医療現場ではたらく女性たち

全身麻酔で親知らずを抜歯手術


歯医者さんから親知らずを抜いたほうがいいと数年前から言われてました。高齢になるほど、親知らずがあることでの不具合がおきたり、抜歯が大変になることを聞いていました。また、私の場合、難しい抜歯になるので大きな病院でやったほうがいいとのこと。
紹介状も書いてもらい、近くの総合病院で予約して局所麻酔をかけてもらたところ・・ 口が閉じないような器具が口にあり、唾を自分の意思で呑み込めないことがどうしても無理!な状態になりました。。
先生からも今日はやめましょうと言ってくださり・・手術は中断。
そんなこんなで私はふつうのやり方では無理だと思い、全身麻酔でやることに。
「重要だけど緊急でない」抜歯。仕事関係に迷惑をかけたくないことなどから、半年くらいはまた悩みましたが問題を先送りにしてもしょうがないので、意を決して全身麻酔の予約を入れました。

なるべく平日に休まずにすむよう土日にまたぐ希望をだし、木~月曜の入院となりました。

手術前の恐怖心

とにかく恐怖でした。安全な手術といえども、まれに起こりうるリスクの説明が事前にありました。
手術中に覚醒してしまったらどうしよう。体が動かない中覚醒したことをどう訴えればいいのだろう、目が覚めなかったらどうしよう。などなど。
知人や友人から「2秒で寝てすぐに終わる」「大丈夫!3食昼寝付きと思ってリラックスしてね」「今この時間も意味があることよ」「癒しの音楽聞いてね」とおすすめのYOUTUBEのリンクを送ってもらったり、、 
本当にありがたかったです。何度もメッセージを見て、ネガティブに妄想しがちな私ですが、強制的にリラックスさせ大丈夫だと暗示をかけていました。

いざ手術

出術室に入るまえ、付き添ってくれた看護師さんから「がんばってくださいね、終わったら迎えにきます。待ってますね」と声をかけてもらいました。
手術本番ではドラマで見るような、手術ベッドに横たわり、男性医師など3~4人くらいに囲まれて大きな台にのり横たわります。恐怖心でいっぱいでした。唯一いた女性スタッフの方に「私とても怖いです、手を握ってもらえませんか」と言ったところ手を握ってくれ、ずっと腕や手をさすってくれ「大丈夫ですよ、最後までそばについてます」と言ってくれとても安心することができました。
もし男性ばかりだったら、私はそのような言葉は言い出せなかったと思います。女性がいたことでとても安心できました。
そして手術中、悪夢を見ていたことは記憶してますが、内容はもう覚えていません。「米澤さん、終わりましたよ」の声かけで目が覚めました。
安堵から涙がでていました。
看護師さんが私の体調を把握する質問のときも、私がなるべく答える言葉が少なくすむような質問の仕方をしてくれている配慮も感じました。

術後直後のトイレ~尊厳を守るための配慮~

手術後は酸素マスクをつけており、水分摂取やトイレに行くことが禁止されていましたがどうしてもトイレに行きたくなってしまい、女性の看護師さんにそのことを伝えました。ベッド上で尿器をつかっての対応となりますが、看護師さんはすぐに対応してくれ、私の尊厳を守るために細やかな配慮をしてくれました。
まず、彼女は私のベッドの周りにカーテンを引き、他の人の目に触れないようにしてくれました。そして、布団を使って私の体をしっかりと隠し、できるだけ安心できる環境を整えてくれました。看護師さん自身も私の体を直接見ないように注意を払い、視線を配慮しながら、穏やかで優しい声で「ゆっくりで大丈夫ですよ」と声をかけてくれました。
手際よく、しかし決して急がせることなく、私が恥ずかしい思いをしないように気を配ってくれました。終わった後も、穏やかに処理をしてくれ、「また何かあったらすぐに言ってくださいね」と笑顔で優しく声をかけてくれました。
ニュースでは高齢者施設などでこのこのようなトイレや着替え、お風呂の場面での問題を目にすることがありますが、今回の体験から、羞恥心が人としての尊厳に深く関わることを身をもって実感しました。

