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3歳児、リビングを海にする

3歳息子は魚が好きだ。

行きたいところは水族館。愛読書は魚図鑑。好きな食べ物はお寿司とおっとっと。短冊には「さかなのオモチャがほしいです」と書き、マンボウ・鮫・リュウグウノツカイに会うことが夢。好きの理由こそ分からないけれど、魚への愛情はこちらまでヒシヒシと伝わってくる。

なので、私が3歳の息子を喜ばせたくて魚を折り紙でつくったのは、まぁ自然な流れだった。

のだけれど、まさか1ヶ月後にリビングが海になってしまうとは、思いもよらなかったのだ。


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私がつくった「魚」に大喜びした息子は、魚たちをペタペタと壁に貼りはじめた。

え?
セロハンテープ使えるようになった?
え?え?
すごいすごい!壁が海みたいだね!!

驚く私に、「ハイ」と満面の笑みで魚の図鑑を渡した息子。

「これつくって」

私にダメとは決して言わせない圧と、可愛らしい笑顔でそう言った。


この日から、「これつくって」が口癖になった息子は、朝起きるとまず一番に折り紙とハサミをもってくる。図鑑、もしくは魚ポスターでお目当ての魚を示し、一匹つくってもらうことが日課となった。

気がつくとほんの1週間で、壁一面、上までびっちり魚、魚、魚。

「ここはずいぶんときゅうきゅうだね」と、魚たちの声が聞こえてくるようだった。


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あ、一匹逃げた。

魚がリビングの壁を泳ぎ始めて2週間目のとある日、突如、魚たちの目の前に白い壁が広がった。リビングを模様替えしたことで、となりの壁一面を塞いでいた家具がなくなったのだ。

静かに一匹、また一匹とブルーオーシャンへと飛びだす魚たち。

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真新しい白い壁を悠々と泳ぐ彼らは、なんだか嬉しそうにも見える。

「ひろいね~たのしいね~」と魚たちの声を代弁しながら、3歳息子は嬉々としてつぎの仲間を壁へと貼りつけていた。


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壁の魚にもすっかり馴染んた3週目。

「これつくって」の可愛いおねだりの矛先は、私と夫のみならず2歳年上の姉にも向かっていた。

「え~めんどくさ~い」と言いながらも、渋々と弟のお願いを聞き入れる娘5歳。さすがの手さばきで器用にマグロを切っている。

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……ん?

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……んん!?

って3歳くん。君はいつの間にハサミをマスターしたんだい?


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子どもたちが、24時間自宅で過ごすようになり1ヶ月が経った。

その間に大群へと膨らんだ魚たちは、色カタチは違えど一斉に窓の方角へ向かって泳いでいる。

まるで、外に出たい、もっと広い場所で泳ぎたい、と騒いでいるように見えるのは、私がそう思っているからなのだろう。

3歳息子は、今日も今日とて魚を壁に貼る。

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水族館やペットショップに出向き、大好きな魚を存分に見ることが出来ない日々が続くが、3歳にさほど気にする様子はない。寧ろ、折り紙の魚に囲まれで楽しそうに遊んでいる。

そんな息子の姿をみていると、どんな状況下であっても好きなものがあるって最強だなぁと思うのだった。


・・・

このnoteは、ずっと下書きにあった緊急事態宣言下の4月5月のわが家の様子を書いた日記です。壁の魚たちとは、保育園が再開した6月に写真をたくさん撮ってバイバイしました。

3歳半になった息子は、ただいま釣りゲームにはまっています。魚の種類は私よりも詳しいです。



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