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仕事の流儀|カイワレる
欲しくなかったものが欲しくなる。
成長とか達成、あとは名誉。そういったものを、もともと欲していなかったのに、努力をして結果が欲しくなったり、我慢を強いられその分認められたくなったり。いつの間にか、そのものではなくて、副産物の方が主目的になったり。あ、名誉だけじゃなくて報酬もそうですね。これまでは、そうやって、もともと欲していたものを置き去りにした経験がいっぱいあります。
完全に染まらなかったのは、女性という性が関係しているかもしれません。いろんな特有の壁や天井が出てきて、それがとても苦手でした。駆け出しの頃、仕事で日の目が出てきたとき「君はしばらく結婚しない方がいいよ」と言われたことが象徴しているように、性は人の根源的な欲求に直にアクセスする最たるものなのでしょう。当時は今よりも時代がそんな感じ。直接触れなくても、せっかく若いのだし可能性が大事だよと助言されたと解釈しています。男性には男性独特のものがあるのでしょうね。どんなものかは、結局わからないにしても、山本周五郎の時代小説なんか読んでいると少しわかった気になれます。遠い延長線上にストーリー重視のBL漫画もあります。
だからこそいま欲しいのは、成長・達成、その結果としての名誉・報酬。それらでは足りないのだろうと薄々感じています。それらは道具みたいなもので、自分を動かすのに都合がいいものです。
今回の初仕事を請け負ったときに、初仕事は一度しかないから思い切って「物々交換」にしてみました。際立ってギャップのある、いくつかの専門性のある仕事をしてきたのですがそれらを振り返って内省し、今までの仕事のやり方のなかで、一番歪みの原因になったものが報酬だったからです。いや、間違えました。報酬というより報酬の形(お金)だったからです。
たとえば報酬に関わる歪みがないところで見えてくる仕事の姿には、どんな契約関係が浮き上がってくるのだろう。って、一瞬にして興味が湧いたのは、最初に依頼を受けたとき。
「お支払いはします」
「どのくらいをお考えですか?」
「○○円くらいかな」
それを聞いた瞬間に、等価の価値とそれ以上の価値があるものを得られる方法があることを閃きました。それを頂くより、そのとき私の欲しいものが手に入る方法です。それが「物々交換」。
取引相手にそうさせる人柄と魅力、一定の能力がなければ成立しません。まず「人」が大事。そして、そうさせるタイミングも。もしお金の存在感が薄れる世の中になるのなら、大前提に「人」の持つ見えない資産と、運命のといっていいような出会いが必要なのです。
「では、物々交換にしませんか?」
「え?」
そこから、私の交渉が始まりました。
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