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随筆 「 鮭 」

「パパ、あそこにお魚が死んでる。かわいそう」

「そうだね、かわいそうだね」

娘と散歩中、橋の上から川底に沈んでいる鮭の亡骸が見えた。
鮭がのぼる川の多くは上流に孵化場があるが、ここは数少ない自然に孵化することがある川。

「でもね、あのお魚はとても幸せなんだよ。大きなお魚に食べられることなく、生まれたところに戻ってきて、卵をいっぱい産んだのだからね」


鮭は卵を産み、次世代に命をつなぐことでその使命を果たす。

私の使命はこの子を立派に育てあげ、幸せになってもらうこと。


「パパ、お腹すいた」

「そうだね、おうちに帰ろっか」


幾多の困難を乗り越え、私より一足先にその使命を全うした川底の先達に元気をもらいつつ、愛娘と帰路についた。



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