半沢直樹が正しすぎて怖いのよ

義憤にかられることはある。そして大抵の場合、その怒りを相手に伝えることはできない。金権政治とかね。

半沢直樹ってその点悪い人より弱い立場から、知恵とか実直さとか、倫理観に反さない方法で、悪事を暴いてやっつけてるわけで、普段自分ができないことをやってくれる痛快さがある。ある系統のドラマって言ってしまえばどれも要はそういう話で、半沢直樹はそれが極端に描かれている。

私は半沢が「日本の銀行員の恥さらしだ!」とムンムンに顔を寄せて相手を罵倒するとき、Twitterみたいな奴だな。とどうしても思ってしまう。相手が悪い奴だとわかるとものすごい勢いで怒鳴りつけにくる。ガッチガチの正論のカドのとこで相手を殴る感じ。もちろん怒られるだけのことしている背景があるとは思うんだけど、半沢の仲間には優しい感じとかも含めて怖い。

まあ、ドラマとして見ている分には楽しいわけです。毎週楽しみに見ているんですが、もし自分があの世界の住人で半沢直樹と関わる機会があった場合、私は極度に緊張すると思う。なんとかして半沢さんに気に入られておかないといけない。ちょっとやましいことがあったり、上司の圧力に屈してやむおえず悪事に加担し、結果的に保身のためその上司が有利に動けるように奔走しなければいけなくなったりすると、ものすごく正しい男が背後から駆けつけてくる。どんな妨害をしても必ず自分のやったことを暴く。そして私に思い切り正しさからくる暴言を叩きつけて、私の人生をグズグズにして去っていく。悪さをした当然の報いとして。

そんなことにならないために、半沢にいつ見られても問題ないようにしなければならない。自分の利益や保身よりも、半沢の倫理観に適う行動だけを選んで、こそこそと、日陰を縫って、生ゴミを漁って生きていくしかない。尊厳を捨てて。

あのドラマを見ている人なら無意識にも思っていることだと思うけど、敵役のキャラクターの方が断然魅力的だ。役者さんたちも活き活きしていて、見ていてすごく楽しい。

皆さんも怒りにはお気をつけて。半沢直樹はフィクションですから。

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