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雑記「監査法人とFAS(FDD)の同異点」※入社数か月時点

 監査法人からFASに転職して数か月経ったので、ここらで「監査法人と違うなー、もしくは似ているなー」と感じたことを雑記として残しておこうと思います。なお、FASに転職してからは主にFDDを担当しているので、本文ではFASではなくFDDと記載しています。

簡単な自己紹介
・会計士(未登録。今年登録予定)
・監査法人:約3年勤務。経験は現場責任者まで。
・FAS:今年転職。現状はFDDメイン。

監査との相違点

1.頭の使い方

 監査業務では、会計基準に従って会社の処理の適切性を判断することがメインでしたが、FDDでは、対象会社の処理の正誤を見つけることが目的ではないため、会社の処理が合っているか間違っているかはどちらでもよく、「対象会社の会計処理が間違っている。だから何?」という視点がもう一歩必要という点で相違する印象を持ちました(つまり正解がない)。

(※加筆:だから何?というのは決してどうでもいいという訳ではなく、So whatの意味でご理解ください。会計処理が誤っている場合のFDD上の主要な対応としては、その内容を正常収益力分析やネットデット分析と言われる各分析項目に反映するなどの対応が求められると理解しています(他には、PMIに資する情報として伝達するなど)。(まとめると)FDDの目的はValやPMI、ストラクチャー検討などのため、正誤を見つけたあと、どのような対応をするべきなのかに目を向けることが重要と認識しています。)

 また分析の視点も異なり、(少なくとも私のいた監査法人の※)監査業務では一つ一つ証拠を積み上げることで心証を得ようとするのに対し(ボトムアップの検証方法)、FDDでは俯瞰的な分析を通して、論点のあたりをつけて業務を進めていく(トップダウンの検証方法)という点でも相違する印象を持ちました。そのため、監査業務の癖で細かく検証しすぎないように留意する必要があると感じています。

※各監査法人によって監査業務の内容に特徴があるみたいなので、このような書き方をしています。重要性の基準値を高く設定しがち、分析が多い、証憑突合が多いなど、若干それぞれのカラーがあるようです。私は監査引継案件は2-3件程度しかやっておらず一般化して語るレベルにないので、詳細は詳しい方にお問合せください。


2.キャッチアップのスピード感

 監査業務では最低でも一年間の中長期的な視点から業務を進めていくため、監査対象会社のキャッチアップにも比較的時間的な余裕をもって進めることができていた印象ですが、FDDでは対象会社の資料をもらってから、2-3週間で中間報告(最終報告内容の70%程度を網羅)を行う必要があり、その期間にキャッチアップを終わらせないといけないので比較的スピード感が求められるという印象を持ちました。

(なお、監査業務では細かい部分のキャッチアップも求められるので、どちらが楽とかそういう話ではありません。あくまでキャッチアップの種類が相違するという意味。)

(※加筆:資料開示後、2-3週間で中間報告は割とタイト目な案件のようです。また、中間報告でどの程度の報告が求められるかはクライアントの要望によるとのことでしたので、修正いたします。認識に誤りがあり申し訳ありませんでした。また、ご指摘ありがとうございました。

中間報告で90%程度の報告を求められることもあるそうで、大きな方針転換が出たら死にたくなるな…と想像しています。また、入社以来、割とタイトな案件が多かったのか…どうりで…。と1人で納得しています)


3. Excel業務の厳格さ

 監査業務で作成される監査調書は基本的にExcelが多く、その形式は各監査チームによって自由に作成されているという認識をしています(調書を見ると担当者の特徴が出ているので、調書を見るとある程度誰が作成したかのあたりがつく)。

 一方、FDDでは、エクセルの各シートの記載箇所やフォントサイズ、フォントカラーが厳密に決まっていたり、関数の組み方も概ね画一化されていたりなど、各個人が自由にデータパックを作成できないという点で相違しています。