出術翌日に待ちに待ったお粥

手術当日は一日絶食で、翌日から待ちに待ったお粥。すりおろしたほうれん草やお味噌汁、すりおろしのリンゴがでました。まだ口の中は痛みがあり、噛むことがきついので、ほぼ飲み込む感じですが、それでも「美味しい」と感じます。
ふだん歯で噛んで食べることができるのはどれだけありがたいことかと思いました。
1日食べずに手術を受け、弱り切っていましたが、離乳食のようなものでも口から食べたことで元気がでてきました。

多様性の理解ってこういうことなのかも

看護師さんとの会話です。
入院前に血液検査をしたときのこと。採血中に看護師さんと話をしました。「お恥ずかしいのですが、親知らずの抜歯で怖くて全身麻酔にすることになりまして」と伝えたところ、看護師さんは「人はそれぞれ違うのよ。顔を触られるだけでダメな人もいる。他の人が大丈夫でも、私はダメ、というのはあって当たり前よ。人それぞれ違うんだもの。だから恥ずかしいなんて思う必要ないのよ。あなたが感じること、それがすべてよ」と話してくれました。

多様性という言葉が聞かれますが、他人の違いや感じ方を尊重し、理解することとはこういうことなのかなと思いました。

妊娠後期の看護師さん

ベッドまわりでお世話をしてくれた看護師さんは妊婦さんでした。看護師の仕事は動き回って大変でしょうと声をかけると、彼女は笑顔で「いえいえ、私は初期からつわりがなくて、ずっと元気なんです。夜勤もこなせるのですが、私が夜勤に入ると、同じ妊婦の同僚が働きづらくなってしまうので、夜勤には入っていません。産休まであと1か月なのでがんばります」と笑顔で話してくれました。

私自身は妊娠中、つわりがひどくて同僚に助けてもらってばかりでした。妊娠中の体調は人それぞれで、一人として同じ体調の人はいません。一律に考えるのではなく、個々の状況に柔軟に対応することが大切だと改めて感じました。

女性のすばらしさ

今回の入院で多くの医療従事者の方にお世話になりました。ほとんどが女性でした。彼女たちは母性を感じさせる細やかな優しさで私の状態を気遣い、配慮と声掛けをしてくれました。どのスタッフさんに声をかけても、情報が共有されており、「わかりません」と返されることはなく、必ず誰かが対応してくれました。忙しそうな状況でしたが、誰一人としてイライラせず穏やかにコミュニケーションをとられていました。

今は男性と女性を区別しない考えが主流かもしれませんが、私は女性なので、女性の方に身体の世話をしてもらえることに羞恥心を感じることなく、とても安心感を感じることができました。術後、意識がもうろうとして弱り切っている私にも、プライバシーを尊重してくれる対応がありました。同室の認知症でコミュニケーションが難しいおばあさんにも、優しくわかりやすい言葉で接する姿がカーテン越しに伝わってきました。

日本では女性の地位や賃金の低さが問題視され、これを改善することが課題となっています。しかし、女性ならではの母性ある配慮や優しさを持ち、自分の仕事に誇りを持って取り組む姿は本当に尊く、代えがたいものだと改めて思いました。どの業界でも人材不足はいわれており、とくに医療現場の人材不足は顕著といわれていますが、女性がもつ母性的な優しさが失われないよう願うばかりです。

今回の入院をとおしてたくさんの医療従事者の方にお世話になりました。私自身大きな不安という感情を抱えた中でしたが、こちらの立場を想像し優しさで対応してくれました。こういったことが配慮するということなんだろうなと学びにもなりました。
医療関係者の方々、心配してくださった皆さまありがとうございました。

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