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マイクル・コナリーの「汚名」を読む

面白かった。爆速で読了した。カミさんも読んで絶賛でありました。普段通りメモもまとめた。しかし記事の作成が全然進まない。記事という以前に物語の概略を書こうとしているところで身動きができない。何故か。どこまでというかどこで止めればネタバレにならないのかという点で話の筋を戻ってくると冒頭のところまで戻ってきてしまうのだ。
それじゃ記事にならん。で語り始めるとやっぱりネタバレになるなー。となり、僕は本書のストーリーを前進・後退しながら出口を見いだせない状態に陥っているのであります。

間違いない。絶対に裏切られることはない。余計な情報を仕入れることなく、黙って本書にとりかかるが吉である。以上。

これで終わりにしてしまおうかと本気で逡巡しました。

しかし、どうしても一言・二言言いたい。書きたい。からこそ、こんなサイトを作って長年記事を書いてきていて、しかし他所様の読書を損なうようなネタバレはしたくないという訳で悶々となる。

ここから先、差しさわりがないように注意をしつつ最小限に抑えますが、未読の方は読まないに越したことはないことを予め提言させていたただきます。

さて、どうしてここまで書きにくいのかという点についてすこし考えてみたいと思います。それはタイトル「汚名」が語るような状況に冒頭でボッシュがいきなり陥ってしまうからだと思います。

降ってわいてきたかのようにボッシュが解決した昔の事件に「冤罪」の疑いが生じてしまう。しかし、単なる冤罪であれば「汚名」とまで言われることはない訳で、ここにもう一段看過できない話が織り込まれ、ボッシュとしてはなんとしてもこの汚名を雪ぐ必要性に追われていくことになるのだ。

しかし、本書の面白さと同時に紹介しづらくしている点がもう一点、この昔の事件が悪い形で蘇ってきたと同時に、もう一つ、現在進行形の最新の事件がボッシュに降りかかってくる。地元、サンフェルナンド市の商店街の一角にある処方箋薬局で銃撃事件が発生。初動捜査の陣頭指揮をボッシュは買ってで捜査員や警察官たちに指示を出して捜査を進めていく。

この二つの事件が同時並行的に進んでいき、時に関係者の言動が双方の事件に影響を与えたりすることで物語は予想もつかない方向へとぐいぐいと進んでいくのでありました。

物語の推進力と同時に紹介しづらさを生み出しているのはこうした展開があまりにも冒頭の部分から切り離せないような形で進んでいくことにある。もうほんと前置きなし。いきなり最初から。なのでありました。

こうした展開を実現しているのはボッシュという強くて深く、今や読者に説明不要となっているキャラクターがおり、事件捜査のリアルな筆致と着実に把握された世相というものがある。ボッシュシリーズというか、コナリーの本の面白さはやはり著者の正義感というか善悪の捉え方に僕ら読者が強く共感できる安心感というものがあると思う。

この正義感に裏打ちされたボッシュが二つの事件の事件解決に邁進していく。物語はジェットロケットのような推進力を持って激しく加速していくのでありました。いやはや本当に面白い本をありがとう。

ところで本書の原題は"Two Kinds of Truth"。これにも複数の解釈が込められているように思う。日本語のタイトル「汚名」よりエンディングを強く示唆する形のタイトルだなーとも思う。このあたりのことを古澤さんはなんて言うのだろうと思ってたのに、訳者あとがきがない!!これももう一つの予想外であった訳ですが、多くを語らず・・・。これは僕が記事を書くのを躊躇してしまった理由の一つにもなっていたのでありました。

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