一級建築士の振り返り

私は現在建設業界で働いていない(設計の実務経験ほぼ無し)のですが、建築関係の仕事もしていることと建築学科を卒業していることもあり、今年3度目の一級建築士の試験を受験しました。受験の振り返りをお伝えするとともに、建設業界以外の方が受験する際の参考になれればと思います。


1.そもそも一級建築士試験とは?

そもそも一級建築士は何ができるのかというと、全ての規模の建築物の設計・監理を行うことができます。

では、一級建築士の試験には誰でも受験できるかというとそうではありません。試験を受験するのに受験資格が設けられています。

・大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者
・二級建築士
・建築設備士
・その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者等)

とされています。

大学で建築や空間デザイン等を専攻されていた方であれば一番上に該当し、卒業と同時に受験資格を得られます(詳しくはそれぞれの大学等でご確認ください)。

それ以外の方であれば、一旦二級建築士や建築設備士を経て一級建築士試験を受験することになるかと思います。

2.私の一級建築士試験振り返り

私は学科試験1回、設計製図試験3回でようやくパスしました。
2021年:学科試験合格、設計製図試験不合格
2022年:設計製図試験不合格
2023年:設計製図試験合格

設計製図試験は以下のホームページの説明図にある通り、学科試験合格後5回の試験のうち3回が学科試験免除で受験できます。

なので、2023年に合格していなければ、また学科試験から受け直しとなります。業界的には学科試験免除の設計製図試験ラストの年を「カド番」と言っており、まさにカド番でした。

①2021年(学科試験)

初年度は日建学院に通っていました。通いといいつつも、学科試験はほぼ自習に近い形で、問題集を繰り返し解き、模試を3回ほど受験する流れで勉強していました。たまに教室通学でテスト形式の講義がありました。建築学科出身ではあったのですが、周りの友人などが一級建築士を全く受験しないため、周りに仲間があまりおらず、心細かったのですが、黙々と勉強しておりました。
学科試験が終わり、自己採点すると、計画が例年の足切り点に近い点数、総合点数も例年の合格基準点並みで、不合格なのではないかという恐れがありました。(学科試験では、各試験科目(計画、環境設備、法令、構造、施工)に足切り点があり、それと総合点数で合否が決まります。)
日建学院の合否判定システムでおそらく合格であろうということで、設計製図試験の対策を始めました。

②2021年(設計製図試験1回目)

学科試験対策に引き続き、日建学院の設計製図試験対策講座を受講しました。短期コースで、学科試験から設計製図試験までの2ヶ月近くのコースです。余り周りの受講生と話をしていなかったので詳細は把握していないですが、恐らく私と同じ学科試験から直接受験する方が大半なのではないかと思います。

設計製図試験は11時から17時30分の6時間半で設計条件を読み取り、図面を描き、計画のポイントとなるところを記述する試験になります。工程として、課題文読み取り→エスキス→記述→作図→見直しの流れの人が多いと思いますが、その中で「作図」の工程が一番時間がかかりますし、最初は苦労します。私も講座の中で出された課題のトレース(解答例の図面をそっくりそのまま描き写す)だけでも6時間くらいかかった記憶があります。最初は作図の手順がわかっていないので、手順を覚えつつ、作図で必要な項目を写していくことを繰り返していました。このトレースを何枚できるかで、作図スピードが大きく変わってくると思います。

作図についてできるようになってからが、やっと土俵に乗ることができると思います。作図の次はエスキスを重点的に対策していくことになります。課題文を読み取り、どのような建物とするか計画する工程です。一級建築士の試験は作図ができないと話にならないのと同時に、近年厳しくなってきている法規制対応も試験のポイントになります。具体的には高さ制限や防火規制(延焼ライン、防火設備、重複距離など)に対応させなければなりません。また、大前提として、所要室抜けや面積オーバーなども避けなければならず、エスキス段階で考慮することが非常に多いです。これらのことを整理しながら、課題文で求められる建物を計画していきます。

2021年は「集合住宅」の課題でしたので、ひたすら集合住宅の住戸配置のパターンをいろいろ練習していました。作図に関しても、当初3時間超の作図時間だったものが2時間45分〜3時間の中でできるようになり、なんとか6時間30分で収まり、一通り試験対策ができている状態でした。(講師からは当時のクラスの中で一番練習しているとの評価でした)

