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第3回 本がふにゃふにゃになっても

注文していた本が届いた。湯船につかりながらサクッと読んでしまおうと思う。お風呂で本を読む話をすると、「本、ふにゃふにゃにならない?」と聞かれることがある。
 
ふにゃふにゃになるよ。
 
ふにゃふにゃになるので、人から、もしくは図書館から借りた、あるいは、そういうことを許容してくれそうにない家族の部屋にあって勝手に持ってきてしまった等、つまり自分の所有物ではない本は、お風呂向きではない。私もさすがに、人様の本をふにゃふにゃにしようとは思わない。自分の本が、ふにゃふにゃになっているのは気にならないというだけである。
 
ちなみに、私は小説とかエッセイとか好きで読む本はもちろん好きなんだけれども、悩んだときも基本的に本を読む。なぜなら、水野敬也さんの『夢をかなえるゾウ2』に書いてあったから。

「仕事、お金、人間関係、幸せ……人間の悩みなんちゅうのはいつの時代も同じや。そんで本ちゅうのは、これまで地球で生きてきた何億、何十億ちゅう数の人間の悩みを解決するためにずっと昔から作られてきてんねんで。その『本』でも解決でけへん悩みちゅうのは何なん? 自分の悩みは地球初の、新種の悩みなん? 自分は悩みのガラパゴス諸島なん?」

水野敬也『夢をかなえるゾウ2』

そんなこんなで、インボイス制度のせいで消費税の確定申告もしなければならなくなった、フリーランスの私が今宵お風呂で読むのは、消費税の確定申告にまつわるあれこれである(げんなり)。
 
そういえば、本で思い出した話がある。昔、まだ電車の中で本を読む人が少なからずいた頃のこと。
 
その日の電車は混んではいなかったが、空いている席もなかったため、私はつり革につかまって立っていた。すると、目の前に座る男性が何やら真剣に本を読んでいる。当時は、電車で読書をする人の大半が本にブックカバーをかけたり、表紙を裏返しにしてカバーの代わりにしたりしていたので、何の本を読んでいるのかは、外側からうかがい知ることができないのが通常だった。しかし時折、カバーをかけずに本を読んでいる人がいて、そういうときは、こっそりタイトルを見てしまう、読書の習慣のある人はみんなそうだったのではないだろうか。そして、そのときの男性もまた、ノーカバーで背表紙のタイトルを思いっきりオープンにしていたのである。
 
『借金なんかに負けない』

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