遠藤周作文学館の話
2年ほど前にどうしても行きたくて、朝早くから電車に乗り、バスに乗り長崎にある遠藤周作文学館に行ったことがある
中に入っていくと眼の前に広がる海が穏やかに波を立てて揺らめいていて、見た瞬間に気持ちを切り替えられるほど景色がキレイだった
文学館の中は、遠藤周作の生い立ちや作品の下書き、手紙などが展示されていて、とても興味深く展示物を観ることができた
文学館に併設されている、物品販売コーナーでは絶対に新作の本を買おうと決めていた
なぜなら、そこでしかもらえない特別なブックカバーがつけてもらえるから
物品販売コーナーに立ち寄った際、中学生くらいの子どもさんが、私と同じ本を買おうかお母さまと一緒にすごく悩んでいる場面に遭遇した
自分で買おうとしているらしく、ハードカバーの本は金額が高いから、文庫本が出てから買おうかどうしようか、と
狭い部屋でうろうろしていたら、その話も耳に入ってくるし、「どうするのかな」と思っていたときに、今でも忘れられない文学館の方の遠藤周作と本への愛情がつまった言葉を聞いてしまった
「ハードカバーの本は装丁まで美しく、見返しの部分には、作者の手書きの原稿が印刷されていて、この本でしか味わえないデザインになっていますよ」
それを聞いた瞬間、「あっ、この人、遠藤周作が本当に大好きなんだな」と思い、さらにあの重くて持ち運びにくいハードカバー本を、装丁の魅力で帳消しにしてしまっている、と感じた
結局、中学生がどちらを選んだのかはわからないけど、私はその本の購入を決め、遠藤周作と本の魅力を言葉で伝えてもらいたくて、そのスタッフの方にお会計をお願いすることにした
購入した本の素晴らしさを私に伝えつつ、特別なブックカバーのサイズも「ハードカバー本のサイズだと大きすぎて使いにくいかもしれないですが、使いやすい文庫本サイズを折りたたまずに差し上げましょうか」と、とてもとても気遣いのある優しい対応をしてくださった
折りたたまずに頂いたブックカバーはもったいなくて今でも真っ直ぐなまま保管している
本も帰りのバスと電車の中で、装丁を楽しみながら読んだ
キレイな景色と人の優しさと、人のすきな事に対する情熱が私に元気をくれた小旅行だった
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