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しのびよる夜と緑と農家の平家

10日前に買ってきた、カサブランカ一本。

その蕾がはじめ6個だと思っていたら、なんと8個ありました。小さくてプラスチックに緑すぎて、葉と勘違いしたようです。5個開花し、残りの3個が白くなってきて咲くつもり満々のようです。

強い個体だと思います。

8個も蕾があったこともそうですが、葉を枯らしながら栄養分を蕾に注ぎ込んでいますから。この幹は咲きたいのだと思います。その意を汲んで、私も水の入れ替えをうっかり忘れないように気をつけています。

こんな気持ちになるんだなと思いました。

咲こうとしているものを、そのままにはできなくなります。何かしてあげたくなりました。何か。というか、水をたやさず水揚げをよくするだけですけれど。それ以外は、楽しみにすること。咲いて欲しいとこちらも望むこと。応援ですね。

カサブランカの香りが好きでアロマオイルを探したことがあります。でも、本物が漂わせる香りは全く別物でした。香りを楽しみたくて、一輪だけ湿気の多い場所に置きました。そうすると、その空間に入る度にふわっと鼻に香りが入ってくるくらい明確になります。

年末に水仙を置いたとき、そうすればいいことを覚えました。その場所は、花の香りを強く楽しみたいとき置く場所と決めました。まだ花を飾って楽しむような空間ではないのにと遠慮するのはやめて、物の中に埋まるようでも花を置くことにしました。

香りの少ない花よりも、ちょっと草に近いような強めの香りの方を好むかもしれません。カサブランカもそうで、水仙は冬の香り。これからは桜より梅。もっと暖かくなっていけばクチナシ。いずれ金木犀もありますね。

今でも姉と話すのは、子供の頃に親との約束を破ったとき、夕方玄関から閉め出されることがありました。そういうことに耐性のある姉は、じゃあ軒先で寝ようと草をひと抱えもふた抱えも運んできて、布団状に敷いて寝たことがあります。春菊みたいな子供の腰丈ほどもある真緑色の草でした。砂風呂のように上からも草をかけて眠ろうとして、吐き出しの窓がガラガラと勢いよくあき、途端にまた怒られるという日でした。

草の匂いに守られた夜がしのびよる時間。虫だらけのお布団で眠ろうとしたその場所に、屋台で買ってもらった雄鶏の小屋ができて、目の前に広がるエンドウ畑で散歩をしました。彼の、砂浴びも手伝いました。

そこは小学校に入った頃に一時期住んでいた家。地主農家が貸し出した畑の隅っこに立てた平家。大家が農家じゃなかったら、早朝から雄叫ぶ雄鶏は飼えなかったし、畑が目の前になかったという場所です。白いイタリアングレーハウンド犬かと思わせる子犬がやってきて、いつの間にか納屋の脱穀機の横で縄でつながれていました。太いもみ縄。小学生の私には牛くらいの大きさ。仲良しでした。

今朝お腹を下してしまい、正露丸を飲みながら電話で久しぶりに姉妹で長話をしたら、マイホームを構えるまでに住んでいた、農家の隣の敷地に住んでいた一時期を懐かしく思い出しました。

あそこに住めて良かったと今は思っています。


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