見出し画像

市長の勝ち

広島の安芸高田市の市長と議会のバトルが話題になっている。市長に対して、何かと非難反対する議員に対し、市長が論破あるいは捻じ伏せ?ている。

こんな感じだ。
議員が、災害発生時に、市長が県外のトライアスロンの大会に出場していたのは、けしからんと問い詰めたケースだったと思う。

『議員』
もっと地域の実情を知り、住民に寄り添うのが市長の責務ではないか。

『市長』
私は、プライベートな時間に、自転車で僻地を見て回っている。1日に50km,100kmになることもある。

先日は、どこそに行ってきた。○○村を通り、**川に沿って走り、▷▷橋を渡り、%%池から$$村に行ってきた。

あなた達の誰よりも、地域を見て回っている自信がある。
¥¥村では、選挙の時しか議員は来んと言っていた。

『議員』
・・・
市長はママチャリであちこち回られていることは、分かった。しかし、もっと気持ち的に・・・・

しどろもどろ状態になって、有効な追求になっていない。

市長の勝ちですな。

相手を倒そうとするなら、議員さん、もっと相手のことを研究・調査して望まねば。

元は、トライアスロンの大会に出場していたことを咎めたんじゃない。
だったら、ママチャリで50km、100km市長が走ったのではないことぐらい、気づかないと。

ママチャリではなく、ロードバイクで走ったのです。断言してもいい。

なおかつ、僻地に行ったのは、ロードバイクのトレーニングだと思う。車や人通りが多い市街地をロードバイクで全力を出してトレーニングするのは、難しい。

しっかりトレーニングするなら、人や車の通りが少ないところ、すなわち人のあまり行かないところ僻地になる。

考えてもみよ。トライアスロンの距離は、オリンピックディスタンスで、
スイム:1.5km
バイク:40km
ラン:10km

ロングディスタンスでは
スイム:3km
バイク:155km
ラン:42.195km

となっている(もっと色々の距離設定があるようだが)。
ちょっと参加してみようか、なんて訳にはいかない。
日頃からトレーニングをしておかないと、完走することも難しい。

市長は、県外で開催された大会に、わざわざ出かけておられる。初心者ではないと推察する。

ということは、常日頃から、トレーニングをしっかりやっておられるということだ。

僻地に行ったのは、自分の趣味のトライアスロン(ロードバイク)のトレーニングに行ったので、視察に行ったのではない。

繰り返すが、しっかりロードバイクのトレーニングするなら、人や車の通りが少ないところ、僻地になる。

もちろん、トレーニングのついでに視察ということもある。
また、単なるサイクリストではなく、市長であれば同じ風景を見ても目の付け所が変わってくるということは、当然ある。

また、視察ついでに、ロードバイクのトレーニングということもありうる。

しかし、トライアスロンを念頭に置いた、ロードバイクのトレーニングは、いわゆる気楽なサイクリング以上の負荷をかける必要がある。

であるなら、ロードバイクのトレーニング中、ちらりと見てどれだけその地域のことがわかるか、疑問。

地学、地理学、防災学、都市計画等の素養が豊かであれば、一瞥して大体のことがわかることもあると思うけど。

このあたり、市長も人が悪い。
ママチャリとの議員の認識を、ロードバイクだと誤解を解いていないのはもちろん(解く必要もないが)、自転車で市内全域を隈なく視察しているというような印象を抱かせている。

それは、普段人があまり行かない僻地を走ったということにある。聞くものは、僻地に行ったんだから、僻地以外は当然行っていると思ってしまう。

尚且つ、具体的地名のみならず、途中の風景の細かい描写、どこそこの橋を渡ると、何々の池に出て、そこを右に回ると・・・みたいな感じ。

細かい描写は、実際にその場所に行った証拠になるだけではない。人は細部を知っていると、全部を知っているように思う。たとえ、細部だけしか知らなくてもだ。

実際は、経路を覚えているだけに過ぎなくても、その地域全体のことを理解していると勘違いする。
自転車で走れば嫌でも、途中経路は覚える。

これやかやで、これを聞いた議員は、市長は市内全域を隈なく視察し、実情を把握していると思い込み圧倒される。

勝負ありですな。


じゃあ、議員はどう対処すれば対抗できたか。
私だったら、どうするか考えてみた。

『市長』 自転車で50km、100km、僻地を走った。

『私』 それは、流石。
忙しい中、しっかりロードバイクでトライアスロンのトレーニングをしておられるんですな。

ここで市長が沈黙すれば、自転車で僻地を走ったのは、自分のトレーニングであって、視察ではないということになる。

市長が、視察のために自転車で走ったのだと反論したら、自分が実情を知っている自転車のトレーニングに向かないところを挙げ、そこに視察に行ったか聞けばいい。

行っていないという返答なら、市全域を隈なく視察したという前提が崩れる。
(もっとも、市長は市全域を自転車で走り回ったとは、おっしゃってはいない。)

行ったという答えなら、その地域の実情・問題点をどう捉えたか聞く。通り一遍のありきたりの返答なら、ただ見て回ったというだけで、特段恐れ入る必要はないことになる。

しっかりした、現状把握と対策を持った返答なら、それは立派。それこそ恐れ入って、確執は一応置いておいて、市の発展のために、力一杯働いて貰えばいい。

とまあ、こんな感じだ。
しかし、これをやるには、議員の方で少なくとも指摘する地域の実情をしっかり把握しているということが前提だ。

これは、比較的簡単だ。
なぜなら、これは市全域ではなく、特定の地域の問題をしっかり把握しておけばいいからだ。ピンポイントでいい。
そして、これこそ議員の役目だ。

もっとも、これができていれば、市長もロードバイクのトレーニングを視察と誤解させるような誘導をして、軽くあしらうというようなことはしないだろうが。

市長の議論の仕方を聞いていると、今回の事例以外にも、ん?と思うところが、ないではない。
従来のしきたりを無視されたこと以上に、感情的な反発を覚えるところもあると思う。当然だ。

しかし、この野郎と思っても、この市長を倒すには、揚げ足取りとか、些細な失政の追及、つまらぬ建前論では太刀打ちできない。

真正面から、市政を論じ優劣を競うしかない。
そのためには、地域の実情をよく把握し、必死に勉強し・研究することだ。絶対にぶちのめしてやる!という意気込みを込めて。

そして、これこそ市長が議員に求めていることでもあると思うのだが。

サポートしていただけるなんて、金額の多寡に関係なく、記事発信者冥利に尽きます。