交通手段は何にするか?そこで何を食べるのか?どんなアクティビティが周りにあるのか?そこまではレンタカーか?レンタカーはどこが安いのか?チェックインは何時か?チェックアウトは何時か?なら電車の時間は何時か?飛行機の場合、さらに航空会社、最安値、羽田、成田、の出発地、時間、エコノミー?マイル?もう不確定要素の変数が多すぎて、だいたい夫婦げんかになる。そう。こういう面倒を何とかしてくれる。をCASHはお金周りでやってのけている。だれか?やってくれないかな?

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