本試験では、一通り図面を作成し、チェックもしたのですが、ランクⅣでした。法的不適合は特に心当たりが無い一方で、本試験後に道路斜線の線の描き間違いがあることには気づいており、その点がもしかしたら引っかかってしまったのかもしれません。集合住宅だったので、屋外階段を設置した計画にしており、その場合最小後退距離は屋外階段の外面から道路境界線までの距離になりますが、それを考慮せず斜線を引いていました。最小後退距離が正しい場合でも高さ制限は特に抵触しておらず、斜線描き間違いになります。

③2022年(設計製図試験2回目)

2度目も日建学院に通うことにしました。3月から始まる設計製図試験対策講座を受講し、課題発表の7月までは2週に1度講義を受けていました。

課題発表までは過去問か過去問に近い問題を用いて、基準階タイプとゾーンニングタイプで分けて演習することがメインでした。例えば、基準階タイプであれば宿泊機能のある研修施設、ゾーニングタイプであればプールのある健康増進施設などです。講義では、どちらかというとエスキスメインで進めて、宿題で作図という流れでした。既受験生ばかりなので、作図は自分たちでしておいてねというスタンスに思いました。

課題発表で「事務所ビル」ということだったので、課題発表後には事務所ビルの課題を何回もこなすことになります。当時はなぜか機械式立体駐車場を含んだ事務所ビルの課題を多くさせられていた印象です。また、いわゆる長期コースなので、担当する講師もベテランの方が多く、添削は細かいところまで及びました。練習も人より多く行い、添削もまとめノートに書くことで、緻密な図面になるように工夫していました。

本試験では、今思えば大したことがなかったのですが、南北の2面接道で、メインアプローチをどのように持ってくるかで20分程度悩んでしまっており、また最上階の屋上庭園の計画も外側PC梁となっていて、ややツッコミどころがある図面となってしまいました。そのためランクⅢになってしまったのだと思います。

④2023年(設計製図試験3回目)

3度目の正直と思いつつ、2022年の不合格で意気消沈しており、2023年は受験するのをやめておこうかと思っていました。そのため、1月、2月は特に何もしていなかったのですが、会社のベテランから早い目に受けたほうが良いとの説得を受け、急いで設計製図試験対策の準備を2月に始めました。その時に2022年まで受講していた日建学院で継続受講しようかと思ったのですが、一方で2年間通って不合格だったのと、私が過去に二級建築士を取った際は総合資格で受講して合格したので、総合資格の方にアプローチし、総合資格で受講することに決めました。総合資格は費用が高いことで知られていますが、ちょうどキャンペーンで安くなっていたのもあり、総合資格で設計製図試験対策をすることにしました。

総合資格の担当者や講師から、日建学院より厳しいので頑張ってついてきてと初めに言われており、なんのことかよくわからなかったのですが、講座が始まるとよくわかりました。まず、講義の回数が週1回であり、毎回講義で1課題、宿題で1課題あり、ボリュームが多いです。また、自主的にトレースもするように言われていたので、それも含むと倍以上(3倍とか!?)の量になり、びっくりしました。また、講師も図面だけではなく、課題文、エスキス用紙、記述、全て回収して添削するので、添削の量が非常に多いです。加えて、2022年の時以上に作図における細かい点もチェックしていただいていたので、確認することが多かったです。

課題発表後前の講座のスタンスは日建学院と同じように、基準階タイプとゾーニングタイプを分けて練習するというものでしたが、おそらく過去問をアレンジして作成している課題を演習していました。また、これは課題発表後に分かったことですが、この時点から総合資格は当年度の課題を当てに行っており、出題確率が高そうな用途を中心に演習しました。そのため、この時点で2023年の課題である「図書館」を演習していました。

課題発表で「図書館」が課題とわかると、長期コース生はすぐに春先にやった図書館の課題を見直すよう言われました。私もその時のテキスト、エスキスプロセス、図面を引っ張り出し、復習していました。その後はひたすら図書館の課題を演習するのみです。3年間演習してきているので、大体のことはわかるものの、それでもあやふやであったり、抜けているところはあるので、その都度添削頂いていました。また、日建学院ではあまりなかったグループミーティング(クラス内でグループに分けて、お互いの図面について意見交換するミーティング)が行われていたこともあり、クラスの人とは何か聞ける間柄で、毎週有志で宿題になっていた課題のグループミーティングを講義前にやったりしていました。

本試験では、まさかの所要室を全然指定しない、北側斜線が初出題などあったのですが、なんとか落ち着いて対応することができ、合格しました。

3.まとめ

3年間一級建築士試験と闘ってきた記録をまとめてみましたが、設計製図試験が非常に苦労しました。引き続き設計製図試験のことなどは書いていきたいと思いますので、もしよろしければまたチェックいただければ幸いです。






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