圧縮記帳とは何ぞや(個人事業主版2022.03.09ver)
昨日、圧縮記帳のことについて書いたので、今日はその解説です。
(圧縮といえばふとんなのでこの画像)
なお、この記事については、折を見てアップデートしていこうかと思っています。思うだけでしないかもしれません。
さっそく具体的な設例~全般~
具体例を見た方が早いですので、具体的な設例を設けたいと思います。
たとえば群馬県前橋市では、令和3年度前橋市ニューノーマル対応支援補助金、なるものがありました。これはつまり、例のやつの対策(換気の向上、非接触化、抗菌化)をした事業者に補助金を出すというものです。なお、今年度の募集はすでに終わっています。日本全国各地で似たようなものはあったかと思います。
ここでは、補助率3/4、新たな設備を導入する場合は1事業者あたり60万円、既存設備改修であれば30万円、が限度額でした。
そこで、飲食店が非接触化を図るべく、この補助金を使って水回りの改修をし、自動水洗トイレ・自動手洗い装置を導入したというケースを考えます。
そして、9月に工事実施し引き渡し、取得価額54万円、補助金額30万円の場合を考えます。
圧縮記帳しない場合
トイレ工事は
建物附属設備 衛生設備 なので 法定耐用年数は15年(償却率0.067)です
そうすると建物附属設備540,000円が増加。
540,000×0.067×4(9‐12の4カ月)/12=12,060円が減価償却費となります。
一方、もらった補助金は事業所得の計算上、300,000円が雑収入として計上されます。そして「本年中の特殊事項」の欄にその旨記載するのが望ましいでしょう。
雑収入として計上されるのは釈然としない
上記の例だと、減価償却費を除いて受領した補助金額30万円のほとんど(300,000-12,060=287,940円)が総収入金額となります。たしかに補助金をもらってはいるもののそれはモノを買うためであって、それが課税対象とされるのはどうも釈然としない、小難しく言えば担税力とやらはないのではないか…とのご意見、その通りです。
そこで「補助金等は、一定の公益目的の実現のために交付されるものであって、それを課税の対象とすると、公益目的の実現がそれだけ阻害されることになるため」(『租税法』金子宏)、総収入金額不算入の規定、すなわち圧縮記帳が設けられています。
圧縮記帳する場合
540,000-300,000=240,000円が取得価額となります。
30万円は雑収入になりません。正味、支出した24万円が取得価額。
この場合、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付した確定申告書を所轄税務署長に提出します。そうしないと、適用にならない…んですが、OB先生、出してなかったところでとは言ってたな…
ともかく
240,000円を取得価額として減価償却をすることとなりますので
240,000×0.167×4/12=13,360円が減価償却費となります。
一方、雑収入はなし。つまり300,000円くらい収入金額=所得を圧縮しています。これがザ・圧縮記帳。
青色申告していればさらに少額減価償却資産の特例も使える
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金(必要経費)算入の特例というものがあります。取得価額30万円未満の減価償却資産を減価償却の手続をすることなく、全て必要経費にできるというものです。
そうすると、先の例ですと、240,000円が必要経費となります。
青色申告決算書の
〇減価償却費の計算 欄に
減価償却資産の名称等「トイレ改修工事」
取得価額240,000
本年分の普通償却費240,000
本年分の必要経費算入額240,000
そして、摘要欄に「措法28の2」と記載します。
有利不利は状況による
圧縮記帳した方が良いのかどうか、というのは状況に依りますが、基本的に
今年(申告対象年度)に儲かった(来年以降はそれほどでもなさそう)な場合、圧縮記帳した方が良いことになります。
今年の所得が減り、来年以降の所得が、減価償却費がない分うすーく増えていくということになるためです。
圧縮記帳の結果、トータルの損益は変わりませんが、その計上時期が変わってくるという効果があります。計上時期が変わることによる節税効果は期待できるかもしれません。
本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
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