見出し画像

(特に士業への)源泉徴収について

独立しまして、わたしが源泉徴収義務者(後述:代表例として会社があるので、以下、会社等)に対して請求するときには、源泉徴収を考慮した請求書を出すようになりました。
今日は、そんな源泉徴収のハナシをちょうライトに書いていきます。(と思って書いたらそれなりの文量になった)

源泉徴収とは(とくに士業に対して)

会社等が税理士をはじめ士業(ただし行政書士は対象外)に報酬(ただし士業によってはあらゆる報酬ではなく、特定の報酬。後述。)を支払うときに、あらかじめ支払の段階で所得税を徴収し、後日(一カ月まとめてor半年分まとめて)会社等が、税務署に対してその所得税を納付するものです。

税理士に対して顧問報酬1万円(税理士に対して顧問報酬1万円は一般的に安いけどわかりやすいので)を現金で支払った場合の仕訳を示すと以下のようになります。(税率は分かりやすく10%としています)

(借方)支払報酬料 10,000(貸方)現金  9,000
                 預り金 1,000

後日(原則支払時の翌月10日まで。給与の源泉と同じ。)源泉所得税を現金で納付した。

(借方)預り金 1,000 (貸方)現金 1,000

税務署側としては、あらかじめ所得税を徴収しておけるので、徴収がラクというか、とりっぱぐれが少なくなることが期待できます。

給与所得については昭和15年にできました。1940年体制(by野口悠紀雄)の一部を担う制度として、わたしは理解しています。いや、1940年体制って言葉だけ知ってるけど中身は良く知りません。言ってみたかっただけ。

源泉徴収された士業側の処理

確定申告の際に、確定申告書第一表「税金の計算」の欄に、「源泉徴収税額」の項目がある(令和3年分だと㊽)ので、ここに1年分の源泉徴収された額をまとめて記載します。

源泉徴収前の報酬(上記の例だと10,000円が、収入金額(いわゆる売上)になります。そこから、必要経費と、所得控除額を除して、課税所得額を算出して税金を計算します。そして、税額控除額を控除し、本来納めるべき年間の所得税等額を算出します。ここから、源泉所得税額を控除して、納める税金を算出し、納めます。(もしくは還付されます)

文章だけだとわからんですね、きっと。

(報酬の)源泉徴収義務者とは

所得税法をあげ…ると条文を追いかけるのがちょっと面倒なので、結論から書くと

・法人(代表が、会社)
・給料(専従者も含む)を支払っている個人

です。

なので、事業をやっているわけでもなんでもないいち個人が士業に報酬を支払ったところで、その人が源泉徴収しないといけないかというと、そんなことはないわけです。

源泉徴収義務者は、士業からの請求書に源泉徴収税額が書かれていなくとも、本来は源泉徴収額を差し引いた額を支払い、源泉徴収額は税務署に払います。

法律の立て付け上は、請求する側が、源泉徴収を考慮した請求書を出しなさい、といっているわけではない…はずです。
請求する側が、個人相手に、実は事業をしていて給料を払っている人かしていない人かを確かめて、その人によって請求書の内訳を変える、という手間を制度的に求めているというわけではない…はずです。
さすがに、それをやりだしたらめんどくさくてしょうがない。

ということで、たまに確信犯的(本来の意味)なのかどうか、明らかに源泉徴収義務のあるところ(会社とか)に源泉徴収税を考慮しない請求書を送ってくる士業の人がいますが、会社としては報酬額から源泉徴収税額を算出し、これを差し引いた額を支払うのが正しい処理となります。

多くの中小企業は、惑うので、源泉徴収税額を明示してほしいところではありますが。

あ、あと、よくわからん源泉徴収税額の計算をしてくる請求書もやめておくんなまし。○○士の人、たぶん業界共通の請求書が紛らわしくなってる気がする。

源泉徴収の対象業務


士業だからといってそのすべての業務の報酬に対して、源泉徴収が必要かというと、実はそうでもないです。『源泉徴収のあらまし』(国税庁)をよく読むと、あ、これ源泉徴収対象業務じゃないんだ、というのがあります。

業務例  『源泉徴収のあらまし』(国税庁)より

・弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士又は弁理士
 →あらゆる報酬。申告報酬(税理士)だろうと、経営相談だろうと、申請書作成助言業務だろうと。

・中小企業診断士の業務に関する報酬
 →その業務に関する報酬・料金
 (ということは、単に作業外注(データの集計をするだとか)であれば、源泉徴収対象外…のはず)

・司法書士
→裁判所、検察庁、法務局又は地方法務局に提出する書類の作成その他の業

(ということは、単に法律相談だけであれば、源泉徴収対象外…のはず)

・土地家屋調査士
→不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査、測量又は官公庁に対する申請手続その他の業務
(ということは、官公庁が絡まない業務であれば、源泉徴収対象外…のはず)

不動産鑑定士又は不動産鑑定士補
→不動産の鑑定評価その他の業務
(あらゆる業務、ではないけれども、不動産の鑑定評価以外に不動産鑑定士がする業務が思いつかない)

ポイントとしては、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士又は弁理士は、どんな業務であれ源泉対象ですが、それ以外だと、源泉対象とならない業務もある、というところでしょう。

とくに、司法書士の場合には単に相談料だけでは源泉対象とならないんですね。

また、裏ワザ(?)的なものとして、行政書士は源泉対象外ですので、これは行政書士の仕事であるとすれば源泉対象外と強弁できなくもない…。

まとめ

今回、士業に限って源泉徴収を見てきましたが、源泉徴収制度ってめんどくさいですね。
おしまい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?