タクシー
ウェブメディアの「あの日のありがとうを伝えたい!」的なコーナーを見ていて、そういえば俺には誰かいたかなぁと。
ふと、10年も前もことを思い出す。
当時の会社で、ある時期に将来有望な雰囲気で扱われていたことがあって。でも天狗になっていたのもあって、ことごとく期待を裏切り続けていた時期。
だんだんと結果の出ない僕はちょっとした腫物扱いされ始めてた気もするし、全然若いのにちょっとした”田舎の大将”的な感じにもなっていたかなぁと今振り返ると思う。
そんな時期だったので周りも、“次のスター”に焦点を当て始めた頃だったと思う。
前職では深夜帰宅は当たり前だったので、連日タクシーのお世話になっていた。
タクシーの運転手の方たちは大体イイ人たちで、飲み物くれたり、飴くれたり、”最速”で家に帰してくれたり、愚痴を聞いてくれたり、何も言わずに静かに運転してくれたり、とにかく“癒しの時間”だった。
大体顔見知りになって、
「おっ、今日もつかれてんねー!」
「いやぁ、落ち着かないっす、全然」
なんて会話しながら帰ることが大半。みなさん仕事の内容なんて実際わからないし、僕らもそういうもんだと思って世間話のようにペラペラ話しながら帰るんだけど。
あの日もいつものように泥のように疲れて、高円寺までの帰路についた。
そのタクシーの運転手さんは、はじめての方で。
シルバーヘアで銀だか金だかの縁の眼鏡をかけていたと思う。
仕事が思うようにいかなくて、何だか期待されても結果が出ないこと、感情のコントロールも中々うまくいかないこと、そんなことをポロポロと吐き出したと思う。
タクシーの運転手さんは、終始優しくうなづきながら話を聞いてくれて、あらかた話し終えたあと。
「あなたはきっと、有名になる。
わたしにはわかるんです。
あなたは必ず、結果を出す。
そういう人ですよ。」
こういう言葉はあまりに優しいから、惨めに受け取ってしまうこともあるんだけど、不思議と素直に聞いたと思う。
高円寺手前になって、
高円寺は個性的な人がおおいよねぇ。
俳優とか歌手とかの卵もいっぱいいるんだよねぇ。
と言ってお会計になって僕の方を向くと、
「あなたも個性的だ!
大丈夫。」
とニコッと笑って降ろしてくれた。
あの時の言葉を胸にいまも仕事をしています。
ちょっとずつ、結果も出てきたかな。
落ちることないようあの時間をもう一度思い出して
もっともっと結果を出さねば、と。
そしてもっと有名になったら、
運転手さんも思い出してくれるといいな。
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