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親と子の課題図書『少年探偵ブラウン』

子どもと一緒に読みたいと考えている児童書がいくつかある。先日、そのうちのひとつを絵本コーナーにそっと置いた。

これです。

(『少年探偵ブラウン』シリーズ)

シリーズ1巻の初版は1977年。Amazonでは入手困難な巻もあったため、取り急ぎ定価で買える1~3巻を手に入れた。

40年以上も前の本だが、私が『少年探偵ブラウン』を読んだのは子どもの頃ではなく平成も終わりの終わり。ほんの2年前のこと。

当時は二人目の育休中。ようやく昼寝をした息子の傍らでできることは限られる。いちばんは本が読みたい、でも復職にむけて英語学習もやっておきたい──2つの ”やりたいこと" の狭間でゆれていた私は、ふと閃いた。

そうだ、英語の本を読めばいいんだ。

とはいえ私の拙い英語力では大人向けの洋書は難しすぎて読めない。そこで大人でも十分楽しめるストーリーの児童書はないか?と探して、『少年探偵ブラウン』シリーズの原書に辿りついたのだった。

原題は『Encyclopedia Brown』という。冒頭を少し紹介すると、

Mr. and Mrs. Brown had one child. They called him Leroy, and so did his teachers. Everyone else in Idaville called him Encyclopedia.
(中略)
Leroy Brown’s head was like an encyclopedia. It was filled with fact he had learned from books.
─引用 『Encyclopedia Brown Boy Detective』

英語のレベルはおおむね上記程度。
高校レベルの文法が身についている方なら、ストレスなく読み進めることができると思う。

主人公ロイ=ブラウンは、本で学んだことがそっくり頭の中につまっている天才少年。周囲からは親しみをこめて「Encyclopedia(百科事典くん)」なんて呼ばれている。
そんなブラウン少年が、持っている知識をフル稼働して子ども同士の揉め事から警察の捜査が難航する事件までスパッと解いてしまう、というお話だ。

数ある児童書のなかでも特に、私が『少年探偵ブラウン』を子どもと一緒に読みたい理由をあげると、

1.大人は英語で、子どもは日本語で同時に楽しめる

この本には一冊あたり数本の短編が収録されている。それぞれ、ストーリーパートを読み終えたあと、読者が謎解きにチャレンジするという構成だ。

大人は原文(英語)で、子どもは和訳で、同時に謎解き合戦をしても楽しそう。

(原文はこちら)

ちなみに私の場合、英語の理解不足で解けない謎も多かったので、子どもとの推理勝負は互角だと思う(おいおい)。

たとえば、「謎」はこんな感じ(注、ここからはネタバレ含みます)。

──見ただけでは分からない卵。実は「ゆで卵」だったことを証明する。

では、該当する卵が割れたときに(もちろん、割れた現場は見ていない)、お店の人が発した “I’d better sweep up the mess” というセリフから「割れた卵はゆで卵」であると推理する。

前述のセリフを日本語に訳すると "汚れたから掃いたほうがよいな"
この言葉から、生卵が割れたら「掃く」ではなく「拭く」と言うから「割れた卵はゆで卵」──という推理は、日本語だとすんなり理解できるものの、英語の場合「sweep up(掃く)」を読み飛ばすとまったく解けない。

これ、回答できないと結構くやしい。

くやしくって、「はい、次いこ!次!」と英語なのにどんどん読めてしまうので不思議。まさに沼。面白いって最強。

2.楽しみながら知識に触れる。

一方、親目線で『少年探偵ブラウン』を読むと、謎を解きながら、同時にさまざまな知識に触れることができる という点がとても良いと思った。

この本の「謎」は、”北極にはペンギンがいない” とか "金の延べ棒はとても重い" とか "恐竜の生きていた時代に人間はいない" といった、理科や社会の教科書に書いてあるような事柄が分からないと解けない(ものが多い)。

(たとえば、博物館に「北極」の展示物のなかに「ペンギンの剥製」が置いてあるなんておかしい!と指摘して、盗んだ金の隠し場所を特定する。など)

振りかえると、子どもの頃って学校で習ったことより本から得た知識のほうがよっぽど覚えていたりする。

娘や息子も、この本を通してさまざまな知識に触れ、楽しみながら吸収できたらよいな。

そんな淡い期待のもと、このたび子どもたちの本棚に『少年探偵ブラウン』を忍ばせた。

といっても読むかどうか/ハマるかどうかは子ども次第。

うちは子どもが3人もいるわけだし、誰かひとりくらい一緒に『少年探偵ブラウン』の世界にどっぷりつかってくれないかなぁ。

数年後に控えた子どもたちの夏休み、この本が親と子の課題図書となればうれしい。

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