 FDDでExcelワークが厳密に決まっているのは、Excelで作成した表をPPTに貼付したり、Excel自体をデータパックとしてクライアントに提供したりするために形式の統一も要求しているという点と、PJチームの組成から解散までが短期間で行われるため、個人の裁量でExcelを作成しているとプロマネがレビューしづらいという理由があると思われます。

 個人レベルだと自由に作成できる方が楽でしたが、全体的なことを考えると細かく定められている方が良いかなと考えています。

(※加筆:データパックをクライアントに提供するかどうかは案件によってまちまちで、Excel自体もレビューする・しないは、チーム・ファームによって異なるとのことです。私の認識に誤りがあり失礼いたしました。)


4. シングルタスク感

 監査業務ではアサインに関係なく関与クライアントの業務を並行的に進めるため、マルチタスクが求められていたのに対し、FDDではスタッフからシニアスタッフクラスであれば1-2社程度の並行で留まる点で相違するように思います。

 監査法人時代は各種Mtg.とメール返信とで定時時間が終了し、自分自身の業務は定時後からという生活になることもありました(私の場合、1社だけのアサインだったはずなのに、4社並行したのが2週間続いたのが最大。今は事前のアサイン外の稼働は制限されているかも)。

 一方、FDDでは日中に自身の業務を進めることができているので、その点からはFDDの方が働きやすい印象を持っています。(これもまた良し悪しで、マルチタスク能力は監査法人の方が鍛えられるように感じています。)

 なお、あくまで上記の話は「FDDでは」という点と、「スタッフ・シニアスタッフクラスでは(一定職階以上ではPDとデリバリーを並行している様子をよく見る)」という点に留意していただきたいと思います。


5. 間接業務の少なさ

 監査法人に比べFDDでは各種間接業務が少なく、大半の時間をクライアントワークに使用できるという点で相違しているように思います。法律の要請に基づく監査業務ではそれに応じて間接業務も増えるという理解をしています。

 なお、その分監査法人では案件を継続的に獲得できるという点で優れているため、どちらか一方が優れているとか劣っているとかそういう話ではありません。良し悪しです。


監査との類似点

1. 使用する資料が同じ

 対象会社から開示してもらう資料は監査法人時代に見てきた資料とほぼ同じものです。FDDは監査業務との親和性が一番高いというのはそうした理由からだと思われます。

 ですので、将来的にFASに行きたいとかFDDをやってみたいとか考えている監査法人の方は目の前の監査業務にしっかりと取り組むこともためになると思います(タイミングについては置いておく)。


2. 別にきらきらしていない点

 FAS(M&A)というと、なんとなくかっこいい仕事のように語られる場面に遭遇することがありましたが、別にそんなことはないかなと思います。もちろん、いい意味で新聞に出るような案件に関与するという確率は上がると思いますが、現場レベルで実施する業務は普通に泥臭いと認識しています。

 むしろ、クライアントがPEファンド、対象会社が非上場会社というコンボだと、資料は特にそろっておらず、一方でクライアントからの要求水準は高いという状況になることがありますので、綺麗な監査クライアントしか経験していない監査法人出身者は面食らう可能性もあるかもしれません(税務基準で決算を締めているので、税務調整になるような会計処理を行っていないと言うと理解しやすいかもしれません。)。


3. 雰囲気

 FASで接してきた方々は監査法人時代とほとんど同じような方々でした。FDDは監査をバックグラウンドに持つ方が多いので当然といえば当然のことかもしれません。ただFAと事業再生チームは多少雰囲気が異なるかな?という印象です。

(※加筆:FDD以外の部署では、バチバチ普通に詰める方もいらっしゃるようで、雰囲気は大きく異なるようです。ValやFAなどFDD業務以外もある程度経験したら感想をnoteに書くかもです)


おわりに

 FASに転職して数か月という状況のため、FAS業務の本質に触れるような内容は書けませんでした。ただ、FASへの転職を考えている監査法人勤務者の方のギャップは少なくなる内容かもしれないなーとぼんやり考えています。
 一年たったら認識も変わるかもしれないので、そしたらその時にまたこうして雑記を書くかもです。では。

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