あの星になら君を抱かれても良い
痛くて寒い、なんと高校生のような台詞でしょうか。貴方とかにしたかったけれど、明確な季語を伴わないあたしの俳句は17音を拠り所にしているので、2音の君を外すわけにもいかなかったのです。
そうです。これは俳句だったのです。
俳句と言えば、その、季語が必要だとか、575だとか、形式ばかりが先立って、あんまり馴染みがないかもしれませんが、あたしは読み手が俳句って言えば、それで俳句になると思っています。
多分それでいいのです。文句を言いそうな芭蕉さんも子規さんも、もうとっくに死んでしまいましたし、テレビでよくみるおばあさんは、あたしの詩の形式になんて興味がありません。
だから多分、これは俳句なのです。
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バイト終わりに二郎系ラーメンを食べて帰った。自転車を漕ぐ手が悴んでいる。昼ごろまで持ち堪えていた秋の装いは、日が沈むと跡形も無く消え、夜には冬の風の、痛寒いそれが、顔と手を容赦もなく突き刺していた。
駐輪場に自転車を止め、ふと空を見ると、綺麗な半月が浮んで居た。冬の空はどこか透き通っていて、ぱりっとした月明かりが僕を一点に照らしている様だった。
刹那、月が陰った。
月明かりが急に消えたのとほぼ同時に、周りの星の綺麗なことに僕は驚いていた。
月で見えなかったその星は、なぜ見えなかったのか分からないほどに、煌々と瞬いて居た。
何故だか、君のことを思い出す。
思い出しながら僕は、この美しさを詩に書き留めなければと直感的に思った。
なぜなら創作とは、衝動の保存なのだから。
そうしてもう会う事のない君を引き合いに、この星の美しさを書き留めることにした。
あの星になら
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あたしの好きだった人は、星を連想させる名前だったのです。だから月の陰に綺麗な星を見つけたとき、すぐにあの子のことが思い浮かびました。
だけど、あの子の事を知る術をあたしはもう持ち合わせていません。あの子は今どうしているのでしょうか。もしかしたら恋人ができて、そう崩す事のないあの綺麗な顔を、いとも簡単に崩しているのかもしれません。今頃どこかのベッドで、その人に、愛してると言っているのかもしれません。
そこまで考えて、吐き気がして、それから、
いやだな、と思いました。
こんなに強い気持ちを覚えることは、あたし、意外にもそうそうありません。
そこであたしは、この気持ちを詩に書き留めなければと直感しました。
なぜなら創作とは、衝動の保存なのだから。
そうして、この星々の美しさを引き合いに、もう会うことのない君への未練がましい思いを詩に書き留めることにしました。
あの星になら君を抱かれてもいい
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